会報「商工とやま」平成22年2・3月号

経営応援コーナー
  第8回 売れない時代に売る戦略のつくり方
   〜増販増客カレンダーと成功事例の水平展開について〜


 バレンタインデーにチョコレートを贈る。生活に定着したこの習慣は、業界主導ではじまった日本独自のものだとご存じの方も多いと思います。毎年、年間消費量の約2割がこの日に消費される特需となっていますが、「焼き肉店で29日は半額」「11月22日はいい夫婦の感謝イベント」というケースもこれに類似しています。ほかにも、自然のリズムをビジネスと融合できないか?というような観点から見てみると、身近に出来るイベントがあるように思います。例えば、月のリズムに合わせて企画を立てる「満月祭」などが良い例です。

◇カレンダーをもとに企画を考えれば、365日、毎日がビジネスチャンスに


 何かにこじつけたり、季節の動きをヒントにしながら、売れない状況を打開していく。そうした時に役に立つのが『増販増客カレンダー』という考え方です。

 これは、売上を伸ばす企画をカレンダーに落とし込み、年間計画を作成する方法です。

 カレンダーをもとに、できれば売上が落ち込んでいる月をなんとかしたい、そう考えるのは当然ですが、苦戦状況をV字的に回復するのは相当な労力が必要です。そこで、攻め方の手順としては、上手くいきそうな季節・テーマを選ぶのがコツです。つまり、攻めやすいところを攻めることが鉄則です。例えば、夜に集客の強い飲食店であれば、ランチの誘客を図るより、強みを活かして新年会など季節毎の行事にターゲットを絞ったフェアを開催する作戦の方がより効果的です。

 売上増加に取り組みやすいだけでなく、スタッフに「こうすれば上手くいく」という成功体験や手応えを実感させることは、その次の困難な市場を攻める際の大きな指針と自信にも繋がります。


◇成功した事例を、他の月に展開する。忘れてはならない2つの要素とは?


 1月に上手くいった必勝パターンを3月にも試してみる。これを「水平展開」と言いますが、水平展開するときに役立つ2つの要素をご紹介します。それは「顧客名簿の収集」と「流れをカタチに残す」ことです。

 「顧客名簿」を集める際には、お客様の名前、住所などのほかに、年齢や誕生日など特別な記念日を聞きだすことが非常に重要です。では何故、顧客名簿が重要なのか? それは新規客と既存客を獲得するコストの差にあります。

 一般的に、新規客獲得のためのコストは既存客の5倍かかると言われています。

 もし顧客名簿を入手できれば、電話や葉書を利用するだけで、予算をかけずに集客ができます。また、エステや美容室などカルテを使って容易に顧客名簿を入手できる業態がある一方で、飲食店のように苦手とする業態もあります。その場合は特典付きのアンケート等を収集する方法が効果的です。

 北陸のある自動車整備会社では、顧客名簿を集め、季節の絵葉書を送ることで顧客に忘れられない存在となり、大幅な売上増加を達成しました。コストは切手代とプリント代のみ。是非、試してみる価値があるのではないでしょうか?

 もうひとつは、「カタチに残す」ことです。私達は企画の内容を「企画書」にまとめていますが、パソコンが苦手な方は手書きでも構いません。忙しい中では手間がかかりますが、とにかく「カタチに残す」ことが大事です。これによって、もしスタッフやアルバイトが変わったとしても「あの時、こうやった」と伝えることができ、会議などの手間も省けます。シンプルですが、マニュアルの代わりを果たします。更に、上手くいかなかった原因を分析して次に生かす際にも大いに役立ちます。

 次回は、原因と結果を見つめ直す、「検証の重要性」について詳しくお伝えします。 当所地域力連携拠点事業の専門家/石橋孝史氏((株)ヒューマンサポート/取締役)に執筆のご協力をいただいています。


▼機関紙「商工とやま」TOP