「商工とやま」平成21年1月号

特集
夢ある未来は我らで創る
〜ピンチの今こそ、おもしろい富山づくりを考えるチャンス〜

 今年度、当所は「地域活力を創造し、企業経営力の向上を支援する」ことをテーマに5つの重点目標を掲げ、各種事業を展開してきました。「地域活性化への貢献」はそのうちの1つで、「元気な街づくり」、「魅力ある観光づくり」のため、行政当局やその他の関係機関との連携を図りながら取り組んでいます。

 9月に開催した「全国産業観光フォーラム in とやま2008」では、全国からお客様をお迎えするにあたり、富山に何があり、どう見せるか、そしていかに楽しんでいただくかという視点で、私たち自身が富山について改めて見つめ直す機会にもなりました。

 今、富山は、7月の東海北陸自動車道全線開通に続いて、北陸新幹線の開業を5年後に控えており、人や物の流れが大きく変わろうとしています。

 そんな中にあって、富山の未来をどう描き、私たち商工会議所は何をすべきか。そこで、本誌は、若手経営者が集う当所青年部のお二人を交えて新春座談会を開催し、富山の未来について夢を語っていただきました。


■出席者
  副会頭 小林紀男氏
  副会頭・青年部OB会会長 朝日重剛氏
  青年部会長 寺本晋司氏
  青年部副会長・21年度会長予定 橘 泰行氏
【司会】小室 修 専務理事


■富山らしくどう生き残っていくか

●小室  平成20年は、米国の金融危機に端を発する「世界同時不況」の波が都市部に限らず日本全体に押し寄せました。とりわけ地域の中小企業にとっては、円高株安、消費低迷、雇用調整などの将来への不安要素を考えると、企業マインドは冷え込まざるを得ない、本当に厳しい年でしたね。

●橘  確かに経済情勢は大変な状況でしたが、日本ではこのほか、安全、安心の面で様々な問題も発生しました。やはり商売ですから、利益や目先のお金の問題で、今まではコストが安い海外へ動いてきました。

 本来はそういうものに頼らずに、地域の中で循環できるような産業構造が望ましいし、富山ならそれが十分可能な地域だと私は思っています。ですから、富山の中で循環できる産業を確立することが地域にとっては一番で、私は将来的にはそういった地域にしたいと思っているのです。北陸圏でもいいのですがね。

●小室  地産地消という言葉は一面それに通じるところがある、非常に重要なことだろうと思うのですが、片方では残念ながらグローバル化ということで、こちらが小さな商圏の中でこぢんまりと仲良くやっていこうと思っても、外からどんどん入ってくる。そういう中でどう折り合いをつけていくか、非常に難しいことだと思います。

●寺本  そうですね。こぢんまりとやっていくのは、今後難しくなってくるとは思います。ましてや5年後に新幹線が通るということであれば、都市間競争はますます激しくなっていくでしょうし。
 では、そういうときに富山が富山らしく、どう生き残っていくかということを考えていたのですが、隣には加賀百万石というものすごい文化を持った都市が終点駅としてあるわけで、やはり普通のことをしても勝ち目はありません。伝統的な文化が乏しいのであれば、反対に新しい文化を取り入れた方が、富山は優位に立てるのではないか、と思ったりします。最近では、いわゆるB級グルメが街おこしに役立っていたり、名古屋の世界コスプレ選手権に世界中から沢山の若い人達が集まっています。昔はコスプレといったら特別の人達がやるものだと思っていたのですが、それが今やミュージカルのような、ものすごいパワーのある文化になっていたりします。
 だから、もっと今の若者たちが求めている新しい文化をタウンムーブメントとしておこしていけば、もしかしたら隣の伝統文化に対抗できる、今後100年を考えたときには、むしろ富山が上をいけるのではないかと思ったりします。
 例えばB級グルメだったり、アニメや漫画。せっかく富山から藤子不二雄さんが出ておられるから、それこそ上品な美術館を建てるのではなくて、思い切って漫画博物館を建てるとか、とてつもないものを作る方が起爆剤になり、人が来るのではないかと思います。

