会報「商工とやま」平成21年7月号

特集2 その悩み、商工会議所を頼ってみませんか 〜お客様と良い関係を築く仕組みが、好循環を生んだエステサロン〜 地域力連携拠点事業 事例紹介(1)


当所には、経営力の向上(経営革新、IT活用)、創業・再チャレンジ、地域資源活用、農商工連携、事業承継など、事業所の皆さんの悩みを各分野の専門家がバックアップする「地域力連携拠点事業」があります。

今回は、「どうやって新規顧客を獲得し、売り上げを伸ばしていくか」について相談をされた、「エステティックサロン ワンジュ」代表の森田壽子さんに伺いました。

17年のキャリアをもつエステティシャン


平成19年4月、森田さんは富山市中市で「エステティックサロンワンジュ」を開業しました。オールハンドの施術を基本にしたトータルサロンで、西洋医学に東洋医学を取り入れ、身体の内面と外面、精神面の3つの柱に基づいたソワンエステを行っています。

森田さんは、エステティシャンとして17年のキャリアがあります。開業前はエステサロンに勤めており、富山市掛尾町の掛尾パレス内にあった支店のオープンから全てを任されていました。お客様にも恵まれ、お店としては順調だったのですが、ある日突然、掛尾パレスが休館し、そのまま閉鎖が決まってしまいます。

店を開けることができなくなった森田さんは、「予約のお客様をお待たせすることはできない」と、これをきっかけに独立を決意しました。

これまでの実績もノウハウもある。何より、森田さんの長女、恵梨さんが大手のサロンに勤めて8年になり、エステティシャンとして独立を考える時期がきていました。「母娘で一緒なら、きっとやっていける」という思いがあったのです。


経営者としては素人を実感


ところが、メニューの作成や集客など、これまで店長として自ら考えてやってきたとは言え、あくまでも社長の下での活動だったことに気づきます。

「エステティシャンとしての技術は専門分野ですが、経営面は素人だった。勤めていた時と違い、誰も頼ることができず不安でいっぱいになった」。

経営者として必要な知識や情報を得るために、富山商工会議所に入会。その年の決算を自力でやって大変な苦労をした森田さんは、自分で記帳から決算・申告までできるようになるために「記帳指導」を受講。帳簿を見ながら、広告宣伝費にお金をつぎ込んでもなかなか継続客に結びつかない。何とか良い方法はないか、と悩む森田さんに、当所はセミナーの受講を勧めました。

森田さんが受講したのは、当所地域力連携拠点事業が開催していた「知的資産経営」実践セミナー(5回シリーズ)の最終回「顧客心理から作る実践計画―戦略プロセスとツールの使い方」(平成20年9月24日実施)でした。セミナー終了後、受講者には専門家を無料で派遣すると聞くと、すぐに申込みました。


「分析」で見えた方向性


専門家は、「強み」「弱み」をはっきりさせ、問題に対して何をすべきかアドバイスをします。

新規顧客をどうやって獲得するか。先ず、お客様のことを知るため、気軽に記入してもらえる内容に絞ったアンケートを実施。お客様のことを分かっているつもりが、実は良く知らなかったことに気づきます。

「掛尾時代からのお客様もいらっしゃいますので、今さら?という気がしました。でも、アンケート結果を分析してみて、お客様の殆どが紹介による来店だったことを知り、とてもビックリしました」。

エステという性質上、お店選びに慎重になるお客様の立場で考えると、広告宣伝するよりも、継続客が「友達に紹介したくなる」サービスや仕組みづくりをする方が集客につながり易いことが分かりました。

そこで、ビジターに対して継続客を差別化し、サービスを充実させるために始めたのが「《会員限定》携帯メール配信」です。売上増を目的にしたものではなく、お客様に喜ばれるミニ情報を提供しています。

「例えば、『皮脳同根』という言葉をご存じですか? 業界では知っていて当然の知識でも、一般的には意外に知られていないことが多いようなので、今まで勉強してきたことや気付いたことの中から皆さんに役立つ情報を、娘と話し合いながら吟味しています。今では毎週月曜日正午の配信を楽しみにして下さる方もいらっしゃいます。また、携帯メールが苦手の方でもいつの間にか慣れて、(ソワンジュ以外でも)いろいろなメール会員サービスを利用できるようになって得した、と喜ばれたりすると、やっぱり嬉しいですね」。

