会報「商工とやま」平成21年06月号

特集
    おいしい水は、一人ひとりが守るもの
     〜循環する水の大切さを、再認識しよう〜



 立山連峰をはじめとした雄大な自然と、豊富な水資源に恵まれた富山。蛇口をひねれば、おいしい水がいつでも飲める環境に暮らす私たちは、水の大切さをつい忘れてしまいがちです。

 食の安全や防災、環境への意識が高まる今、富山市の水道は、どのように守られているのでしょうか。今回は富山市上下水道局のみなさんに富山市の上下水道についてお話を伺いました。循環する水の大切さについて、改めて考えてみませんか。


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富山の水のおいしさの秘密


 都会などで水道水を飲むと、富山の水のおいしさに改めて気づかされます。では、どうして、富山の水道水はおいしいのでしょうか。富山市上下水道局水道課の神田課長は、水道水のおいしさの理由を次のように語ります。

 「水道水は手を加えれば加えるほどまずくなりますが、水源がきれいな富山の水は、塩素などの薬品の量も最小限で済みます。旧厚生省のおいしい水研究会がまとめたおいしい水の要件として、図1のような理由が上げられていますが、これをみると、富山市の水道水はおいしい水道水の要件をすべて満たしていることがわかります」。



水道水のペットボトル発売中


 富山市上下水道局では、市の水道水をつかった「水のペットボトル」を販売しています。昨年秋に放送されたテレビ朝日の「シルシルミシル」という番組では、全国から15種類の水道水がエントリーした中で、おいしい水1位に選ばれました。



新しくなった流杉浄水場 信頼性が高く、地球環境にやさしい浄水場を目指して


 流杉浄水場は、富山市の水道の基幹施設として、市内全域の72%の市民に水道を、また、14の事業所に工業用水を供給しています。昭和40年に稼働が始まり、近年、施設全体の老朽化が問題となっていました。さらに、平成7年の阪神淡路大震災での水道をはじめとしたライフラインの壊滅的な打撃を教訓として、耐震化対策も急がれていました。

 そこで、富山市では浄水場の改築 を目指し、平成11年度に施設の隣接地に新たに建設用地を取得。平成17年度から工事に本格着工し、約140億円で改築がすすめられました。そして、先頃、3月28日に新流杉浄水場の竣工式が行われ、4月からは市民のライフラインを担う重要な施設として、供用が開始されています。

 「新流杉浄水場は、いままでにない特色をもった浄水場となっています。安全でおいしい水を供給する最新の水処理システム、直下型地震にも対応した耐震構造などの他に、環境負荷の低減や資源の有効活用を実践するため、小水力・太陽光発電システムを導入しています」と語る神田課長。

 新流杉浄水場では、地形の高低差を活用した、ポンプに頼らない自然流下送水システムが導入され、小水力・太陽光発電システムによって施設内の電力の約10%を自家発電しています。自然エネルギーを有効活用し、二酸化炭素の排出を抑制する仕組みとなっているのです。

<新流杉浄水場の特色>
 @安全でおいしい水を安定的に供給できる施設(最新の水処理システムを採用)
 A地震や災害に強く、安全で安心できる施設(直下型地震に対応した耐震構造)
 B自然エネルギーを活用し、地球環境にやさしい施設(小水力・太陽光発電システムの導入)
 C水とのふれあいを通して水資源の大切さを学べる、市民に開かれた施設



老朽化した水道管は「施設更新時代」へ


 流杉浄水場と同じく、昭和40年代から50年代にかけての水道事業で整備された水道管などの施設は老朽化し、本格的な「施設更新時代」を迎えています。富山市の水道管の本管は延べ約3、000H。そのうち毎年約50Hが、更新されています。

 水道管の法定耐用年数は40年ですが、阪神淡路大震災以後は順次、耐震継手管に取り替えられています。これまでに約900Hが取り替えられていて、水道管の耐震化率は31・2%。全国的にみても非常に高いレベルで耐震化がすすめられています。



年400kmの漏水調査


 水道管の漏水は、表面に水が出ている場合は発見と修繕は簡単ですが、地中で漏れている場合は困難を伴います。富山市上下水道施設管理センター水道維持係の田辺係長は維持管理の難しさを次のように話します。

 「富山市では計画的に、毎年約400Hの漏水調査を民間に委託して行っていますが、ほとんどの場合は地中での漏水です。その場合は地面の上から漏水探知機で、あるいは本管に聴診器のようなものを当てて探知することになります。また、交通量の多いところでは夜間調査を行います。全体ではあまりに範囲が広過ぎますので、過去のデータを見て、漏水がおきた地区や大型車がよく通る場所など、ある程度絞り込んでから調査しています」。



豪雨災害から街を守る雨水管整備


 次に、下水道の役割や、市内で浸水被害が発生している点について、富山市上下水道局下水道課計画係の杉木主任に伺いました。

 「下水道には、生活環境の改善、浸水の防除、河川、湖沼、海域などの公共用水域の水質保全、資源の有効利用などの役割があります。

 また、下水管には、汚水だけを流す下水管と、汚水と雨水をいっしょに流す合流管、雨水だけを流す雨水管があります。合流管と雨水管については、都市内に降る雨水をすみやかに排除する役割がありますが、近年都市化がすすみ、降った雨が浸透しにくくなったり、これまでの想定を超えた集中豪雨が発生して、浸水被害が発生しています」とのこと。