■若い人達を集める「新しいもの」

●小室  要は、大衆が求めているものは何なのかということを、もう一度考え直してみる必要があるということですね。

●朝日  そう、若い人達が集まる仕掛け作りは大切です。そうすれば、中高年の人達も集まってきます。老若男女が自分達の生活空間を楽しめることが大切で、これは街づくりにも繋がります。ですから、若い人達が楽しんだり喜んだりする何かを新たに創り出せばいい。
 寺本さんがおっしゃった、新しいものを作っていくための素材は十分あると思います。富山には薬という大変重要な産業がある。それから名水も多くあります。これらは近県にはない富山の価値資源です。
 例えば、今流行りの美容エステやネイルアートには、ものすごく人が集まるわけです。これは伝統文化がなくてもできるものですよね。これに富山の薬を利用して、体にいい「美薬エステ」にしてみるだとか、付加価値のある新しいものを開発することによって、多くの人達に来ていただいて、それで活気づけば、これも1つの大きな地産地消になるのではないでしょうか。
 交流人口は勿論大切ですが、定住人口の増加策も打っていかないと、現状維持は衰退ということですからね。人がいないことには商業も工業も、地域も発展しないです。

●小室  11月の大和・北海道展はものすごい列ができる程の盛況ぶりでしたね。北海道展というと、我々の世代では新鮮なカニがある、ホタテがあると、どうしても海産物というイメージなのですが、今はガラッと変わってしまって、若者に大人気のお菓子や、ガラス工芸等に人が集まるようですね。

●朝日  そうです。花畑牧場の「生キャラメル」とかルタオの「フロマージュ」とかね。これらは伝統文化ではないのです。

●小室  そこですよ。今でもお菓子の「白い恋人」は有名だけど、それを超えて、全国に通用するお菓子がどんどん出てきています。

●朝日  だから、新しいものをつくっていく方が魅力になると思います。富山にはベースになるものがまだまだある。農業もあるし、漁業もある。魚からだって体にいいもの、例えばコラーゲン等がとれるわけで、そういうものを利用したエステ等、何か開発すればいいのではないでしょうか。
 そして、そういうものを全国ベースでPRしないと駄目です。この間、野菜の昆布〆や「氷見牛カレー」がテレビの全国版に出たら、売れて売れて大変なんだそうです。富山の人はどちらかというとあまり目立つのは嫌だという人が多いのですが、有名人を使うとかね。PRすることを考えないといけない。



■農商工連携でつくる「富山にしかできないもの」

●小室  今の富山は工業立県のイメージというか、実際にそれだけの力を持った県です。皆さんの新しい発想、考え方、チャレンジ精神が県内の産業を立派なものに育て上げるのではないかと思います。

●小林  そうですね。世の中や産業構造、それからニーズそのものがどんどん変わりますからね。ではこれからはどうなのかというと、長寿社会ということからすれば先ず健康志向。それから、今ほども話に出ているようにグルメ志向です。景色のように見るだけのものは1回見たらもういいやと思う。「ああ、こんなとこか、すごいね」と言いつつも「もう1回見たいね」とまでにはなかなか繋がらない。皆さんそうだと思います。だけど、おいしいものを食べると、「あれをもう1回食べたいね」となる。食べ物に対するリピーターは非常に多いと思います。食に対する人間の欲望というのは非常に強いですからね。
 健康志向の背景には、農業が見直されてきているのではないかと思うのです。バイオ技術だとか、日本でなければできないようないろいろなノウハウを農業にも大いに注ぎ込んで、質の高い農産物を提供していく。そして、それを輸出するぐらいの気持ちがあってもいいのではないでしょうか。特に富山県は、もともとのスタートは農業県でしょう。
 商工会議所は農商工連携にも取り組んでいますが、農業や漁業を商工業と組み合わせながら、質が高くて、ほかの県や国ではできないようなものを富山の新しい産業として育てていくことは、非常に大切なことではないかという感じがします。



