「商工とやま」H16年4月号

特集
開幕間近!全日本チンドンコンクール

今年は50回記念でパワーアップ!

 〜参加して楽しもう!今年のチンドン。〜


 満開の桜並木に響きわたる鉦や太鼓の音色。富山に春の訪れを告げる恒例の「全日本チンドンコンクール」が、4月9日(金)から11日(日)まで、富山城址公園を中心に開催されます。今年は昭和30年の第1回から数えて50回目という記念大会。例年を上回る40組のチンドンマンが参加。「ちんどん屋日本一」を競うコンクールのほか、スーパーライブなど特別企画も目白押しです。

 見て楽しむお祭りから、参加し、体験するお祭りへ。新しい価値創造を目指すチンドンコンクールの魅力や、今後の展望についてレポートしました。


■祭り本来の目的である市民参加を促進
市民とチンドンマンの交流が深まる新企画が盛りだくさん


 今年で50回目を迎える「全日本チンドンコンクール」が4月9日(金)に開幕します。会期中、3日間は「ちんどん屋日本一」を競う恒例のチンドンコンクールやパレードなどの催し物が予定されていますが、今年は50回記念大会として特別企画が用意されました。

 まず、初日の4月9日は夜7時から、市民・観光客とチンドンマンの交流の場として「ウェルカムパーティ」(こちらをクリック)が開催されます。会場では普段話すことができないチンドンマンと会話したり、写真を撮ったりすることができ、交流を深めることができます。


■「ちんどん屋日本一」を競うコンクールは土曜日
 2日目(10日(土))は恒例の「チンドンコンクール」。「頑張れ!日本のスポーツ」「チンドンコンクール50年」「とやまブランド」の3テーマで、40チームが日頃鍛えたちんどん芸で、「ちんどん屋日本一」を競い合います。今年はステージを会場中央に設置。360度、どこからでもチンドンマンの姿が見られるようになっています。

 そして夜は「チンドンスーパーライブ」を開催。これはチンドンマン3人1組のチームの枠を超え、屋号や活動地域にとらわれないジョイントライブです。ベテランと若手のジョイント、様々な楽器の競演など、普段見られない斬新なステージに加えて、盛大な花火も楽しめます。


■チンドンマンが商店街でライブ

 3日目(11日(日))の目玉は「第50回特別ステージ」。チンドンマンたちが主会場となる城址公園から市内の商店街に繰り出し、ストリートを歩きながらパフォーマンスを行います。舞台となるのは平和通り(2ヶ所)、中央通り、総曲輪通り、市民プラザ前、CiC前の6ヵ所。チンドンの楽しさをより身近に感じることができる新企画です。

 さらにこの特別ステージの開催中は、各所にスタンプ台を設置し、スタンプを集めた人にオリジナルのチンドングッズをプレゼントする「チンドンスタンプウォークラリー」(参加費100円)も実施。演じる側と観る側が一体となったお祭り気分が味わえます。


■時代の移り変わりと共に歩んだチンドンの歴史
 街を元気にするイベントとして誕生


 半世紀という長い歴史を歩んできたチンドンコンクールですが、富山とチンドンのつながりはどこから始まったのでしょうか。

 チンドンコンクールが初めて開催されたのは昭和30年のこと。富山市は昭和20年8月2日未明、大空襲に遭い市街地は壊滅状態、同15日に終戦を迎えました。市役所では廃墟の中から立ち上がる市民に娯楽を提供し、再建への意欲を盛り上げようと全国でも珍しい「芸能課」を新設。毎年夏、「復興祭」を開催し、昭和29年には「富山産業大博覧会」を開催しました。

 これに続き、富山市に四季それぞれの観光行事を作り出そうということになり、様々なアイデアを練る中で、産業大博覧会の際の仮装行列が喝采を浴びたことをヒントに、春の「桜まつり」にあわせて、ちんどん屋の大会をしてはどうかという声が上がったのです。


■全国で唯一のお祭りを富山から発信

 この企画を立ち上げたのが当時、「芸能課」に勤務、後に芸能評論家として活躍した故・高澤滋人さん。高澤さんは富山市長や商工会議所に積極的に働きかけ、全国に例のないチンドンコンクールを実現させたのです。

