会報「商工とやま」平成27年10月号

特集
海外展開への、あらたなきっかけづくりに
「海外展開一貫支援ファストパス制度」を利用してみませんか。


 日本国内では少子高齢化や人口減少、東京一極集中による地方からの若者の流出など、企業経営を巡るマイナス要因が増えるなか、今後の、あらたな成長のチャンスを求めて海外への展開を検討されている経営者が増加傾向にあります。
 今回は、海外進出にあたって一貫したサポート体制で支援を受けられる、「海外展開一貫支援ファストパス制度」についてご紹介します。
 富山商工会議所は同制度の紹介元機関になっており、この制度の概要やメリットなどについて、海外ファストパス制度の事務局である日本貿易振興機構(ジェトロ)富山貿易情報センター係長の長尾祐介さん、ジェトロビジネス展開支援部ビジネス展開支援課の前島慶子さん、山田あゆみさんにお話を伺いました。


県内企業の海外進出状況


 富山県内からも数多くの企業が海外に進出し、現地に事業所や工場、店舗を設けたり、あるいは現地企業と提携した製品の製造、販売、輸出入など、様々な経済活動が活発に行われています。
 富山県の資料によると、平成24年10月時点において、県内の178社が海外に270の事業所を設置。中国が最も多く60社、121事業所となっていて、企業数ではタイ、アメリカ、インドネシア、シンガポール、ベトナム、台湾、韓国などの順となっています。最近では高い経済成長を見せるASEAN諸国への注目度も高まっています。


海外展開でお悩みの方に


 海外展開一貫支援ファストパス制度とは、自治体、商工会議所や金融機関など国内各地域の支援機関が、外務省(在外公館を含む)やジェトロ等、海外展開支援に精通した各機関の協力を得ながら、企業・事業所の海外展開支援を円滑に進めるもの。
 利用のメリットとしては、現在各企業が支援を受けている機関が水先案内人となり、複数の参加機関から一貫したサポートを受けることで、海外展開に必要な体制を万全にできるという点があります。
 「海外展開を目指す中堅・中小企業の皆さんに対して、切れ目のない支援のもとで、海外進出をしていただくのが制度の目的です。情報収集、制度手続き、販路開拓などのサポートができる各機関が連携しています。平成27年7月の時点で、富山県では約100件の取り次ぎ案件の実績があります。(紹介元支援機関の本店所在地が富山県にある場合の実績数)」と話すジェトロの皆さん。この制度はまだ始まって間もないのですが、富山県での実績は全国的に見ても多く、地銀や信用金庫などの金融機関を紹介元として利用されるケースが多いということです。
 「人口減少で内需が減少していくなかで、海外投資のご相談は年々増えています。海外に目を向けていかねばならないという思いは、県内企業のなかでも増えていると考えています。ジェトロでも、ぜひそういった皆さんへの支援をできればと思っております」とジェトロ富山貿易情報センターの長尾係長。ご利用にあたっては、富山商工会議所までお申込みください。


個人事業主にも海外展開のチャンスあり


 また、ジェトロビジネス展開支援部の前島慶子さんは次のように語ります。
 「ファストパス制度は個人事業主からのご相談も受け付けています。小規模事業所であっても、例えば輸出でB to Bはちょっと難しい場合、B to Cでネットで海外に向けて販売してみようなど、そういう挑戦の仕方もできますので、チャンスはたくさん見い出していけるのではないのかなと思います」
 海外進出には、もちろん大きなリスクはありますが、その反面、チャンスも数多くあります。
 「少しでも興味があれば、ジェトロにご相談ください。海外進出をご希望であれば、現地視察に行ってみるだけでも、情報はたくさん得られると思います」
 事前の情報収集や調査、販路の確保などが不十分なまま海外進出を決めたり、工場を建設しても、早々に撤退というケースもあります。ぜひ事前の調査などにもファストパス制度や、そのほかのジェトロのサービスを利用したいものです。


ジェトロではほかに、短期オフィス利用サービスも


 「多くの中小企業の方にご利用いただいているのが海外のジェトロ・ビジネス・サポートセンターです。ジェトロのオフィスのなかに入っており、アドバイザーも常駐していますので、ここを拠点に現地での情報収集、調査、ビザ、登記等の手続きのご相談も承っています」
 また、サポートセンターに入らなくても、ジェトロにはブリーフィング・サービスがあり、アドバイザーにその国の情勢や輸出、投資の状況について簡単に説明してもらうことができ、こちらは無料で利用できます。
○ジェトロ・ビジネス・サポートセンター(BSC)
 フィリピン・タイ・インド・ベトナム・ミャンマーでのビジネス立ち上げに必要な投資制度情報・ノウハウ(ソフト)とオフィス機能(ハード)を兼ね備えた施設。現地での投資、技術提携を検討する日本企業向けに短期の貸しオフィス、アドバイザーによるコンサルティングサービスを提供し、ビジネス立ち上げ時のコストとリスクを軽減しています。



