会報「商工とやま」平成24年5月号  【 特 集 2 】

富山をアマチュア舞台芸術の世界的拠点に

「とやま世界こども舞台芸術祭2012」間もなく開催!

7月31日(火)〜8月5日(日)   スペシャル公演 8月6日(月)


 世界と日本の子どもたちがこの夏富山に集まり、多彩な舞台芸術を通して交流を深めます。実行委員長で可西舞踊研究所代表の可西晴香さんに、今回の事業のポイントや見所などについてお話を伺いました。


世界20カ国のすぐれた舞台芸術を富山で


 この夏、4年に一度の「とやま世界こども舞台芸術祭2012」が富山市・高岡市内の各ホールで開催されます。

「私たちが未来をきずく」をテーマに、日本も含めて世界20カ国から35団体、県内から44団体、約2400人の子供たちが富山に集まり、舞台芸術や様々な交流を通して国際理解や友好の輪を広げます。

 この舞台芸術祭は、子供と大人が協力して、子供のための舞台公演及び芸術研修を行い、子供の創造性を育むとともに、国際的な文化交流を通して、相互理解と友好親善を深めることを目的としています。

 期間中は、舞踊や音楽、ミュージカル、民話劇など国際色豊かで多彩なステージを繰り広げるほか、世界の優れた講師陣が指導するワークショップやアジア舞台芸術映像祭なども行われます。

 「日本全国や世界各国からこの舞台芸術祭に応募があり、書類やビデオ審査などで選ばれた、いずれも、とてもレベルの高い団体が出演します。富山で世界レベルの舞台を観ることができる非常に貴重な機会となっています。お子さんはもちろん、ぜひ多くの方に生の舞台を見ていただき、その良さを体験してもらいたいですね」と可西さんは話します。

 海外からは、アフリカのジンバブエ、エジプト、南米のエクアドル、そのほか、オーストラリアからはアボリジニのダンスグループ、イスラエル、インドネシア、韓国、中国、アメリカ、ヨーロッパなどの団体も参加します。伝統舞踊、人形劇、バレエ、演劇と、ジャンルも内容も実に様々で魅力的な演目が揃います。

 また、日本からもミュージカル、モダンバレエ、子供歌舞伎など10都道県の16団体が参加します。


チェコでも人気の富山発「マッチ売りの少女」を上演


 オープニング公演として富山県洋舞協会によるダンスファンタジー「WE ARE FRIENDS!」をオーバード・ホールで上演。スペシャル公演では、チェコ・プラハのボヘミアバレエ団と可西舞踊研究所の合同公演、ダンスファンタジー「マッチ売りの少女」が、富山県高岡文化ホールで上演されます。

 この「マッチ売りの少女」は、可西舞踊研究所オリジナルの演目ですが、前回の舞台芸術祭に来日して舞台を鑑賞したボヘミアバレエ団の芸術監督が作品に惚れ込み、可西さんを同バレエ団に招いて、現地でも演出・振付けして上演されている人気作品です。

 上演されているのは、プラハの国立スタヴォフスケー劇場で、モーツァルトのドン・ジョバンニが初演された歴史ある劇場です。同劇場では日本人として初めて可西さんが振付け・演出しました。

 「毎回チケットが完売するとても人気の高い演目となっていて、これまでに30回以上、上演されています。こども舞台芸術祭をきっかけにこのような機会をいただけたのはとてもうれしく光栄なことです」と語る可西さん。

 マッチ売りの少女を中心に、みにくいアヒルの子、すずの兵隊などのアンデルセン童話を組み込んだ物語ダンスになっています。雪で感情を表現する演出が日本人らしい感性と評価されているそうです。


被災地の子供たちを招いて


 今回は、東日本大震災支援事業「富山でともだち!プロジェクト」として、岩手、宮城、福島在住及び富山県内へ避難している小学4年生から中学3年生の子供たちを招待します。公演鑑賞やワークショップのほか、高志の国文学館やポートラム体験、忍者ハットリくん列車乗車、太閤山ランドプールで遊ぶなど富山での夏休みを満喫できるエクスカーションがいくつか予定されています。

 応募者からは、「津波後の火災で家が全焼し、思い出の写真が1枚も無いので写真をたくさん撮りたい」(気仙沼市、中2)「外で思い切り遊びたい。プールに入りたい」(いわき市、小4)などの声が寄せられていました。可西さんは次のように話します。

 「東北3県在住の子供たち130名と、県内に避難している子供たち30名の皆さんに参加していただきます。富山で世界の子供たちと交流し、のびのびと遊んで、思い出に残るひとときを過ごしてもらえたらと考えています」

