「商工とやま」平成20年4月号

高松市・高知市視察報告
市民に支持、信頼され続ける商店街づくり

 当所朝日副会頭を団長とし、中心市街地活性化委員会(瀬戸委員長)、都市基盤整備委員会(近藤委員長)、観光・コンベンション委員会(吉田委員長)ほか計16名が、2月21日(木)〜22日(金)に、高松市並びに高知市を視察し、両商工会議所役員や商店街関係者と懇談してまいりましたので、その概要を報告します。


■高松市(2月21日)


◎500年祭を元気に迎えるために

 高松市丸亀町商店街は、発祥が天正16年と長い歴史がある。しかしながら、昭和50年代後半頃からの自動車の普及、昭和63年の瀬戸大橋開通等により、郊外型SCやロードサイド店の増加が一挙に加速し、中心地区商店街の通行量・売上高は長期低迷が続いた。

 昭和63年、商店街では「開町400年祭」のイベントを108日間に亘り開催したが、その際に、100年後の500年祭も実施できるようにとの思いから、平成2年に「丸亀町再開発委員会」を発足。平成3年3月には商店街をAからGの7街区に分け、各街区に個性と役割を持たせる商店街再開発計画を策定した。


◎中心市街地の疲弊

 売場面積が一定レベルを超えると販売額と従業者数は減少するが、高松市内では平成11年からその傾向が顕著になった。坪効率も平成14年度から低下傾向を辿った。加えて、単位人口当たりの大型店売場面積比率が全国一位になった。

 また、バブル期には地価の高騰で中心市街地の居住人口は減少し、中心市街地から生鮮三品の店舗が消えた。


◎商店街が自ら発想を転換

 A街区の商店街幹部は、郊外型SCが消費者に支持されていることを冷静に受け止め、消費者に支持されない従来型の商店街からの脱皮を目指して、自らが発想の転換や創意工夫を凝らし、A街区の再開発の実現に向けて16年間頑張った。

 その一つに地権者の全員同意による定期借地権方式の採用(土地の所有権と利用権の分離)がある。この結果、再開発への投資額は大幅に削減された。


◎全国的に注目される再開発事業

 A街区には、平成18年12月にオープンしたマンションと商業施設の複合施設「壱番街」がある。

 A街区の再開発事業のハード・ソフトは各方面で高く評価され、「平成18年度全国新聞広告大賞」、「平成19年度土地活用モデル大賞・国土交通大臣賞」、「2007年度最優秀日経MJ賞」を受賞している。また、平成19年3月には、当時安倍首相が総務大臣を伴い視察懇談に訪れている。

 G街区を除く残る5街区は全て「小規模連鎖型」方式を導入し、今後5年間ほどで全区域の再開発を完了させる方針である。

 なお、街づくり組織である「高松市中心市街地活性化協議会」(行政・市民・商業関係者・学識経験者で構成)の権限は極めて強く、市や商店街が作る事業計画でも、市民が望まない内容は見直すこととしている。


◎平日の午後も賑わう「壱番街」

 話題の丸亀ドームにはガラス張りの広場があり、壱番街の東館・西館と三越高松店別館が接している。ドームに面する1階は、グッチやコーチ、ルイヴィトンなどの海外ブランド店がずらりと並び、青空を望む広場はイベントスペースにもなる。東館には、市民が多目的に使える「丸亀町レッツホール」(200名収容)も備えている。

 木曜の午後にもかかわらず、壱番街は多くの来街者で活気にあふれ賑わっていた。


■高知市(2月22日)

◎駅周辺との共存に疑問視

 高知市中心商店街には、高知駅北に立地する郊外型大型店との競合や、新駅周辺における今後の商業環境の変化等厳しい現状がある。

 高知駅周辺都市整備事業では、駅周辺の渋滞緩和や一体的な市街地の発展を目指して都市基盤整備が行われており、我々の視察後(2月26日)には新駅舎が竣工している。

 平成12年、四国最大のイオンモールが駅近郊へ出店したことにより、「はりまや橋」交差点の西武百貨店や中心商店街内の核的店舗等が閉鎖に追い込まれたことを背景に、中心地区の商店街では、再開発による駅周辺の新たな商業集積と中心市街地との回遊性について疑問視している。


◎動くまちの灯台「エスコーターズ」

 中心商店街で、「挨拶・案内・介助・整理(自転車等)・清掃」活動をする高知女子大学の学生グループ「エスコーターズ」は、TMOが商店街活性化事業として全国に先駆けて導入したものである。市民から親しまれ、「動く街の灯台」として街の中に溶け込んでいる。

 TMOでは、新しい仕掛けとして、路面電車を全面塗装した「エスコーターズ電車」を走らせ、電車等公共交通機関を使っての来街を呼びかけている。


◎市内最大の繁華街「帯屋町商店街」

 中心商店街活性化のために始まった、延べ120万もの人が集まる「よさこい祭り」のほかにも、高知の楽しみ方はたくさんある。

 帯屋町商店街は、高知城の東南からはりまや橋通りまで東西総延長714m、270余の商店で構成される市内最大の繁華街である。自転車に乗った人達もあわせ、人通りが非常に多いという印象をもった。


◎60以上の飲食店で賑わう「ひろめ市場」

 高知の風土を肌で感じることのできる「ひろめ市場」は、高知城・日曜市に近接した帯屋町の一角にある。飲食店を中心とした60以上の店舗で構成された屋台村的施設で、平成10年の開設以来、市民・観光客に親しまれている。飲食コーナーが随所にあり、合計で約400席が設けられている。

 お昼前であったが子供連れの主婦や、ビジネスマン、学生などで大変賑っていた。週末ともなると座って食べることができない程の人気という。


◎一度は乗ってみたい高知の私電

 バスの車窓からは、世界の電車が走っているのが見えた。

 市内を走る路面電車に、復元電車「維新号」や、かつてリスボン(ポルトガル)市内を走っていたという電車(1928年製)をはじめとする西欧諸国のクラシックな外国電車を走らせ、観光資源の1つとしている(運行しているのは土佐電鉄)。


◎交流人口増加に寄与する幕末・維新の人物群と関連史跡・施設

 高知県といえば、幕末・明治維新に活躍した坂本龍馬をはじめ三菱財閥の創始者岩崎弥太郎や、自由民権運動の板垣退助等が有名である。また現代では漫画の「フクちゃん」でお馴染みの横山隆一や「アンパンマン」のやなせたかし等を輩出しており、県内には、交流人口増加に貢献する史跡や施設が多い。とりわけ坂本龍馬は日本の歴史的大転換に果たした功績の大きさから、史跡や関連施設が10箇所を数える。

 県立坂本龍馬記念館はそのうちの1つで、遠く室戸岬の方向を見つめる坂本龍馬の銅像が建てられた桂浜を見下ろす丘の近くにある。複製ながら血しぶきも生々しい張り混ぜ屏風や数多くの直筆書簡や、幕末・維新の人物群のパネル写真等、展示資料も充実し、大変印象深かった。


 今回の視察に際し、高松商工会議所の細渓副会頭をはじめ、高松丸亀町商店街振興組合の古川理事長、高知商工会議所の横田副会頭、高知市商店街振興組合連合会の廣末理事長ほか、それぞれの皆様から貴重なお話と富山市中心市街地活性化へのエールをいただいたことに感謝を申し上げます。

(当所 中小企業支援部次長 大場淳二)


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