海外に目を向けるきっかけ


 同じくジェトロビジネス展開支援部の山田あゆみさんは、「円安が進むいま、輸出という面ではとてもいい時期」とし、海外進出には、取引先や海外の知り合いからの誘いなど、必ずなんらかのきっかけがあるケースが多いと語ります。
 「やはりきっかけがないと海外を目指すという風にはなりにくいのではないかと思います。ジェトロではこの制度以外にも様々なセミナーの開催や、ご相談対応をさせていただいております。そういった機会を、海外に目を向けるきっかけとしていただければと思います」
 当所中小企業支援部経営支援課の京谷も「技術も資本もありながら、そもそも海外に出ようというきっかけがない企業も多いのではないかと思います。今後、当所でもセミナーなどを開催し、この制度を有効活用できるようにしていきたい」と意気込みます。
 海外の情報に触れたり、現地への視察に参加してみませんか。目を外に向けて、客観的に自社を振り返ってみることで、意識改革につながったり、自社の技術やサービスの新たな活かし方のヒントが得られるということがあるかもしれません。興味のある方はぜひ、当所または、ジェトロなどにお問い合わせください。



○ファストパス制度 サービス内容
1.ご相談の受付及び紹介先支援機関への取り次ぎを無料で致します。
2.ご相談内容に応じた支援機関をご紹介し、支援機関からサービスを受けることができます。
3.複数の支援機関が連携し、問題に応じて同時に複数のサービスを受けることができます。
  (例)海外拠点設立のご相談であれば、市場情報→ジェトロ
    制度手続き→富山県新世紀産業機構 など 
○紹介元機関
富山商工会議所、富山県、富山県新世紀産業機構、県内銀行、信用金庫など
○ファストパス制度 ご利用条件
1.2年以内に海外展開(進出・輸出)を計画している企業であること。
2.紹介元となる支援機関の具体的なサービスを受けていること。
3.他機関に紹介するにあたり、各支援機関が設定する基準を満たしていること。
○紹介先支援機関でのサービス内容(ジェトロほか、各機関と連携したサービスが可能)
1.市場情報海外市場情報の提供などの支援
2.制度・手続き等に関する情報貿易・投資制度に関する情報や、海外事業で必要となる手続き情報の提供
3.現地情勢の情報(政治・経済・治安等)世界各国の概況、政治・経済動向に関する情報提供
4.事業化調査製品・技術・サービス等の海外での市場調査、事業化可能性の検証(フィージビリティ・スタディ)等の支援
5.海外進出・拠点設立現地法人・海外支店・駐在員事務所など、海外に拠点を設け事業展開を行うにあたっての支援
6.ファイナンス海外事業展開に際するファイナンス面でのサポート
7.現地パートナー探し海外市場での取引先探し、販路開拓などのサポート
8.知財・模倣品対策海外展開における知的財産権の保護と活用や、海賊版・模倣品対策に関する支援
9.企業の活動や製品の広報自社ブランドの海外でのPRなど、広報宣伝、マーケティング活動に関する支援
10.現地政府への申し入れ輸出先・進出先相手国での許認可申請、政府への取次ぎ等に関する支援
11.人材育成海外展開を担うグローバル人材の育成・確保に関する支援
12.貿易保険海外展開に伴う様々なリスク(代金回収、対人・対物事故等)を補填する貿易保険の提供
13.その他上記以外の支援サービスの提供
支援機関一覧の詳細はウェブでご確認ください。
http://www.jetro.go.jp/jetro/activities/support/fastpass/list2.html

■日本貿易振興機構(ジェトロ)のファストパス制度サイト
https://www.jetro.go.jp/jetro/activities/support/fastpass/
■経済産業省のファストパス制度サイト
http://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade/fastpass/
■お問い合わせ
・富山商工会議所 中小企業支援部 経営支援課
 エ076・423・1171
・日本貿易振興機構(ジェトロ)
 富山貿易情報センター
 富山市高田527 情報ビル2階
 エ076−444−7901

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