会報「商工とやま」平成27年6月号

経営革新計画が承認された会員企業・事例紹介
まつげエクステで、人をいきいきと元気にしたい 株式会社TYRANN


 富山商工会議所は中小企業新事業活動促進法に基づく経営革新等支援機関として認定を受け、経営革新計画の申請に関する支援を行っています。今回は当所の支援策を活用し、富山県の経営革新計画から承認を受けた株式会社TYRANN(ティラン)の事例をご紹介します。代表取締役の辻下裕子さんに、同社の取り組みについてお話を伺いました。


完全予約制まつげ専門サロン


 株式会社TYRANNは平成21年に創業。まつげエクステンション(以下、まつげエクステ)を専門とするサロンを運営しています。まつげエクステとは、地まつげに人工毛を接着して、まつげを長くしたり増やす技術のこと。15年程前から日本でも導入され、いまでは全国で需要が高まっています。
 TYRANNは、完全予約制サロンで、一人ひとりの目的に合わせた丁寧な施術やアドバイスが特徴です。その方のメイク、骨格や生活スタイルについて個別に相談の上、デザインするので安心して施術を受けることができます。


印象を大きく変えるまつげエクステ


 目元の印象は顔や表情といったイメージを大きく左右します。まつげをつけることで目を大きく見せるだけではなく、若々しくなったり、長さやデザインにより目元を自由にアレンジできます。髪の毛のボリュームと同じで、まつげもボリュームがあった方が若々しく見えます。年齢とともにまつげの本数が減り、まぶたも下がって老けて見えがちになる50代、60代の方がまつげをつけると10歳は若返って見えるとか。TYRANNのお客さまは20代から60代の女性たちで、顔や個性、年齢などを総合的に考慮しながら施術を行っていきます。
 「お悩みで多いのは、例えばつり目の方が、やさしく見えるように変えたいなどの印象についてのご相談ですね。まつげエクステには、表情を大きく変える効果があるんですよ」
 すぐにはつけているとわからないような自然なまつげエクステを、辻下さんは得意としているので、男女を問わずおすすめしています。都会では営業マンの男性がつけるケースもあり、相手に好印象を持ってもらう工夫の一つになりそうです。

目的はお客さまの思いをかなえること


 TYRANNでは、まず顔の写真を撮影し、パーツのバランスをロジカルに計算。その人の目的に合わせて顔と目標とのギャップを、バランスを取りながら埋めていきます。一般的なまつげエクステではデザインの選択肢が少ないところが多い中で、この手順で施術しています。
 「当サロンのコンセプトは、お客様の目的を達成するためにまつげをつけるということ。つまり、まつげをつけることがゴールではなく、その先にある本当の目的をじっくり伺うことを、何より大切にしています」


メイク時間の大幅な短縮が可能


 まつげエクステというと、美意識が高い人、美容に熱心な人が受けるというイメージがありますが、実際には、アイメイクはなんと言っても時間がかかるため、毎日のメイクが面倒だったり、メイク時間を短くしたいという方が多いのだとか。
 「まつげエクステをしているだけで、ある程度メイクしているように見えるため、メイクをしていないからと外出が億劫になることもなく、メイクをしているときとしていないときのギャップも少なくなります」
 まつげエクステはまつげが生え変わるまでの3週間くらい保ちます。メイクをして落とす時間を計算すると、3週間で約5時間半はメイク時間を短縮することができるそうです。

ヘアメイクの仕事からまつげへ


 代表取締役の辻下裕子さんは、富山県内で美容師として働いた後、ヘアメイクの仕事をしようと23歳の頃、東京へ。スクールに通いながら、ヘアメイクの仕事をスタート。ファッション誌や写真集、テレビ、ファッションショーなど、モデルやアイドル、タレントなどのヘアメイクを手がけました。厳しい業界で働いたことで、「サバイバル能力が鍛えられた」と語ります。
 「生きるためには、やはり自分で考え、行動することが大切。頑張るといっても、その目的のための頑張り方には違いがあります。そして、仕事を取るためには、自分目線ではなく、相手から見てどういう人材が必要とされるのかを考えること。そういった力が鍛えられましたね」
 辻下さんは約6年東京で働いた後、富山へ帰郷。その翌年にはTYRANNを設立。自分に合った仕事として、富山には当時まだ少なかった、まつげエクステサロンを開きました。