■新しいものを生み出すヒント「会員ビジネス交流会」

●小室  商工会議所は、産業振興や観光等のいろいろな事業に取り組んでいるわけですが、新しい発想で新しいものや文化、産業を育てる仕掛けとして、例えば今年度に初めて開催した「会員ビジネス交流会」は手前味噌ですけれども参加企業の方々から評価をいただいています。

●小林  ビジネス交流会というのは、本来、商工会議所の最もやらなければいけない事業だったと思っています。今では1つの「強み」があるだけではもう済まない時代になっていますから、いろいろな企業の強みや良いところ、それからネットワーク等の力を借りたり、連携したりして大きくなっていくという時代ですからね。

●橘  いろいろな異業種団体との交流とか、我々青年部の中での交流もそうですが、これはいろいろな商売や産業が生まれるヒントがある絶好の場ですよね。

●小室  ビジネス交流会は企業の価値と価値との連携であり、地域商工業の地産地消であり、いろいろなテーマ・切り口でやれば、そこから何かヒントを探ろうと、会員同士で積極的に情報交換されています。

●小林  短い時間だけれども、企業紹介などもやってもらっていて、「そんな内容もやっているなら、そのノウハウでウチと一緒にどう?」とか、そういうことが起きてくるわけです。
 それに、会議所の会員同士でありながら、お互いに聞いたことのある社名だけど、どういう仕事をしておられるのか、知っているようで知らない。私自身、ユニークな会社等は結構知っているつもりだったんですけど、意外に知らないなと反省させられました。

●寺本  ビジネス交流会は非常にいいものだと思うのですが、どうしても「きちんとプレゼンテーションをしないといけない」とか、「ブースを持たなくてはいけない」となるとなかなか出にくくて。例えば、もっと間口を広げて、単に「交流をしましょう」というような会でも面白いのかなと思ったりします。

●小林  なるほど、それも1つのアイデアですよね。構えずに参加できることも大切な要素です。

●小室  商工会議所の会員サービスとして温めていることがありまして、「新入会員の集い」みたいなものをやろうかと考えています。もちろん商工会議所組織やサービス、メリット等を説明することが第1目的になりますが、気軽に会員同士で交流し、仲良くなっていただきたいのです。
 これらはどちらかというと社長さん方に集まってもらう会になると思うのですが、もう一つの新しい試みとして従業員さん達にも集まってもらう何か仕掛けができないかということも考えています。このあたりになってくると青年部の皆さんに大いに関わってもらい、アイデアを出し合って実現させたいと思っています。



■産業と観光とボランティアガイドの魅力

●小室  産業を生み出し、育てるにも、人が集まり、面白いと思っていただくことが前提になりますね。より多くの方に何をどのように見せるかという意味では、観光で活かすことも欠かせませんね。

●寺本  そうです。そのためにも、オリジナリティというのは必要です。この前、青年部の全国大会で滋賀県の長浜へ行ったのですが、長浜はもともとはシャッター通りとまで言われた商店街だった。ところが、黒壁スクエアを作ったり、ガラスの美術館を作ったりして、今は全く違っている。やはり全国的に同じような「まちづくり」をしていては駄目ということですよね。

●小室  そう思います。だから富山が他県、他都市と同じように観光、観光と言って力を入れて、人を呼ぶためにいろいろなことをやっても難しい。歴史的な遺産もなければ、文化もないわけですから。そういう意味では、富山が何でやっていくのかというと、産業観光なんですかね。

●小林  しかも切り口が大切です。富山の強みというとやはり「ものづくり」という視点からでしょう。  例えば、ます寿しを作っているところが見れるのは富山だけですからね。短時間で富山を案内するときには、そういうところを見せたりするのですが、結構喜ばれますよ。本当に。