 昭和30年4月、桜まつりの目玉として開催された「全国チンドンコンクール」(当時)は、商工会議所や商店街の熱意が実を結び、東京や大阪、名古屋などから150名余りのチンドンマンが集合。20万人以上の観客に笑いと感動を提供し、大成功を収めました。

 長く、重々しい冬に耐えた富山の人々にとって、満開の桜は心を弾ませてくれる風景。そんな風景を彩るチンドンマンの衣装や鉦・太鼓の音は春の高揚感を一層盛り上げてくれるものとして市民に広く受け入れられたのです。以来、チンドンは富山の春の風物詩として定着。「チンドンの調べを聞くと春を実感する」と、毎年開催を心待ちにする市民も増えていったのです。

▼第1回のチンドンコンクールを報道する当所会報
当所会報画像



■富山での交流が大きな輪に
 市民にとって定着した富山の「チンドンコンクール」は、全国各地で活躍するチンドンマンが一堂に会するイベント。日頃の活動の成果が披露できる「チンドンマンのメッカ」として知られるようになりました。また、会場は全国各地で活躍するチンドンマンの数少ない交流と親睦の場となり、全国的なネットワークも広がっていきました。

 こうした交流が発展した形として平成12年夏、若手チンドンマンが企画した「全国ちんどん博覧会」が東京上野で開催されました。同博覧会は翌13年に大阪天満宮、14年は九州福岡、15年は東京浅草と会場を変えながら継続。夏休みのイベントとして毎年行われるようになりました。


■存続の危機を乗り越えて、新しい時代のチンドンへ

 危機を迎えたチンドン

 今はすっかり定着している「チンドンコンクール」ですが、かつては存続の危機に直面した時期がありました。時代の変化とともにテレビや雑誌など広告媒体が多様化し、ちんどん屋の仕事が減ったこと、またチンドンマンの高齢化や後継者不足も影響して、昭和30年代には毎年50組前後参加していたちんどん屋が昭和56年には20組を切り、平成3年には13組まで減ってしまいました。

 コンクールはかつての華やかさや賑わいを維持することができず、全日本チンドンコンクール実行委員会では「もう続けていくのは難しいのでは」という話も交わされました。


■日本独自のパフォーマンスとして再評価

 厳しい状況の中、同実行委員会では「ここまで続いてきたイベント。毎年楽しみにしている市民のためにも、なんとか継続していこう」と、地元の協力を募りながら懸命に続けてきました。

 やがて、一時は「時代遅れ」と言われていたチンドンも、大道芸には見られないレトロな雰囲気、人情味のある演出が、日本独自のパフォーマンスとして見直され始めました。高齢化が進んでいた業界には20代の若手が入門し、その芸風にも斬新なアイデアや工夫が取り込まれたものが誕生。業界に新しい波が生まれ、活気が甦ってきました。


■もっと身近に感じるための取り組み 観るだけでなく、楽しむチンドン

「チンドンコンクール」は年に一回のお祭りですが、主催する富山市や富山商工会議所では、もっと市民に馴染んでもらえるよう、また富山を代表する観光資源として生かせるよう、事業を展開しています。

 その一つが、平成9年より富山市が実施している「チンドンマン育成講座」です。講座は毎年11月から3月まで月2回ずつ開講し、プロのチンドンマンがチンドン太鼓・鉦の叩き方や口上を指導するもの。毎年20名ほどの人達が参加しています。富山市では、こうしたアマチュアのチンドンマンにも発表の場をつくろうと平成10年からプロのコンクールと併催して「素人チンドンコンクール」をスタートさせました。初年度は5組しか出場しませんでしたが、年々増加し、昨年は14チームが参加。今年は県内外から19チームが参加しています。素人チンドンコンクールの参加者を見ても、神戸大学や早稲田大学の大学生から、50・60代の方々まで、幅広い年齢層に受け入れられています。


■チンドンロボットがお出迎え、チンドンミュージアム


 ます寿司や薬と並ぶ富山市の価値資源として、チンドンをアピールするスポットも誕生しました。昨年11月にリニューアルオープンしたCiC5階とやま観光物産センター「いきいきKAN」の一角に「チンドンミュージアム」が開館。ここではチンドンコンクールの歴史を紹介するパネルや写真、チンドンロボットが見られ、チンドンの華やかな世界が楽しめます。

