会報「商工とやま」平成21年11月号

経営応援コーナー
  第5回 売れない時代に売る戦略のつくり方
   〜顧客心理段階を高めるのに役立つツールとは?〜



◇チラシ、DM、ホームページ…一番効果的なツールは何か?


 「売上を10倍にした必殺チラシはこれだ」「ホームページで集客3倍」など、ビジネス書のコーナーでは、そんな売り文句の書籍が並んでいます。

 「どのツールが売上UPに一番効果的ですか?」とよく聞かれますが、予算を投下したテレビCMでも外れることもあれば、プリンタで印刷作成したクーポンがヒットすることもある。

 なぜ、こうした事態が起こるのか?それが今回のテーマです。

 先程の質問の答え、一番効果的なのは、前回の連載で紹介した「顧客心理段階」とうまく噛み合ったツールです。予想以上の力を発揮するのは、この「噛み合う」ことが前提となります。

 例えば、ペットボトルのお茶をコンビニへ買いに行く場面を想像して下さい。



 先ず、そのA社の商品をCMなどで見たことで商品を認知し、「おいしそう」と関心を高め、Webなどで事前調査をします。そして、その商品を買うためにコンビニへ行くと、ライバルB社のお茶にはPOPが飾られ、マスコットが当たるキャンペーンが実施されているのを発見する。

 すると、いざA社の商品を買おうと足を運んだのに、最後の最後で何故かライバルB社の商品を買ってしまった。

 そうした経験を持つ方も少なくないと思います。



◇大切なのは顧客がどう消費するかをイメージして、ツールを投入すること


 広告費を投じた企業から見れば、たまったものではありません。相当のお金をかけて集客したのに、結果は他社を儲けさせているだけというケースはよく見られます。従って、顧客が『どんな購買行動をとるか?』ということをよく見極め、ツールをプロセスと「噛み合わせる」ことが非常に重要な要素となります。

 ツールはポスターやチラシ、DMなどカタチあるものの他に、セールストークや電話などカタチのないものも含まれます。売上を伸ばしている企業では、こうしたカタチのないツールを上手に活用しているケースが見られます。

 例えば、認知を高めるのにDMを送ったとします。しかし相手が読んでくれたかわからない。机などに置きっぱなしの可能性も考えられます。

 そんな時、有効なのが『プラス電話』という手法です。これは「DM、届きましたか?」と一本電話を入れることで、お客様に「あ、そうだ。忘れてた」という関心を高めさせる効果が得られます。旬のネタを仕入れた鮨屋やスナックなどからお誘いの電話がよくかかってきますが、これも『プラス電話』という手法の典型的な例と言えるでしょう。富山のあるシステム系の企業においても、セミナーの集客をする際などにこの手法を利用し成功を収めています。

 結局は業種が違えども、効果をもたらすツール作成のキーワードは「顧客心理」だと言えます。「これだけ目立ったから、予算をかけたから効果があるだろう…」と思うのは非常に危険な面があります。やはり、お客様がその商品を購入するシーンを思い浮かべながら、その場面において最も効果的なツールを検討、投入することが、成功のための近道と言えるでしょう。

 次回は、ツールを繰り出してもなかなか購入までの顧客心理段階(認知→関心→調査→意欲→購入→継続)をスムーズに上ってくれない…、特に、高額商品や法人営業の場合によく見られる問題解消のための、ある法則についてご紹介したいと思います。




当所地域力連携拠点事業の専門家/石橋孝史氏((株)ヒューマンサポート/取締役)に執筆のご協力をいただいています。


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