●朝日  その点で富山には、運河等のようにほかにはないものや、食、水、薬などを組み合わせて、新しい文化に仕立て上げる要素がそろっていますね。
 ただ、富山にはボランティアガイドが少ない、まだまだ足りないですね。お客様に対して「勝手に自由に見ていって」みたいになって、これではホスピタリティを感じないのです。

●小室  高岡では瑞龍寺や金屋町等には全てボランティアガイドの方がいて、また説明が上手い。「土蔵造りのまち」とかというからずらっと並んでいるのかと思ったら、2〜3軒あるだけ。でも、これがその人が語ることによって「へぇ、なるほど」となる。いつのまにか話に引き込まれて、「素晴らしいもの」になる。

●朝日  そう、知的好奇心が満たされるというか、うれしくなるのですよ。だからリピーターが増えるのです。岩瀬の森家もいいですよ。森家の語り部に米田さんがいらっしゃいますが、私はああいう人がもっと街なかにおられたらなあ、と思います。そのほか、水墨美術館や環水公園にもボランティアガイドがおられますが、もっと増やしてもいいと思います。

●小室  観光の価値資源的なものはあっても分散していて、ここが観光スポットだよというものがはっきりしていない面があるのではないでしょうか。きっちりと位置付けができれば、そこに人を配置して、そういう人を養成することもできるのでしょうけれど。

●朝日  「富山っていいとこだね。あったかいね」って思われたいですよね。薬もあるし、食べ物もおいしいけど、でも本当に心に残るのは、訪れた先で人と話し合えたり、人の親切を感じたりした時の「温かさ」ですよ。

●橘  そういうものは郷土愛から出てくるような気がしますけれどもね。そこが欠けているのでしょうか。

●小林  郷土愛は年配の方々が強いと思いますね。元気な先輩方には頑張っていただきたいし、頑張りたいとおっしゃっている人達も多いですよ。
 それから、越中チャレンジと連携して、合格者に観光ボランティアナビゲーターのような資格を与えるというのはどうでしょう。次回の検定では上級部門が新設されるようだから、観光協会でも行政でも商工会議所でもいいから、そういう資格制度を作ればいいんじゃないかな。募集をすれば、応募してくれる人はきっと沢山いると思う。

●朝日  産業観光にそういった仕掛けが組み合わさると最高ですね。歴史的・文化的な観光資源は新しく作れないけど、今あるものを新たに楽しんでいただくのが、ボランティアガイドの素晴らしさであり、魅力です。

●小林  立山の室堂からトローリーバスで大観峰に降りると、次の黒部平へ向かうロープウェイ乗り場は狭くて、いつも順番待ちをする人達で一杯になるんだけど、この人達を相手に面白い話をする名物おじさんがいるんですよ。立山の歴史から現在に至るまで、いろいろなことを説明する。待っている時間は、大抵疲れてブツブツ文句を言いたくなるものだけど、この人にかかると、この時間が結構面白い。しゃべり方が最高に楽しい。最後の落ちには「私の話はこれに書いてあるから」と解説本を売る(笑)。1人が買うと、みんなつられて買うわけよ。

●朝日  郷土愛を超えてますね(笑)。産業と観光とボランティアガイドを結び付ければ、十分に楽しんでいただけるということですね。

●小室  社長さんの意識も来社される皆さんに工場を見てもらおうというようにだんだん変わってきているようで、今新しく工場を建設される場合は、見学できる会社が結構増えましたよね。

●朝日  いい傾向ですね。企業は秘密にしたい部分の問題や、商売と関係のないものに人員を割かなければならないという負担もあるでしょうけど、ほんの少しの時間でも歴史や秘話などを交えて面白おかしく付き添っていただけたら、それは最高のボランティアガイドになりますね。