 この事業は文化交流を通して「心の復興」に貢献することを目的としています。富山の夏の素晴らしい思い出が、子供たち一人ひとりの胸に、きっと刻まれることでしょう。


世界三大アマチュア演劇祭の一つとして定着を目指す


 とやま世界こども舞台芸術祭は、アマチュア演劇が盛んな富山で開催されていた「富山国際アマチュア演劇祭」などを元に発展したもので、以前は大人が中心の演劇祭でした。しかし、「2000年とやま世界こども演劇祭」からは、次代を担う子供たちが主体の演劇祭に衣替えしています。

 前回、2008年には「第1回とやま世界こども舞台芸術祭」となり、演劇ばかりでなく、舞踊や音楽など様々な舞台芸術へと枠が広げられるようになりました。そして今回、2回目の開催にあたり、可西さんは次のように目標を語ります。

 「とやまの舞台芸術祭は世界の三大アマチュア演劇祭の一つとして数えられています。モナコ世界演劇祭、ドイツ・リンゲンの世界こども演劇祭はすでに有名ですが、富山のこの舞台芸術祭も、定期的に開催することで、さらに定着させていきたいと取り組んでいます」

 運営にあたっては、当初は出演団体の父兄などがかかわる小さなボランティア組織から、現在では「とやまこども芸術活動支援協議会」へと大きく成長。地元自治会の協力も得て、多くの皆さんが裏方として国内外の子供たちを温かく迎え入れ、富山での滞在中の世話をするなど運営を支えています。

 さらに、同協議会は今回の舞台芸術祭だけでなく、県内の様々な文化活動を支える重要なボランティア組織へと発展しています。


舞台芸術祭の成果


 これまでの成果としては、ご紹介したように、富山県の文化活動を支えるボランティア組織体制の充実や、チェコ・プラハのボヘミアバレエ団やバレエ学校・コンセルヴァトワールとの交流があります。今年の3月には、可西舞踊研究所の横田ほのかさんが、プラハの国立劇場で「マッチ売りの少女」の主役を務めました。

 そのほかにも、舞台芸術祭に出演した子供たちの中からは、タカラジェンヌの海乃美月さん、新国立劇場研修生の押田栞さんをはじめ、プラハのコンセルヴァトワールに留学している学生もいます。全国舞踊コンクールで上位入賞する子供たちも多く、「富山の子供は表現力が違う」という声も多いとか。国内はもちろん、世界各国の参加者の演技を見たり、ワークショップで指導を受けることで大きな刺激を受け、自然と何かを掴んでいくようです。

 また、舞台に限らず海外で働くなど、国内外の幅広い分野で活躍する若者たちが育っており、舞台芸術祭の意義や成果がうかがわれます。

 「国内外の子供たちが小さな頃から国際交流をし、自分の五感を通していろんなことを感じられるのが一番の宝物です。将来にわたって舞台芸術を続けるお子さんは少ないかもしれませんが、この出逢いはとても貴重です。言語や国籍は違っても、一つのものを通して共に理解を深め合えるとても意義のある舞台芸術祭だと思っています。いくら映像で見ても、生で見たり、実体験するほどの力はないと思うのです」と可西さん。

 だからこそ、「ぜひ、たくさんの方にこれからも支援していただきたい」と呼びかけています。


プレ公演も特別な演目で


 7月31日からの本公演以外にも事前のPRとして、6月28日(木)〜7月6日(金)と7月27日(金)にはプレ公演が開催されます。

 6月にはハンガリーの劇団プレイヤーズ・スタジオ・デブレツェンを、7月にはチェコのボヘミアバレエ団を招聘し、県内の芸術団体とともに、各市町村でプレ公演を行います。このプレ公演は、平成23年度と合わせて県内の全15市町村で実施予定です。

 「ハンガリーの劇団は日本語で『みにくいあひる』を上演します。富山に何度も来県されている皆さんによるお芝居で、富山弁も操りながら、とても楽しい演目になっています。本公演に出演するチェコのボヘミアバレエ団の皆さんも非常にレベルの高い方々ですので、多くの子供たちにぜひ、見ていただければと思っています」

 プレ公演には同時に、県内の音楽、舞踊団体も出演して大会を盛り上げます。プレ公演は入場無料・申込不要ですので、こちらもぜひ、ご覧ください。



●お問い合わせ先
とやま世界こども舞台芸術祭実行委員会
富山市舟橋北町7-1 富山県教育文化会館内  TEL:076-441-8635




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