会報「商工とやま」平成27年5月号

平成26年度富山市ヤングカンパニー大賞 大賞受賞企業紹介
 最高のおもてなしを、あたらしい富山から 株式会社プラチナコンシェルジュ


 富山市と富山商工会議所が主催し、創業まもない優れた成長企業を表彰する富山市ヤングカンパニー大賞。平成26年度の大賞に選ばれた株式会社プラチナコンシェルジュ代表取締役の森幸恵さんに、同社の取り組みについてお話を伺いました。


富山駅に総合案内所がオープン


 富山県民の永年の夢、北陸新幹線が3月14日に開業しました。それにともない、新しい富山駅の利用が始まり、公共交通の利用者はもちろんのこと、駅の施設や新幹線の見物客などで、富山駅はこれまでにない賑わいを見せています。
 そして今回、駅構内に新設されたのが「総合案内所」です。新幹線の改札口を出た、市内電車の停留所の前に総合案内所があります。富山市の委託を受けて、ここで案内業務を開始したのが株式会社プラチナコンシェルジュです。
 同社では単なる案内業務ではなく、高級ホテルなどで行われている質の高いコンシェルジュサービスを、富山駅などの公共空間で実現しようとしているのが特徴です。同社代表取締役の森幸恵さんは、富山の皆さんにはお馴染みの元アナウンサーとしても活躍された方。森社長のこれまでの歩みとともに、注目を集める同社のコンシェルジュサービスとは一体どんなものなのかについて伺いました。


CA、アナウンサー経験を活かし


 株式会社プラチナコンシェルジュは2006年に森社長によって設立されました。森社長は富山大学を卒業後、難関を突破し、日本航空に国際線客室乗務員として入社。成田をベースに世界約35都市のフライトを経験するなかで、JALはもちろん、各国の一流のサービス、おもてなしに触れていきました。
 結婚を機に退職し、その後、富山に帰郷すると、今度は富山テレビ放送のアナウンサー試験に合格し入社。ニュース番組の取材、情報番組の企画・司会を9年間担当するなど活躍されました。その後、再び国際線の客室乗務員として勤務されていた期間を経て、富山県主催のとやま起業未来塾の第1期生として入塾。ここでビジネスプランを考案し、同塾を修了後に立ち上げたのが、株式会社プラチナコンシェルジュです。
 「国際線のCAやアナウンサーとして培った経験を活かし、空の上で行っていたような極上のファーストクラスサービスを、地上で実現できないかと考え、会社を設立したのです」
 しかし、立ち上げたばかりの会社が「これまでにないサービスをします」と言っても相手にしてもらえません。会社設立前はフリーのアナウンサーとしてイベント関連の司会業が主でしたが、富山商工会議所からの依頼を契機に、ビジネスマナーなどを指導する新入社員研修を手がけるようになりました。研修事業は徐々に認知され、県内外の企業からの依頼が増えていきました。3年間がむしゃらに働いたところで、スイスのフィニッシングスクール「ヴィラ・ピエール・フー校」に短期留学。世界各国の上流階級の女性達と生活をともにしながらヨーロッパのサービス現場を視察するなど、国際的なビジネスマナー、エチケット、文化的教養に磨きをかけていきました。

新幹線開業にそなえた業務を受託


 新幹線開業準備に伴い、プラチナコンシェルジュでは富山県のおもてなし普及事業を受託。県民向けに全60回、延べ約1000人の方に、「富山に来て良かった、また訪れたい」と思われる、おもてなしの心構えや行動の基本を伝授しました。
 また、2014年5月から11月には、富山県が富山駅にモニタリングのため試験導入した「とやま交通インフォメーション」で各種問い合わせなどに対応。多いときで1日300件もの問い合わせがあるなかで、同社の高い処理能力と温かなおもてなしは高評価を受け、今回の富山駅での総合案内所業務の受託につながったと言います。大手競合がひしめくなか、プラチナコンシェルジュは見事、富山市から総合案内所の業務を受託したのです。
 それでは、同社はどのようなおもてなし、サービスを特徴としているのでしょうか。