■アイデア次第で富山らしさが面白くなる

●小室  商工会議所は引き続き、行政やまちづくりとやま等関係機関と一緒になって富山を元気にしていく中心的な役割を果たす使命があると思っています。
 「学店」や「おらっちゃ街なかラリー」等、新しくてオリジナルな事業を生み出せる、青年部の若い人達のエネルギーとユニークな発想は親会としても非常に期待したいところです。

●寺本  皆さんは、例えば出張から富山に帰ってきて、空港や駅に降りたとき気になりませんか。富山の顔が見えないというか、富山らしさがないというか…。

●小林  曇ってると、立山連峰は先ず見えないね。

●寺本  そんな時でも富山らしさを演出するような、立山連峰の大パノラマ写真があるかというと、空港にも駅にもない。ライトレールがランドマークのように感じないこともないですが、本来の富山らしさというものが表現されていないような気がするのです。立山連峰の良さとか、水の良さとか、それこそ薬だとか。そういったものをもっと街づくりに生かしていく方法はいくらでもあると思うのです。

●小室  まだ行政の方で検討中なのですが、富山駅の構想がほぼでき上がってきました。富山駅の新幹線ホームの一番東端から、立山連峰が全部見えるような造りになります。 そういう発想で、ガラス張りにしようということになっているのです。他県から来た人達が見て、「ああ、富山に来たんだね」と感じてもらおうという構想が、今練られているところです。

●橘  「水の王国とやま」として考えると、雨の日こそ、面白いものができるような気がしますね。前に東京へ行ったときにも、グランドプラザみたいな施設がたくさんありました。真ん中から水が滝のように落ちてきたり、時間がたったらポンプで上げたり、そんなことをしています。
 例えば城址公園は、側溝が狭くて雨が降ったら水溜りができてしまうそうです。低いところにある松川茶屋の周りがじゃぶじゃぶになって困ると聞いたので、「茶屋の真ん中に川を通せばどう? 雨の日は店の中に水が流れる面白い店になるよ」と言いましたら、「おお、それいいね」と話が盛り上がったことがあります。そういう逆の発想で、今あるものをもっと利用すれば、雨の日にも楽しめるものができそうだと思いますね。

●小室  その発想は斬新だね。  もっとも、富山らしさというのは目に見えるものだけではなくて、例えば匂いで、空港でも駅でも富山に着いた途端、薬のような匂いが軽くして「ああ、富山って薬の街だな」と感じられるような匂付けをしてみようかという話があるようですよ。

●朝日  ハーブの香りならいい感じですね。

●小室  いいですね。薬草園をつくることにもなっているし、そうやって、街全体で五感に訴えていく。

●橘  「くすりのとやま」なら、長生きを売りにしてみるのはどうでしょうか。薬はもちろん、立山信仰とか、霊山とか、延命水等を組み合わせた「富山に来たら長生きできる、健康になれる」体験コースがあったら、きっとワクワクして元気が出ますよね。
 それから、昔、棟方志功が富山に来て半年ほどで花開いたという話もあるので、「富山に来たら不思議な力が備わる、御利益がある」というのはどうでしょうか。立山連邦の標高約3,000mから富山湾の水深1,000mの、高度差4,000mが様々なものを生み出すパワー、神秘的な蜃気楼、そういったものを組み合わせるとますます面白くなると思うのです。

●小室  いいですねえ。そのような感じで分かりやすく、効果的に、しかも楽しんでもらえるような仕掛けがまだまだ浮かびそうですね。

●朝日  青年部が誘致を目指している平成23年度の全国大会はいいチャンスじゃないですか。会員同士はもちろんですが、高校生や大学生との学店事業もあるし、北海道の生キャラメルのように全国に通用するような、新しい富山ブランドを作って、皆さんが飛びつくような仕掛けをしてPRする絶好のチャンスになると思いますね。若い人達の斬新な発想に期待したいですね。



