「商工とやま」H16年2・3月号

特別寄稿

電脳県庁 〜紙から電子へ〜

富山県経営企画部情報政策課 電脳県庁推進班

▼はじめに

 近年の情報通信技術(IT)の進歩にはめざましいものがあり、身近なところを見まわしてみてもパソコンや携帯電話などの情報機器が急速に普及し、その機能も日進月歩の勢いで高度化しIT革命と呼ばれるまでになっています。

 特に、インターネットの普及は著しく、平成14年度の利用人口は6,942万人で全人口の54・5%の人がインターネットを使っている計算になります(出典/総務省平成15年版情報通信白書)。また、利用環境もADSLやCATVなど高速大容量のブロードバンドが急速に普及しています。

 インターネットの利便性は今後ますます拡大し、県民の暮らしや事業活動における情報化、IT化がますます進展することでしょう。また、インターネットを活用した電子商取引の発展も見込まれます。

 こうしたIT革命の進展は行政のあり方にも大きな影響を及ぼします。行政の分野において、ITの便益を最大限に活用することにより、行政の簡素・効率化と行政サービスの質的な向上を同時に実現するために取り組まれているのが、電子政府・電子自治体の構築です。富山県では「電脳県庁」を平成16年度から本格的にスタートさせることにしています。


▼e‐Japan戦略

 政府は、「2005年までに世界最先端のIT国家を実現する」という目標を掲げ、2001年1月に「e‐Japan戦略」を決定しました。これは、国家戦略として世界最先端のIT環境の実現等に向け、必要な制度改革や施策を5年間で緊急・集中的に実行しようとするものです。e‐Japan戦略による官民挙げての取り組みの結果、わが国のインターネット利用環境は、世界有数の水準にまで整備されました。

 これを受け、政策の軸足をインフラの整備からITを活用することに移していく必要があるため、「IT利活用による『元気・安心・感動・便利』社会を目指す」ことを基本理念とした、「e‐Japan戦略〓」が2003年7月に決定されました。新戦略では、「医療」、「食」、「生活」などの国民に身近で大きな効果が期待できる7つの分野を先導的な分野とし、その成果を他の分野に波及させることにより、社会全体のIT化を進めていくこととしています。


▼「電脳県庁」の構築

 「電脳県庁」は、県の行政の情報化を積極的に推進し、電子情報を紙情報と同等に扱えるようにすることにより、住民の利便性の向上と行政運営の簡素化、効率化を図ることを目的としています。電脳県庁は、単に県民からの手続や県の事務をコンピュータで処理することだけでなく、県の制度や業務の進め方の見直しを行うものです。

 富山県では、県内ほぼ全域を網羅するCATVファイバ網を活用して、県や市町村の機関を高速のネットワークで結ぶ「とやまマルチネット」を整備し、また全国共通の本人確認ができる仕組みである住民基本台帳ネットワークが本格稼動するなど、平成15年度までに電脳県庁実現のための基盤整備を行ってきました。

 平成16年度からは県に対する申請届出等の各種行政手続を書面だけでなくインターネットからでも行えるようにし、広く県民の方々に電脳県庁の利便性を享受していただけるようになります。


■電子申請

 県民や事業者から県に対する申請、届出等の行政手続は、書類を郵送するか直接窓口に提出する必要がありました。富山県では、こうした行政手続を包括的に電子化可能とする条例(行政手続オンライン化条例)を昨年12月に全国に先駆けて制定しました。そして、今年度中に電子申請受付システムを整備し、平成16年度からは原則としてインターネットでも手続を済ませることができるようになります。

 電子申請がはじまることで、
(1)自宅や職場からでも手続ができるようになります。
(2)夜間や休日でも原則として24時間365日手続ができるようになります。
(3)受付窓口が異なる関連した手続を一度に済ませることができるようになります(ワンストップサービス)。
(4)行政事務のシステム化とあいまって、これまでより早く許認可等を受けることができるようになります。

 また、県だけでなく、国の諸機関や市町村においても行政手続オンライン化の取組みが進んでいます。県や国の各府省のホームページでは電子申請の窓口を開設しています。電子申請の体験もできますので、関心のある方はアクセスしてみてください。


■電子入札

 現在、県の工事や物品調達の入札は、指定された日時、場所に業者が入札書を持参する方式(紙入札)で行っています。県では、平成16年度からインターネットを利用した「電子入札」を導入・順次拡大し、平成18年度には、すべての入札案件を電子入札の対象とすることとしています。

 電子入札により、発注者と入札者の双方で入札業務の簡素化と効率化が図られるほか、透明性と競争性の向上によるコスト縮減効果が期待されます。


■電子署名

 インターネットを経由して行政手続を行う場合に、他人によるなりすましや通信途中での改ざんを防止する必要があります。こうしたリスクを回避するため、高度な暗号技術を使ってインターネット上で確かな本人確認ができる「電子署名」を付して申請等の情報を送信することになります。個人の場合は市町村が発行窓口となる「公的個人認証サービス」が、会社の場合は法務局が運用する「商業登記に基礎を置く電子認証制度」が利用できます。また、民間の電子認証局が動き出しており、日本商工会議所では電子入札に対応した電子認証サービスが提供されています。富山商工会議所をはじめ県内各地の商工会議所で電子証明書の申請取次ぎ業務を行っています。


▼電脳県庁のこれから

 行政の情報化は、住民と行政の関係のやりとりが紙媒体から電子媒体に変わるという外形的な変化にとどまらず、ITの特性を活かして、住民と行政との双方向のコミュニケーションの活性化や行政手続の透明化など、行政のあり方そのものの本質的な変化をもたらす可能性を内包しています。

 さらには、電子商取引をはじめとする社会全体のIT利用を促進し、県民利益の向上と経済の活性化にも結びつくものです。

 県では、今後とも「電脳県庁」の一層の充実に取り組んでまいります。


▼電子証明書の申請は当所へどうぞ

 日本商工会議所では、国土交通省をはじめ多くの都道府県、地方自治体などが採用を決めている「電子入札コアシステム」に対応した電子証明書「ビジネス認証サービスタイプ1」を発行しています。富山商工会議所では、電子証明書の取得申請関連書類を日本商工会議所へ取り次ぐ業務を行っています。詳しくは、当所情報課へお尋ねください。
  TEL076-423-1175

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