会報「商工とやま」平成22年1月号
経営応援コーナー
第7回 売れない時代に売る戦略のつくり方
〜来店・購入の意欲を刺激する「催事効果」を大切に〜
顧客の心理段階=プロセスに、ツールを組み込み、買ってもらうための設計図をつくる。このPT設計の存在が売上増加のポイント、とこれまで述べてきました。今回は、購入まであと一歩のところでとどまっている顧客に対しての打ち手、催事効果についてご紹介します。
◇知名度は上がった。関心もある。それでも動かない顧客の背中をどう押すか?
情報過剰時代の消費行動の中に「商品やサービスを知っている、関心もある」という顧客心理があります。しかし、競合他社の情報に紛れた結果、自社の商品やサービスの購入になかなか結びつかないケースが多く見られます。
例えば、CMで見た(認知)ビールを買おう(関心)と酒屋に行っても、店頭では違うブランドを選んで買ってしまう行動などが典型です。
そこで、心理段階を高めた顧客を逃さないために、購入へのもうひと押し、刺激を与えるのが「催事効果」です。
「催事効果」というと、大規模なイベントやキャンペーンを連想されがちですが、実演販売や営業マンなどが良く使う「御社だけ特別にこの価格で…」といった必殺トークもこれらに含まれます。
予算の限られた企業では「購入の一歩手前で迷っている顧客の気持ちを高めるもの」と広く捉え、有形・無形にこだわらずに、顧客を引き付ける打開策を組み込むことが重要です。
◇顧客にとって有益な情報を無理のない範囲でこまめに変化を
「催事効果」で特に必要なのは、顧客にとって有益な情報です。身近な言葉で言えば 「おトク感」や「楽しさ」などであり、代表的なものが価格の値引きです。「20日・30日は5%オフ」などは有名な小売チェーンなどの手法ですが、そればかりでは飽きられてしまいます。また、閉店セールの看板がずっと垂れ下っているようでは「お得だ、行ってみよう」という刺激にはなりにくいと思います。
大事なのは、無理なくできる範囲で、催事の中身を少しずつ変化させていくことです。
この変化を上手く取り入れているのが街のスーパーです。本日の特売品、ポイント2倍デー、詰め込み放題など、手法を少しずつ変えながら顧客の「行ってみようか」という心理を刺激しています。このような取り組みは小売業に限ったことではありません。
例えばある歯科医では、昆虫教室や紙芝居を開いたりして、将来の見込み客の獲得に取り組んでいます。また映画館やホテルなど固定費の高いサービス業では、稼働率の悪い時に催事を組み込むのがポイントであり、レディースデーはその代表的例です。また、福井県の化粧品店では、売上が落ち込む月に無料ミニエステという診断サービスを導入し、売上増加を達成しています。
大切なことは「ウチの業種は催事効果とは関係ない」と決めつけないことです。
顧客の警戒心を解き、心理的なハードルを下げる。売りつけるのではなく、信頼関係を醸成し「買っていただく」、そのきっかけを作るのが催事効果です。
一見、催事とは関係ないように思える業態や法人営業などの場合でも多く活用されている手法であり、非常に重要な要素です。
当所地域力連携拠点事業の専門家/石橋孝史氏((株)ヒューマンサポート/取締役)に執筆のご協力をいただいています。