未来につながる夢「ドーム構想」

●小林  こんなご時勢でカネのないときに何を言うんだと思われるだろうけど、多目的で全天候型の大きなイベントホール、いわゆるドーム球場みたいなものが富山に1つ欲しい。インターチェンジの近くの、土地の安い田んぼの真ん中でいいんです。ドーム球場は大小、日本の各地区にありますが、6大ドームのような大きなものは北信越にはないですからね。
 今あるテクノホールが建った当時は、こんなに大きいものをどうするんだろうと思ったけど。それが今は予約が一杯で借りるのが大変で、小さいからもう1つ、第二テクノホールを作ろうという話があるようですが、全天候型のドーム球場みたいなものが1つあれば、スポーツは無論のこと、産業でも文化でも、イベントでも何でもできる。有名な歌手や文化人が来るとなれば、北信越から、いや全国からも人が集まってくるはずです。しかも、インターの近くで田んぼの真ん中なら便利で分かりやすいから。

●小室  むしろその方が、渋滞が起こらないので来やすかったりしますね。

●小林  それに今では、富山にはプロスポーツが3つもあって、みんなどこで練習しようか、どこで試合をしようかと迷っているわけです。利用価値は十分にあるわけですよ。

●橘  実は、私たち青年部が誘致を目指している全国大会にしても場所がないのです。4,000人規模なんですが富山には集まれる場所がないんです。

●小林  そうだろう。場所がないのに、人集めをしようとしてもね。

●小室  今、若者が集まるようなコンサートをする時は、オーバード・ホールで2,000人規模ですかね。最低でも1万人が入るものを持っていたら、人気ミュージシャンをどんどん呼べるし、若者がどれだけでも他府県から来ますよ。

●小林  「富山でこんなのがあるよ」と言っても、最初は「富山ってどこ?」と言われるかも知れないけど、集客できる器は経済効果を生み、必ず強みになる。

●小室  人が来ないところには発展はあり得ないですからね。

●小林  だから、どうしても富山に欲しい。それも他県に先んじて、どこにも真似のできないものをどーんと作る。そうしたら、みんな集まってくる。海外からも人を集められる可能性だってある。夢みたいな話だけども。

●朝日  こういう厳しい時代だから、なかなか夢のようなことを言う人がいなくなってしまってる。

●小林  だけど、危機感があるから、これからどうするのかを考え、どうしたいのかという夢を持つ。今のピンチはチャンスとも言えるんだよ。

●寺本  長浜の人達も、マンションができるというので危機感を持ったらしいですね。商店街が死んでしまう、どうしよう、と。

●小林  夢のある発想には人が引き寄せられ、共感し実現に向けてワアッと盛り上がって動かしていくというのが、世の中の常なのではないかと思いますし、そういう「やろうぜ!」というような機運が欲しい。 多目的ドームには財政的な問題が絡んでくるだろうけど、そこは選択と集中という考え方が必要だと思う。長い目で見た場合には、間違いなく効果がある。

●橘  確かに、北陸どころか環日本海を見据えたイベントができますね。

●小林  そう。だから、それこそ道州制にでもなったら各県毎に役割分担があるだろう。間違いなく、必ずそういう時代が来ると思う。そうなれば、多目的ドームがあるということは富山が認知され、生き残っていく1つの武器になっていくのではないかと思っている。

●小室  ものごとを1つの既成概念の範囲内で考えていたら、なかなか新しいことは生まれないということですね。今回は皆さんから、思いもよらない斬新なアイデアを聞かせていただいて、富山を元気にしていく上でも、商工会議所組織全体の活性化をさせていく上でも、若さとパッション(情熱)ある青年部の皆さんとの関わりを更に深めていくことがカギになると改めて感じました。 遊びでも、仕事でも、観光でも、毎日の生活でも、老若男女、皆さんが面白くて楽しめるならば、人は必ず集まる。だから、夢ある富山の未来は、いかに面白くするかにかかっているのではないか。ピンチの今こそ、面白い富山づくりを考えるチャンスと捉え、今後の商工会議所活動を推進していきたいと思います。
 ありがとうございました。


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