「商工とやま」H16年7月号

誌上セミナー 改正労働基準法について〔3〕

講師 社会保険労務士 上市 真也 氏

3.裁量労働制に関する改正

<1>裁量労働制とは

 裁量労働制とは、業務の性質上、一般の業務のように使用者から業務遂行の方法や時間の配分などについて具体的な指示を受けることがなじまない業務で、実際の労働時間数に関わらず、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度(みなし労働時間制)です。

 裁量労働制には、「専門業務型」と「企画業務型」の2種類があります。今回の改正では、それぞれいくつかの改正点があります。以下、概要を説明します。


<2>専門業務型

 専門業務型裁量労働制は、デザイナー、システムエンジニア等、専門的な業務に就くものが対象になります(対象業務は定められています)。

 今回の改正では、これを導入するために、使用者が次の措置を講ずることを、労使協定で定めなければならないこととされました。

(1)対象業務に従事する労働者の労働時間の状況に応じた労働者の健康・福祉を確保するための措置
(2)対象となる労働者からの苦情の処理に関する措置
(3)協定の有効期限(3年以内とすることが望ましい)
(4)労働者ごとに講じた(1)及び(2)の記録をすること
(5) (4)の記録を協定の有効期間及びその期間満了後3年間保存すること
 なお、既に専門業務型裁量労働制を導入している事業場においては、右記事項について労使協定で定めた上で、改めて、労働基準監督署に届け出なければなりません。


<3>企画業務型

 企画業務型裁量労働制は、事業運営の企画、立案、調査及び分析の業務を行うホワイトカラー労働者が対象になります(対象業務には要件が定められています)。

 今回の改正では、導入・運用の要件・手続きが以下のように改正されました。

(1)企画業務型裁量労働制の対象事業場について、本社等に限定しないこととされました。
(2)労使委員会の決議について、従来は委員全員の同意が必要でしたが、5分の4以上の多数でよいこととされました。
(3)労使委員会の労働者代表委員について、あらためて事業場の労働者の信任を得ることとする要件を廃止することとされました。
(4)労使委員会の設置届を廃止することとされました。
(5)使用者の行政官庁への定期報告事項は、対象労働者の労働時間の状況及びその労働者の健康・福祉確保措置の実施状況に限ることとされました。
(6)(5)の報告は、「決議の日から6か月以内ごとに1回」とすることとされました。


<4>導入に際して

 企画型裁量労働制は今後導入する企業が増えてくるものと思われますが、監督が非常に厳しい制度ですので、導入する場合は適正な運営が必要になります。
 また、裁量労働制を導入した企業については行政官庁が積極的に監督・指導を行っていく方針であると聞いております。したがって導入を考えておられる事業所はそうした点も十分に考慮して準備することが必要になります。


※本稿は2月20日(金)に開催した「改正労働基準法実務セミナー」の一部をまとめたものです。
 なお、講師上市真也氏は今回のセミナーの講義ノートをホームページで公開しておられます。詳しくはこちらをご覧ください。

(URL)http://www.shinjinji.com/

▼戻る