 また、平成12年7月には富山駅北口の地下広場に、高さ4・6メートルの「チンドンからくり時計」が設置され、毎正時にはチンドン人形がチンドンミュージックを奏でます。


■新しい見せ方、楽しみ方を追求していくことの重要性
 富山の価値創造リソースとして活用


 様々な困難を乗り越えながら50回を迎えた「チンドンコンクール」は、今や富山が誇る貴重な価値資源です。今後はこの資源をさらに有効活用し、観光に、ビジネスに生かしていくことが望まれます。

 例えば地元の企業や商店には、年1回のイベントとして参加してもらうだけでなく、チンドングッズを商品化し、特産品レベルまで押し上げてもらうなど…。富山ブランドとして全国へ発信していくための取り組みに期待したいものです。


■新しい提案がなければ継続は無理

「今後も市民をどんどん巻き込んでいく企画が求められます。今は毎年同じスタイルのイベントをしても人は集まりません。常に新しい見せ方、楽しみ方を考え、新しい文化を創り出して行くことが必要。同じことの繰り返しだけでは次はない、という危機感をもって取り組んでいきたいと思っています」(富山市商工労働部観光振興課 作田正樹さん)。

 お祭りの本来の目的は一人でも多くの市民が参加し、心豊かに楽しめること。50回目を迎える「チンドンコンクール」にはぜひ足を運んで、その魅力を皆で語り合い、街づくりに生かす可能性や展望を考えたいと思います。


■「全日本チンドンコンクール」のホームページには今年の出場チームやチンドンの歴史などチンドン情報が満載です。 ぜひアクセスください。
URLhttp://www.ccis-toyama.or.jp/toyama/cin/top.html


チンドン Q&A

Q チンドンのルーツは?
A 
新聞やラジオがなかった江戸時代の広告は看板やのれんが主流でした。その後、大阪の飴売りが派手な衣装と独特の口調で「東西、とーざい!」と街頭宣伝をしたのが人気を集め「東西屋」と呼ばれるように。一方、関東では音楽隊を結成した広告業「ひろめ屋」が生まれました。昭和初期になると、芸達者な旅役者や楽士が街頭広告業に転向するケースも増え、全国的に「ちんどん屋」と呼ばれるようになりました。

Qチンドン屋と大道芸の違いは?
A 
辞書によればはちんどん屋とは、「人目につきやすい派手な格好で、太鼓・三味線・鉦(かね)・ラッパ・クラリネットなどを鳴らしながら広告宣伝をする人」とあります。表現は様々ですが鉦(かね)の「チン」と太鼓の「ドン」を兼ね備えたチンドン太鼓を持っていること、そして口上(宣伝を喋ること)が基本となります。一方、大道芸は、広告宣伝はせず、自由なパフォーマンスが主体となります。

Qチンドンコンクールのルールは?
A 
3人1組のチンドンマンが制限時間内(今年は3分間)に演技・口上・扮装などを披露。タイムオーバーは減点されます。昔は地元スポンサーの広告宣伝でしたが、近年は県外観光客が増えたことから、富山にちなんだテーマで競うことになっています。その内容は世相や流行を反映したものが多く、チンドンマンたちには時代の動きをいち早くキャッチする能力が求められます。


チンドンウェルカムパーティについてはこちらをクリック


西町・平和通り
まちなかウキウキフェスタ

(株)まちづくりとやまは第50回全日本チンドンコンクール併催事業として下記のとおり「ちんどんウキウキフェスタ」を開催します。ご家族そろって遊びに来てください。

■日時 4月11日(日)9:00〜15:00(雨天中止)
■会場 西町・平和通り
■内容
○こだわり市場
 ・チンドン体験コーナー
 ・バルーンアート体験コーナー
 ・手作りキーホルダー体験コーナー

○いたち川・お花見ウォーク(雨天決行)
 ※10時迄に同会場にお集まりください。なお、参加ご希望の方は事前にお申し込みください
(雨天の場合は集合場所が変更になりますのでお問い合わせください)。

○ワゴンショップ(チンドングッズ、名水商品など)

■お問い合わせ先 (株)まちづくりとやま TEl076-495-5900


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