プラチナコンシェルジュの特徴


 プラチナコンシェルジュでは、コンシェルジュとなる人材を自社で採用・育成しています。
 指導にあたるスタッフは、接遇マナー教育のプロ、元国際線客室乗務員、元ディズニーリゾートキャスト、元アナウンサーなど。約2カ月の研修期間を設け、「プロ中のプロ」による徹底的な「専門教育」を実施することで、高い接客意識を身につけ、おもてなしの心が育つ環境を整えています。このようにコンシェルジュの品質を一定に保ち、業務先を定期的に巡回して品質管理の徹底とチェック体制も整えて、優れたサービスの提供を可能にしています。
 また、入社時にTOEICで700点という英語力を基本としており、日本が観光立国を目指す中で、国際的なおもてなしの一翼を担えるコンシェルジュであることも特徴です。

優れた人材が続々と集結


 富山県出身で、海外の大手ホテルや有名レジャー施設など、世界のサービス業の第一線で働いた経験を持つ優れた人材が同社に続々と集まってきていると話す森社長。
 「今回の受賞や富山駅の総合案内所業務が受託できたことも、素晴らしい人材が集まってくれたことも、『とやま交通インフォメーション』でコンシェルジュの存在に価値を認めていただけたのだと思います。若いメンバーが頑張ってくれたお陰」と感謝を込めます。
 コンシェルジュという、国際的にも通用する質の高いサービス業務に魅力を感じる若者は、今後さらに増えていくはず。富山で世界基準のおもてなしを学び、実践することができる職場としても、今後、さらに魅力が高まり、期待が寄せられることでしょう。
 また、コンシェルジュ業務は現在は富山県内中心ですが、同社では東京オフィスを持ち、県外でもコンシェルジュを養成する研修を受託しており、今後は県外でのコンシェルジュ業務受託も視野に入れています。


東京オリンピックを目指して


 設立当初から思い描いてきた、ファーストクラスのサービスを地上で提供するチャンスを掴み、「これからもコンシェルジュや、おもてなしのプロを養成して、いろいろな施設や場面でお役に立ちたい」と語る森社長。
 「いまスタッフ全員と目標にしているのが、2020年の東京オリンピック」。5年後の東京オリンピックでコンシェルジュサービスを行うことを目標に、より良いおもてなしと人材育成を目指して、社内はもちろん、社外のネットワークも活かしながら研鑽を積み重ねています。


本当のホスピタリティとは


 森社長は、一流とそうでないサービスの違いは、何かあったときの対応に表れると言います。
 「平時に対応ができるのはあたり前。混乱やクレーム発生時に、プロとして力を発揮できるかが大事ですね」
 そのために、例えば先日もスタッフ全員と一緒に上級救命救急講習を受け、少しでも勉強することで、いざというときに一歩踏み出せる、サービス業としての質の高さを追求しています。
 そして、本当のホスピタリティとは何か、森社長自身の体験から次のように語ります。
 「自分がどんな状況であれ、相手のためを考え、行動すること。それが本当のおもてなしだと考えています。自分が元気なときにできるおもてなしは、どちらかというとエンターテインではないでしょうか。
 今日、喜んでいただけたことも、明日、喜んでいただけるかはわからない。毎日、チャレンジしていくことが大事だと思っています」
 今後は、各公共交通機関や北陸地域の各市、観光協会などとの情報の共有や連携をもっと充実させる必要があると強調する森社長。コンシェルジュ自らが情報収集しながら、ネットワークの強化、構築に努めています。
 車社会の富山では、公共交通機関などでのきめ細かな対応や情報提供などのサービスに、あまり目が向けられてこなかった面があります。しかし、新幹線開業によって、国内外からの旅行客、ビジネス客の流れは大きく変化します。今、目指すは世界にも通用するサービス、そして富山ならではのおもてなし。プラチナコンシェルジュの皆さんのようなプロに倣い、一人ひとりが自分を磨くこと。そして、旅行者や困っている人を見かけたら、何より、思いやりの心で温かく接していくことが大切なのかもしれません。



株式会社プラチナコンシェルジュ
富山市千石町3−7−2
電話  076−491−8320
FAX  076−482−5420