会報「商工とやま」平成24年1月号

特集

新しい年の始まりは、富山のおいしいお酒から。
  富山県酒造組合の取り組み


 新年を迎えました。家族や職場の仲間たちとの楽しい食事や新年会にまず欠かせないのが、おいしいお酒です。
 今回は、富山県酒造組合の皆さんに、富山のお酒のおいしさの秘密と多彩な取り組みについて伺いました。


名水と米、人に恵まれた富山のお酒


 日本の風土と文化に育まれた日本伝統のお酒、日本酒。神事や祭事に始まり、人生の節目、大切な仲間たちとの語らい、そして一日の仕事を終えたあとの晩酌など、暮らしのさまざまな場面に欠かせないもの。日本酒は日本の伝統や食文化を伝える大切なものとなっています。

 富山のお酒の特徴について尋ねると、「まず第一に、水と米の素材の良さがあります。それに加えて造り手の技術の高さですね」と話すのは同組合会長の山洋氏です。

 富山のお酒は、立山連峰からの清冽な水や伏流水などの名水に恵まれ、それらの良質の水を仕込みに使うため、すっきりとしたおいしいお酒が特徴となっています。

 また、県内の各蔵元はいずれも、兵庫県の山田錦や県内産の五百万石など、お酒造りに適した米(酒造好適米)の使用割合が70%を超えています。これは、全国平均の20%強と比べてはるかに高く、おそらく全国一だとか。上質な米を使うことでお酒に独特のまろやかな風味を醸し出すことができるのです。

 出荷するお酒の中でも高級酒である吟醸酒や純米酒の割合が高いのは、素材にこだわり、高度な技をもった杜氏たちがいるおかげです。

 さらに、富山県と同組合では地域ならではの特徴ある地産地消のお酒をつくろうと、共同で酒造好適米の品種開発を行っています。そんな中で、「雄山錦」や「富の香」といった富山独自の酒米が誕生し、富山の風土に合ったお酒が造られています。

 最近は温暖化のため、低温発酵させるための管理が大変になっているそうですが、ワインなどと違って毎年変わらない品質のお酒をいただけるのは、日本酒を造る人のすばらしい技があるからです。


女性に人気の日本酒


 寒い季節には、熱かんでの一杯が格別ですが、最近では女性たちの間でも日本酒が人気となっています。以前は男性が好むイメージが強かった日本酒も、すっきりとした飲みやすさ、口当たりや香りの良さなどが知られるようになり、女性ファンが増えていると言います。

 昨年10月に同組合が開催した「富山の地酒を楽しむ会」には、全体で450人の参加者のうち、女性が45%近くを占めました。毎年開催しているイベントですが、最近は20代、30代の若い女性の参加者が多く、これまでの日本酒に対する古いイメージなど、先入観を持たない若い世代が、新しく日本酒を楽しんでいることがわかります。

 また、このほかに、女性だけを対象にした酒蔵見学ツアーなども好評とのことです。

 「流行に敏感な女性たちは、好奇心も非常に旺盛で、日本酒をおしゃれなお酒として捉えてくれているようですね。男性はもちろん、女性の方にも、継続して積極的にPRしていきたい」と同組合の若手でつくる醸友会会長の岩瀬新吾氏が、意気込みを語って下さいました。


富山のお酒と料理の相性


 富山のお酒はすっきりまろやかタイプが多く、基本的にはどのような料理にも合います。各蔵元ではいろいろなタイプのお酒を製造していますが、分類すると熟成タイプ、香りの高いタイプ、軽快でなめらかなタイプ、コクのあるタイプに分けることができます。

 この4タイプのお酒に富山の代表的料理との相性を調べたのが左図です。皆さんも一度試してみませんか。


料理のプロにも富山のお酒をPR


 同組合では富山のお酒の良さを県内の料理飲食店関係者にPRしようと、昨年9月に日本酒の研修会を実施しました。

 「料理が主役で日本酒はあくまで脇役ですが、日本酒や富山のお酒の特徴について意外とご存じない方が多く、ホテルや飲食店など料理のプロの皆さんからのご要望があり開催に至りました。

 これまでの私たちの説明不足・PR不足もあって、お店の皆さんが県外からのお客様に富山のお酒の特徴を説明したり、お勧めしようと思っても、きちんと説明できないケースが多いんですね」と話す山氏。

 研修会では日本酒の基礎知識、おいしい飲み方、日本酒のテイスティングなどの研修が行われました。

 「参加した皆さんは、料理や調味料との相性についても、熱心に質問されるなど、関心の高さを実感しました」と岩瀬氏も振り返ります。

 通常の酒の販売は、その間に問屋や小売店が入るため、今回のようなホテルや飲食店と蔵元との直接のコミュニケーションは初めての機会となりました。

 同組合では今後も互いに連携を図り、県内の飲食店で、富山のお酒を楽しめる場面がもっと増えることを期待しています。


富山の日本酒の消費量は全国でトップクラス


 国税庁の調査によると、平成21年度の富山県の1人あたりの清酒の消費量は年間で9・3リットル。新潟、秋田に次いで全国で3位となっています。そのあとには石川、山形など、日本海側の県が多いことがわかります。ちなみに酒類全体では約81リットル、全国で17位でした。

