会報「商工とやま」平成23年5月号

特集2
中小企業応援センター事業 事例紹介・
  「いつまでも若々しく美しい女性であってほしい」
   その思いを、一歩ずつかたちにしていくために
      Lef代表 小林利英さん


 当所は、創業を目指す方や創業間もない方に、創業に必要な経営知識やノウハウ等について、専門家を派遣してアドバイスしています。今回は、カシミア製品のデザイン・製造・販売を手掛けるLef(レフ)代表の小林利英さんに、当所の創業相談支援を受けた感想や事業内容、今後の目標などについてお話を伺いました。


パリ留学で、感性と独立心を磨く


 小林利英さんは、富山市婦中町出身。大阪の服飾系短大を卒業後、大阪のアパレルメーカーにデザイナーとして勤務。25歳のときにフランスに1年間留学して語学学校に通い、パリのメゾン(ファッション・ブランド)で学生としてアルバイト研修するなど、ファッションの最先端で学び、感性を磨きました。

 「かつて大阪で仕事をしていた会社のパリ支店でアルバイトをしたり、そこから紹介してもらった小さなメゾンで、アシスタントとして仕事をすることができました。言葉が一番大変で、思いをうまく伝えることができず、苦しい思いもたくさんしました。でも、あの時に頑張った経験が、いまの自分の精神的な支えになっています。それに、年齢も国籍も様々な女性たちと出会い、自分の生き方を大切に、自由に生きている姿を見て刺激を受け、すごく楽しかったですね」

 パリ留学で、広い視野と強い精神力を身につけることができたと話す小林さん。留学後は帰郷し、富山のアパレルメーカーにデザイナーとして約3年間勤務しました。その会社を退職後、これまでの経験を生かして独立したいと考え当所に相談。中小企業応援センター事業の創業支援を受けることになりました。


法人の共同経営から、1人での個人事業創業へ


 「最初は、以前、同じ職場で働いていた中国人女性と共同で事業を始めたいと考え、法人設立についてのアドバイスや事業計画の作成、財務などについて相談しました」

 当所では専門家を派遣し、創業に関しての留意点や法人設立のメリット・デメリット、事業計画の作成方法などについて支援。小林さんはまず5W1Hについて自分の思い描くキーワードを書き出していきました。そして自分のやりたいことを整理し、専門家とともに商圏、ターゲット、事業領域、商品政策なども確認していきました。

 「相談するうちに、いろいろなことが見えてきました。中国人の友人と共同経営で法人化するとなると、500万円以上の出資が必要となり、資金面で大きな問題があること。また、彼女は優秀で経歴もすばらしい人なのに、創業したての不安定な会社で仕事をすると、今後のビザにも影響が出てくるかもしれないということも。そこで、彼女にとっては、私と独立するよりも安定した会社に就職した方がいいのではと考えたんです」

 専門家のアドバイスのもと、お互いにとっての最善を考えた結果、小林さんは個人事業として1人での創業を決意。約8年間、アパレル業界でデザイナーとして働いてきた経験やネットワークを活かして、自宅を拠点に上質なカシミアニット製品を自らデザインし、製造・販売を手掛けることにしました。


事業計画でビジョンが明確に


 小林さんは、自分の身の丈に合った、できるだけ無駄を省いた事業計画を作成していきました。また、創業後5年間の収支予測の手法などについても説明を受け、経営理念、ビジョン、戦略、戦術について、明確に記入できるようになりました。

 「最初は簡単に記入できるシートから始めて、その後、より精度の高い事業計画を作っていきました。頭の中にぼんやりとあった思いを、明確に文字にして記入していくことで、ビジョンがはっきりして気持ちも熱くなっていきました。本を読んだだけではわからないことが多く、相談して本当に良かったと思っています」