森田さんは、今まで考えたこともなかった、施術以外でのサービス提供に手応えを感じています。


お客様に対する気持ちが変わった


今年4月には、ワインバーのソムリエをお招きし、レストランで美味しいフランス料理を楽しむ、「《会員限定》2周年記念感謝祭」を開催しました。サロンを離れての、初めての試みでしたが、アットホームな雰囲気で素敵なひとときになりました。終わりに、レストランのオーナーから、参加者全員にサービス券がプレゼントされました。

「参加した皆さんが『美味しかったので、(この券を利用して)また食べに来よう』と言って下さったのは、感謝祭が大成功ということですよね。オーナーにも大変喜んでいただけたようでした。

今回のように、異業種同士で連携し、お互いに協力し合えるような、そして会員の皆さんが喜んで下さるようなことを、今後もどんどん考えていきたいですね」。

新規顧客をどうしたら増やせるだろう、と一人で悩んでいた頃に比べ、森田さんのお客様に対する気持ちは随分と変わりました。エステティシャンとして技術面での思いは同じですが、経営者としての立場から、どうしたらお客様に喜んでもらえるか、そして、この思いをいかに伝えていくか、と日々考えるようになりました。

今では、お客様と良い関係を築いていくための「仕組み」が徐々に増え、良い循環が生まれているように感じられます。


前よりも「経営」が身近になった


森田さんが受講したセミナーでは、専門家の個別指導を3回まで無料で受けることができました。短期間に集中して指導を受けてみて、自分のやり易い形で、効率の良い指導を受けられることが分かり、月1回の指導を1年間継続することにしました。

今年1年間の計画を作成したほか、財務面では日次・月次データの分析の仕方等を教わっています。

「気候や季節の習慣・行事などに合わせて、どんなことを提供していくかを書き出したら、やりたいことが明確になり、それらを関連付けることもできて、非常に効率良く物事を考え、進められるようになりました」。

何のために、何を、どうするか。なすべき方向性が見えて、迷いなく進む森田さんですが、一人で経営していく不安はまだまだ募ります。

「でも、指導を受けたことによって、前よりも経営が身近になった気がします。分析することを教わって、経営者の目で物事を見て、考えられるようになったのかも知れませんね。今後も商工会議所の講習会等を活用して、勉強していきたいと思います。

自分の考えや、出来ることには限界があると思うんです。だから、弱いところは頼ればいい。あの時、私はセミナーの受講を勧めていただいたことに本当に感謝しています。私にとって1つの山を越えるきっかけになりましたから」。


母娘だからこそできる、おもてなし


前述の「皮脳同根」という言葉は、文字通り「皮膚と脳は同じ根を持つ」という意味。胎児が母親のお腹の中で成長するときに、皮膚と脳が同じ細胞から分裂して作られることから、とても密接な関係にあります。

同じ根である肌は、脳で「美肌」をイメージすれば皮膚が反応してその通りなってくるし、嬉しいことや幸せな気分になれば、自然と肌艶、顔色が良くなります。逆に、肌を温め、労われば、心も落ち着いてリラックスできます。森田さんが、お客様に喜んでいただけるように、と配信しているメールや感謝祭等は、とても理にかなうことなのです。

母娘でやる難しさもあるかもしれませんが、森田さんは「娘は私の片腕として大切な存在」と言い、ずっとエステティシャンとしての母を見てきた恵梨さんは「この仕事以外は考えられない」と意欲的。この上なく心強いパートナーです。

今後もソワンジュでは、母娘だからこそできる、心のこもったおもてなしを強みに、お客様が美しく、健康で、楽しい毎日を過ごされるようにお手伝いしていきます。



商売をしていれば、「売り上げが減った・伸びない」、「新規顧客が獲得できない」等の悩みは、大なり小なり必ずあるのではないでしょうか。

当所へ気軽にご相談いただければ、様々な支援制度を駆使して対応いたします。専門家の視点から、自身では気づかなかった問題点が見つかり、効率的に改善・解決策に取り掛かることができます。

お勧めは、専門家が担当する「定時相談室」です。相談は無料、秘密は厳守します(▼こちらをご参照ください)。
 森田さんの言葉にもあるように、「弱いところは頼って」みてはいかがでしょうか。



≪事業所紹介≫
代表 森田 壽子  富山市中市2−8−56サンリット101  TEL:076-424-9500
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