会報「商工とやま」平成28年5月号

平成27年度富山市ヤングカンパニー大賞 大賞受賞企業紹介
 ものづくり企業を縁の下で支える、自動制御の頭脳集団
  シードシステムズ株式会社


 富山市と富山商工会議所が主催し、創業まもない優れた成長企業を表彰する富山市ヤングカンパニー大賞。平成27年度の大賞に選ばれたシードシステムズ株式会社代表取締役の栗原貞雄さんに、同社のサービスの特長や今後への思いについてお話を伺いました。


自動制御の設計を手がける


 シードシステムズ株式会社は、平成21年4月に富山市で創業。さまざまな企業の機械・装置・プラントの自動制御、計装制御の設計・プログラミング、タッチパネルの作成などを多数手がけているプロ集団です。いまでは富山県内外の大手メーカーをはじめ、日本や世界のトップ技術を誇るものづくり企業などから仕事を受注。スタッフの質の高さ、そして技術力の高さから、多くの顧客の信頼を獲得しています。
 「自動車、電機、化学、ガラス、建材、食品など、さまざまな業種の企業さんとお付き合いがあります。特に、大手の企業さんからは継続的にお仕事をいただいています」と語るのは、シードシステムズの創業者である代表取締役の栗原貞雄さんです。
 栗原社長は、富山高等専門学校の電気科を卒業後、スギノマシン株式会社で技術者や営業マンとして勤務。その後、独立し、仲間とともに日研プラント株式会社を設立しました。技術者として現場での指導にも携わりながら、常務取締役として会社経営にあたっていました。そして平成21年、56歳のときに退職し、仲間と新たに立ち上げたのが、今回、富山市ヤングカンパニー大賞にも選ばれたシードシステムズ株式会社です。
 「退職後もまだ、エネルギーが十分あり、自分の培ってきた技術やノウハウを生かして、もう一度やってみようと創業しました。当時はまだ、30代だった若手のメンバーと共に、現在まで一緒に働いています。
 ただし、見通しがあったわけではなく、どうなるかは未知数でした。当時はリーマンショックのまっただ中で大変厳しい状況でしたが、2年目から黒字化に成功し、今日まで成長を続けてくることができました。
 当社が得意とするのは電気制御系に関する技術です。常に時代の最先端の技術を取り入れるよう努めてきました」と栗原社長は語ります。
 そのほかにも、配線工事の設計、施工などの電気工事も手がけています。
 シードシステムズは順調に業績を延ばし、社員も現在は16名まで増えています。若手からベテランまで、高い技能を持った技術者が揃う頭脳集団です。
 創業当時の富山市内の事務所では手狭になったため、約4年前に富山市山室荒屋に新たな事務所を設け、ここを拠点に県内外、国内外で活躍しています。
 顧客としては、YKK、コマツNTC、昭和電工、宮本工業所、そして、県外では千代田化工建設などの大手企業をはじめ、さまざまな業種の企業との取り引きを成功させ、信頼を得てきました。
 「当社の強みは、パソコンの設定やプログラミング、そして、シーケンサーなど、さまざまな制御技術に対応できることですね。シーケンサーにはタッチパネルの技術、サーボ技術などがあります。サーボとは、サーボモーターによる位置決めなどの制御技術のこと。例えば、0・1ミリのところにピタッと納めるなど、特にロボット技術で必要とされているものです。
 当社では、オペレーターが使い易いパソコンのプログラミング、ロボットの制御などを総合的に設計し、自動機械にうまく搬送する制御技術の設計を得意としています。今後も、ロボットと自動機械を組み合わせて使う生産現場が増えていくことが考えられますから、ロボット技術に強い人材を、さらに、充実させていきたいとも考えています」
 新しい生産現場には、必ず新しい力が必要です。高い技術力と確実な納期対応で、シードシステムズは各企業から信頼される存在となっています。


新卒を積極的に採用したい


 シードシステムズでは現在、新卒の学生の採用や育成を積極的に行っています。今春も新卒者を採用していますが、栗原社長は今後も引き続き、採用を続けていきたいと意気込みを語ります。
 「ものづくりに興味がある人、ものづくりをしたい人にとっては、とても面白い会社だと思いますよ。日本のトップ技術を持つ企業ともお付き合いさせていただていますし、ものづくりの現場での仕事は、長年続けていても、飽きることがありません。飽きがこない仕事というのは、人生を面白くし、大きな達成感を得られます。これからも、優秀な人材を採用し、育てていきたいですね。
 新人の教育については、やはり、私たちの仕事は現場ありきですから、現場での経験を大切にしています。現場での見聞と、図面を書くことを交互に繰り返していくなかで、それぞれの仕事のレベルを上げていくことができるのです」
 同社では経験豊富なベテラン社員が、それぞれ新人の指導に当たっています。

お客さまの満足と従業員の幸せを


 そして、企業としてのポリシーは、「皆が満足できることが一番」と語る栗原社長。顧客に満足していただけるような技術を提供することはもちろん、それによって、社員、協力企業の皆が、満足でき、幸せになれるようないい循環をつくっていくことが大切だと力を込めます。
 「ある一部分だけハッピーになっても、物事はうまくいかないものです。そんな風にうまくいくのかと言われることもありますが、実際に真面目に取り組めば、自然とそうなっていくものだと、私は考えています。そのいい循環のためにも、これからさらに優れた技術者を増やし、組織力を強化していきたいですね」

国内外で社員が活躍


 社名の「SEED」は、「System Engineering Electric Design」の頭文字とのことですが、「次世代に技術を伝える種」としてのシードという意味も含まれています。また、「Design」には、今後のさまざまな広がりや展開を感じさせます。
 創業8年目を迎え、大口の受注も増え、「少しずつ花が開いてきた」と話す栗原社長。
 また、出身校である富山高専の教授による出前講座を社内で開催するなど、研究機関とも積極的に交流を深めながら、自社技術の向上を目指しています。
 そして、社内はいま、若いエネルギーと活気に満ちています。企業の海外拠点などでの自動機械の立ち上げのため、社員は国内だけでなく、世界各国へ飛び回っています。日本や世界の最先端で活躍しているさまざまな企業にとって、欠かすことのできない、縁の下の力持ちとして、同社の社員は高い技術力を発揮しているのです。また、中国人スタッフも採用し、中国での技術提供などにも今後、力を入れて行く予定とのことです。
 「現場ではうまくいくことばかりでなく、必ず壁にぶつかることもあります。しかし、そこを突き破る突破力、新しいものを創造するということに、技術者は皆、生きがいを感じます。楽しくなければ、やはりうまくいかないもの。お客さまに満足していただけるという喜びを糧に、これからもお手伝いしていきたいと思っています」


ものづくり県・富山に優秀な人材を呼び込みたい


 ものづくり県・富山の知名度はまだまだ低い面もありますが、北陸新幹線開業によって、多くの人や情報が行き交い、交流が活発になってきています。
 「富山には豊かな水資源があり、日本で一番安価な電力があり、さまざまな教育機関があり、優れた人材もいます。これからは、都会に若い人材を流出させるばかりでなく、もっと富山県内に呼び込みたい。富山にはものづくりの分野で、面白い企業がたくさんあるということをもっと知って欲しいですね。当社でもUターン、Iターンなども積極的に受け入れていきたいと思います」
 富山を拠点にさまざまな業種の企業、ものづくりの現場を支えるシードシステムズ株式会社。富山の発展を縁の下で支える企業として、今後のさらなる発展に注目していきたいものです。




シードシステムズ株式会社
富山市山室荒屋240番地1
電話  076−482−5797
FAX 076−482−5798