 そして、小林さんは今年の1月に個人事業として「Lef」を創業。この社名は、共同経営を考えていた頃に2人のイニシャルからとったものですが、留学前からお気に入りだったフランス製の指輪に、LIBERTE・リベルテ、EGALITE・エガリテ、FRATERNITE・フラテルニテ、つまり、自由、平等、友愛という言葉が書かれていて、偶然その頭文字が一緒だったことも理由の一つです。


いつまでも若々しく、美しく


 女性たちが、いつまでも若く、美しく、笑顔でいられるような、内面から輝ける商品を提案していきたいと話す小林さん。ブランド名は「2.5Etage(エタージュ)」、フランス語で2・5階という意味です。デパートなどでは一般的に2階はヤング、3階はミセス向けのフロアになっていますが、小林さんはその中間を狙って、母と娘が一緒に買い物ができるような、年齢制限がゆるやかな商品にしたいという思いでつけたものです。

 「私はいま30歳ですが、10年後、20年後に自分はこうなっていたいという思いをかたちにしていきたいですね。これから、きれいなミセスはますます増えていくはず。40代、50代のミセスが娘さんと一緒に幾通りにも着回せたり、いいものを着ることの良さを、母から娘へと伝えていけるような商品開発を目指しています」

 また、女性ならではの視点で、具体的な着方や着るシチュエーション、コーディネートなどを丁寧に伝えていきたいと意気込みます。


自分の足で開拓して自分自身を磨きたい


 小林さんは自ら中国に出かけて、カシミア糸の仕入れ先や製品の製造先を何社も見て回り、品質も社風も納得できる会社との取引をスタート。色の種類が豊富なだけでなく、色のオーダーも小ロットで対応してもらえるパートナーに出会えたことはとても幸運でした。既に何型かの商品を製造し、販売を始めています。

 営業先は目下、富山県内や北陸が中心ですが、東京・銀座などにも積極的に出かけており、行く先々ではアパレル業界の先輩たちから多くの温かな助言を受け、励みになっていると語ります。

 「営業はこれまで経験がなかったのでとても緊張しますが、ダイレクトにお店の方や先輩方の意見を聞くことができますし、自分の足で見て回ることで、商品を置かせてもらうお店の雰囲気もよくわかります。実際に商品を持って伺うのですが、自分が一所懸命作った商品ですから、お話をするときは、まるで子供をお嫁に出すような気持ちですね。商品はもちろん、お店の方には私のことも気に入っていただき、それが長く続くお付き合いになれば一番幸せです。ありがたいことに、これまで富山でお伺いしたすべてのお店で商品を置いて下さることになり、手応えを感じています」

 営業は自分自身の成長の場だと話す小林さん。まとまった数を1カ所に販売するのではなく、当面は、少量で扱っていただけるお店の数を増やしていきたいと、意欲的に営業を続けています。


思いをかたちにするために


 新しい出会いから多くのことを教わることができ、「毎日が本当に楽しくて、幸せな気持ちでいっぱい」と語る小林さん。常に新鮮な提案で、女性たちが若く、美しく見える商品を研究し、お店に対しても積極的に提案できるようになりたい、そして、ゆくゆくは自分にしか出せないオリジナルカラーの商品を開発していきたいと目を輝かせます。

 「20歳のときに、32歳ぐらいまでの1年ごとの計画をつくり、留学や独立の夢をノートに書いたのですが、これまで、その夢がすべてかなっています。今回、作成した事業計画書も、今後、とても大切なものになるはず。折に触れては見返して、これからの自分のベースとして、ここから一つひとつ、自分の思いをかたちにしていきたいと考えています」


 これから創業を検討されている方や創業間もない方は、ぜひ一度、当所に相談されてみてはいかがですか。事業を始める上で必要な手続きや知識・ノウハウについて知ることができるだけでなく、事業計画書を作成しながら自分の強みを発見し、より自分らしい未来への方向性を見いだしていくことが、きっとできるはずです。



Lef(レフ) 〒939-2727 富山市婦中町砂子田289-1
TEL:076-465-4458  FAX:076-465-4456

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