 また、県内で消費される清酒の多くは県内ブランドとなっています。富山県民はやはり富山のお酒をおいしいと感じ、ふるさとの味を愛していることがわかります。


多様化する酒と嗜好のなかで


 しかし、そんな中でも「日本酒全体の消費量は10年前に比べると約半分にまで落ち込んでいます」と同組合事務局長の田近清光氏は語ります。

 「その理由は、日本酒以外にも、ビールや焼酎、発泡酒、ワイン、カクテルなど、いろんなアルコール飲料が登場し、嗜好も多様化していることがあげられますね。

 昔は晩酌といえば日本酒でしたが、最近はそういう方も減り、宴席でも乾杯というときに、まずビールを飲む方が多いですよね」

 車社会であることや景気低迷の影響もあり、会社など社員同士の集まりで飲食する機会も減少。さらに、商品や嗜好の多様化、若者の飲酒量の減少など、さまざまな要因があるなかで、同組合では今後の動向に危機感を強めています。


まず、日本酒で乾杯しよう


 日本酒をもっと盛り上げようと、日本酒造組合中央会では「日本酒で乾杯推進会議」の取り組みをすすめ、乾杯は日本酒でと呼びかけています。富山県内では現在約1500名の方が参加。平成25年には同会議の地方大会を富山県で開催する計画もあることから、組合ではさらに多くの方々にメンバーになっていただきたい、と呼びかけています。

 また、県内でも「地酒で乾杯富山推進会議」(会長/中尾哲雄)が組織され、政財界等の方々が推進委員となり、いろいろな場所で富山のお酒での乾杯を広めようとしています。皆さんの身近な集まりでも、まずは富山のお酒で乾杯してみませんか。


適量の日本酒は、美容と健康に効果あり


 日本酒は古くから百薬の長と言われてきました。麹を用いた発酵飲料として、適量のお酒は血行を良くし、ストレスを緩和させ、食欲を増進させる効果があることはよくご存じだと思います。このほかに、心臓病やガン、骨粗鬆症、老化などのリスクを下げるというデータも報告されているそうです。

 日本酒には糖分、有機酸、アミノ酸、ビタミンなど100種以上のさまざまな栄養素が含まれ、とりわけ体に有益な生理活性をもたらすアミノ酸が豊富です。お酒のなかで、アミノ酸を最も多く含むのが日本酒で、生活習慣病の予防に有効ということも解明されてきています。

 また、杜氏の肌はきれいになることが知られているように、日本酒には保湿・美肌効果に加え、メラニン色素の生成を阻止する効果があることもわかっており、いまでは化粧品もつくられています。

 さらに、酒風呂では、外側から皮膚を刺激するアルコールが抹消血管を拡張させます。入浴で新陳代謝が活発になり、保湿・美肌成分で若々しい肌になるというわけです。

 最近では、悪玉コレステロールを下げる働きをするという酒粕ブームもありました。酒粕には食物繊維や酵母が多く、アミノ酸やビタミンも豊富に含まれているそうです。

 適量の日本酒を楽しみ、暴飲暴食を避けることで、生活習慣病予防や美容にもさまざまな効果が期待できそうです。

 目安は1日2合程度と言われていますが、適量には個人差がありますので、自己管理が大切です。悪酔いを翌日に残さないという量が目安になるでしょう。酔いをやわらげる「和 らぎ水」もおすすめ。日本酒の合間に水を飲むことで酔いの速度が緩やかになり、また、水でひと呼吸置くので飲み過ぎを防いでくれます。

 ほろ酔い程度に飲めば、ストレスや疲れをやわらげることができ、こころも体も元気になれるはずです。


日本酒ベースの炭酸入りリキュールを発売


 醸友会のメンバーが「自分たちに出来ることは何でも挑戦してみよう」と勉強会や情報交換をしながら、試行錯誤する姿を、山氏ほか先輩の方々は温かく見守っています。

 中でも岩瀬氏は、自社(皇国晴酒造株式会社)で、日本酒をベースとした炭酸入りリキュールを12月から限定発売を始めました。「若い方にもいろんな飲み方を楽しんでいただき、日本酒のファンを増やしていきたい」と抱負を語ります。

 若い世代の組合員が、新たな日本酒ファンの裾野を広げようと、さまざまな試みを今後も続けていく予定です。


組合の歴史


 富山県酒造組合は、昭和28年に富山県酒造組合連合会(富山酒造組合、魚津酒造組合、高岡酒造組合、砺波酒造組合)として設立されました。その後、平成12年3月に県内4組合が解散・統合し、平成12年4月に現在の富山県酒造組合となり、現在に至ります。

 組合員数は現在20社。県内各地で古くから愛されてきた各ブランド名で知られています。皆さんも好みのお酒、これから試してみたい新酒など、いろんな思いがあるのではないでしょうか。


 富山県内の蔵元は百年から数百年の歴史ある蔵が多く、家の伝統を守ろうとする気持ちから、強制的ではなく、自然と若手後継者が育っている恵まれた環境にあると言います。

 豊かな自然と水や米などの素材に恵まれた富山のお酒。酒造りを大切に受け継ごうとする人の技やこころとともに、「日本や富山の伝統文化、地域の絆を取り戻すきっかけに、日本酒はもっと貢献できるのではないか」と語る山氏。

 人と人を結び、こころを和ませ、健康と元気をくれる日本酒の良さを、皆さんも再認識してみませんか。

 富山生まれの繊細でおいしいお酒を、いろんな料理に合わせて、みんなで楽しんでいきたいものです。



富山県酒造組合
富山市丸の内2-2-10  TEL:076-425-1851  FAX:076-425-1857
info@toyama-sake.or.jp


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