思いを明確な事業計画に変えていく


 実は法人という言葉もよくわからなかったほど、会社経営については素人だったと語る辻下さん。とやま起業未来塾で学んだり、さまざまなセミナーにも参加するなど、経営の基礎やノウハウを学んでいきました。しかし、ある意味「ノウハウコレクター」で、サロン経営について、もやもやした違和感があったと言います。また、最近では同業種のサロンが創業当初よりもかなり増えて、今後の対策が必要でした。
 まつげエクステを施術する人は「アイリスト」と呼ばれ、作業は非常に細かく大変な修練を必要とする技術です。しかし、その大変なサービスに対して、最近は価格競争が激しいことなどに問題点を感じていたとか。
 「私自身も施術者、アイリストですし、サロンを経営していく上で、やはり会社としての基盤がしっかりしていることが重要だと考えました。そして、お客さまにも、また、業界にも貢献できるサービスがしたいと考えるようになり、それをぜひ、改善できる商品やシステムをつくりたいという思いがあったのです」
 それに加えて、同社は規模が小さいため、対外的にほかの企業と取り引きをする際にはやはり不利な面があります。そんなときに富山商工会議所からこの経営革新計画の話を聞き、申請の準備がスタートしました。


新商品を開発


 辻下さんは、長年思い描いていた、自社独自のまつげ増毛法の商品を開発。比較的簡単に、そして早くつけることでコストのバランスを整え、病気の治療等でまつげが少なくなった方にも施術することができる商品です。これは辻下さんの友人の病気がきっかけで考えたサービスだそうです。
 経営革新計画はこれを新事業展開するもので、昨年の5月頃から申請書類作成のノウハウについて、具体的な指導を受けていきました。また、エキスパートバンクを利用して専門家や商工会議所の担当者とともに、事業計画を作成。頭の中に漠然とあった思いを明確な言葉にしていったり、専門家による客観的な意見を取り入れることで、無理や矛盾のない計画を作成することができました。
 「自分のなかの狭い範囲でしかなかった常識が、さまざまな視点から見てもらうことで、キャパシティが広がり、とても勉強になりました。頭の整理がつき、目的に対して実行ができたことがとてもよかったです。ずっと抱えていた違和感が無くなってきました」
 今後は、企業とのタイアップなどを目指しています。

メイクとまつげの相乗効果で


 TYRANNでは、この春から、まつげエクステだけでなく、その人に合った自然な眉の描き方などのアドバイスを組み合わせたメニューを提供しています。これも、ヘアメイクの仕事をしていた辻下さんならではのメニューです。
 眉毛も自分ではなかなかうまく整えられない人も多いはず。プロのアドバイスを受けることで、まつげとの相乗効果で、これまでにない、あたらしい自分を発見できるはずです。


自己評価を上げること


 自分が美しく、可愛く感じるのは、実は人からの評価ではなく、自己評価の問題が大きいと語る辻下さん。「まつげをつけて可愛くならない人は一人もいない」とも業界では言われているそうです。辻下さんは施術を通して、じっくりとその方の思いを聞き、自己評価を高め、次の行動へと広がっていくようなサービスを目指しています。プロならではの客観的アドバイスを、ぜひ受けてみてはいかがでしょうか。



 富山商工会議所では、中小企業が新商品の開発、商品の新たな生産方式の導入、その他の事業活動を通じて経営の向上を図るための手助けを行っています。経営革新計画が承認されると、減税や低金利の融資などさまざまなメリットがあります。ぜひ、当所までご相談ください。(※ただし、承認は助成措置等を保証するものではありません。それぞれ実施機関の審査があります)


株式会社TYRANN
富山市蛯町2−2
電話  076−411−7765