 富山市上下水道局給排水サービス課の辻主幹は、今後の雨水管整備計画について「富山市中心市街地の約277haは、下水道事業の初期に整備された地域のため、汚水と雨水がいっしょに流れる合流式下水道となっています。今後は、雨水管の整備や、大規模な雨水貯留管の整備も必要と考えており、豪雨災害から街を守る施策が大変重要になります」と指摘されました。



きれいな水を海に還すために


 私たちが使った排水は、富山市内9カ所の浄化センターと県の神通川左岸浄化センターで、きれいな水に処理されて富山湾へと流されます。なかでも浜黒崎浄化センターは富山市中心地区の下水を処理する中枢施設で、現在、1日に処理できる汚水は17万8、500G。標準活性汚泥法という微生物を使った処理法で、浄化されています。沈殿分離された汚泥は有機肥料として再利用され、花壇や畑などに利用されています。

 浜黒崎浄化センターの高原主幹、數山主査は、水の循環の仕組みを知ることの大切さについて、「微生物を使ったこの下水処理法では、大量のゴミや薬品等による急激な水質の変化に対応することはできません。水は地球を循環していますから、流せば終わりではありません。子や孫に負の遺産を残さずに、水をきれいにして海に還すという意識を一人ひとりが持つことが大事です。

 また、日頃の心掛けとして、微生物では油を分解することはできませんし、髪の毛も、一本一本は細く弱いですが、浄化センターに来る頃には、ロープ状になっていることがあります。それが機械に絡み付くと、故障の原因ともなります。ぜひ、油や細かなゴミの処理にも気をつけていただきたいですね」と訴えます。



飲食店での油処理を適切に

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 近年、下水管が固まった油で詰まってしまうトラブルが多発しています。そこで、市では、飲食店などに設置されたグリーストラップの適切な管理と清掃を呼びかけています。

 グリーストラップは、厨房の排水に含まれる「油脂分」「クズ」を取り除くための装置です。富山市上下水道管理センター下水道維持係の新庄係長は「油が固まったグリーストラップのバスケットは毎朝の清掃が重要」と語ります。グリーストラップが油でいっぱいになっていると、悪臭や、下水管が詰まる原因となります。油が熱いときはそのまま流れても、下水管に集まったときに、他から流れてくる冷たい排水によって、油が固まってしまいます。

 清潔な店づくりのためにも、ぜひ、こまめな清掃を心掛けたいものです。家庭でも、油はゴミとして捨てるなど、適切な処理をしましょう。

≪水をきれいにするためのポイント≫
 @トイレの紙は水にとけるものを使用する。
 A洗剤は量をはかったり、注意書きをよく見て、使いすぎないようにする。
 B油はそのまま流さず、新聞紙などに吸い込ませるか、固めてゴミとして出す。
 C調理くずや食べ残しは流さない。
 Dディスポーザーは単体で使用しない。
 (ディスポーザー排水処理システム設置には、事前に上下水道局への確認申請と完成後の検査が必要です)



下水道接続率のアップを


 富山市の公共下水道の人口普及率は平成19年度末で約84・6%ですが、家の前まで下水管が来ていても、まだ下水道接続工事をしていない家庭もあります。その場合、家庭からの排水はそのまま河川や海へと流れることになり、きれいな水と環境を守ることができません。富山市では、トイレの水洗化と下水道の普及に力を入れています。



年々減少する上下水道使用量

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 上下水道の使用量は、全国的にみても年々減少傾向にあります。少子高齢化による人口減少、バブル崩壊後の生産体制の縮小化、低コスト化などの社会経済活動の変化。さらに、トイレや洗濯機など、環境に配慮した節水型商品の開発などによって、水需要そのものが減少しています。

 これらの理由によって、富山市の場合も同様に、水需要のさらなる減少が将来的に見込まれています。

 「今後の水道事業経営に大きな影響を及ぼすことが予想され、多くの自治体の課題となっています」と語るのは、富山市上下水道局料金課の石坂課長。

 環境を守り、コストを削減するための節水が積極的にすすめられてきましたが、一方で、今後の安定した事業継続が大きな課題となっています。


 いつでも当たり前のように飲んでいる水道の水も、もとは山から流れ出た水です。山の水は浄水場を経て、安全に私たちの元へと届けられています。また、浄化センターできれいにして富山湾に流された水は、やがて山に降る雨となり、すべての生き物の命の源となります。人間の体の約60〜70%は水です。水は地球を巡り、人間を含めたさまざまな生命の中を循環しているということを再認識し、日常生活の中で、一人ひとりがきれいな水を守るという意識を忘れないでいたいものです。



■お問い合わせ先
 富山市上下水道局
 富山市牛島本町2-1-20  TEL:076-432-8580  FAX:076-432-8635



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