会報「商工とやま」平成28年11月号

特集 富山の玄関口で、「富山」を伝える熱き思いの競演
ととやま・きときと市場とやマルシェ・富山駅前さかな屋撰鮮


 北陸新幹線の開業から1年余り。新装された富山の玄関口、富山駅と駅南口で富山の魅力を伝えることに奮闘する3つの新しい施設を訪ね、お話を伺いました。


実演・イベント満載のアンテナショップ ととやま


●「街・人・物ととやま」がコンセプト


 7月15日、富山ステーションフロントCiCの5階にあった「物産センター富山」がリニューアルされ、富山の食・観光・文化のアンテナショップとして、ととやまが1階にオープンしました。
 「街ととやま」、「人ととやま」「物ととやま」をコンセプトに、お店の中は農産品や水産品、スイーツ類、地酒、水、くすり、工芸品など、県内全域にわたる約1800もの品目が並んでいます。それらの一つひとつが、富山の情報や魅力の発信源になるのです。
 ネーミングにはもう一つの意味が込められていると、ととやまを運営する富山県いきいき物産(株)総務企画部次長兼営業部次長の野村裕司さんは語ります。  「人と人を結ぶ糸の様な形を考えています。『結(ゆい)』とでもいいましょうか」
 単なる販売の枠を超えた深いつながりの機会に、ここでは出会えそうです。


●実演とイベントで特産品をアピール


 「ととやま」の特徴は、何といっても実演コーナーとイベントスペースがあることです。
 「県外の観光客はもちろんですが、地元の方にも来ていただきたいですね。そのためにも、実演コーナーとイベントのスペースを設けています。ととやまはちょうど富山県の真ん中。呉東の人がなかなか買えない呉西の物、反対に呉西の人がなかなか買えない呉東の物をイベントなどでPRし、ととやまで両方買えることを周知していきたいですね」
 ホームページでも紹介されていますが、地酒の試飲会や観光物産展、郷土料理の実演販売といった多彩な実演・イベントが、週替わりで組まれています。


●フロアが変わって客筋が変化


 5階から1階に移ったことで、以前は7割程を占めていた県外の観光客の割合が小さくなり、県内のお客さんが増えたそうです。
 「地元の方が通るところにスイーツコーナーを設け、常に新しい商品を探しながら、週替わりで入れ替えています。ここでしか買えない、この時しか買えないということでお客様に楽しんでいただきたいです。
 また、5階にいた時に比べて『明るくなった』、『実演が見やすくなった』などの評判をしばしば耳にするようになりました」


●年中行事のお手伝いも大切に


 売り場の利便性やイメージが向上した「ととやま」ですが、今後はインターネットなどを利用した販売にも力を入れていくそうです。  「ネット販売は以前から、お歳暮やお中元などに合わせて、ずっとやってきていますが、時代の潮流に乗り、一層力を入れていきたいですね。やっぱり外商は大切ですから」  こうした年中行事のお手伝いをするという点でも、野村次長は人と人とのつながりを大切にされているとのことです。

実演・イベントスケジュール
◎砺波市秋の物産フェア
◎富山湾のブリと郷土料理
期間:10月21日(金)〜10月23日(日)
◎とやまのチューリップフェア
期間:10月25日(火)〜31日(月)
◎めちゃ旨チャーシュー丼試食販売
期間:10月28日(金)〜30日(日)
ととやま
富山市新富町1丁目2番3号
富山ステーションフロント
CiC1階
TEL076−444−7137
定休日 第3火曜日(不定休)
営業時間 10:00〜20:00


高架下に広がる富山特産品エリア きときと市場 とやマルシェ


●「何でも事足りる」商業施設


 北陸新幹線の開業と同じ昨年3月14日、富山駅の新幹線高架下に「きときと」の商品を扱う市場をイメージしたショッピングセンターがオープンしました。「きときと市場とやマルシェ」です。フランス語で市場を意味する「マルシェ」と「とやま」との掛け合わせから生まれたこのネーミングは、一般公募による約1000通の中から選ばれました。
 「ここに来れば富山のことが分かる、富山の物は何でも事足りるといわれる商業施設を目指しています」と運営ポリシーを語るのは富山ターミナルビル(株)企画部次長兼営業部次長の中崎稔さんです。
 当初の想定を上回る1日平均約1万人の来場者数があり、今年8月には通算500万人を突破しました。好調の理由を尋ねると、「北陸新幹線のお陰です」とのこと。北陸新幹線の利用客が当初の予想を大きく超える在来線時代の3倍になったことをふまえての見解だそうですが、「きときと市場とやマルシェ」のポリシーが富山を訪れる方に通じた結果であるようにも思えます。


●お客様の目線で


 「きときと市場とやマルシェ」には、鱒寿しなどの食品販売、工芸品などの物品販売、回転寿司などの飲食店合わせて36店舗が参加しています。中崎次長は各店舗に対して、いつも呼びかけているそうです。
 「常にお客様目線で考えることが重要です。例えば、10個、20個入りの箱菓子だけではなく、バラ売りもして、帰りの道すがら1個食べたいという需要にも応えられるようにするなどの配慮が必要です。あとは、遠方からのお客様はあまり重い物は持って帰らないなどといった情報を共有しています」
 また、県外から観光やビジネスで富山を訪れる方の立場に身を置いて、次のような提案もしているとのことです。
 「県外のお客様は、地元特産品に関して、何がどういった点で優れているのか、個別の商品までは分からないので、極力ポップなどでお伝えするようにしています。例えば、どんな賞を取ったとか、テレビで取り上げられたといった情報を添えることで、選びやすくなるよう工夫しています」


●「マリエとやま」との連携


 新幹線の高架下という場所柄、「きときと市場とやマルシェ」を利用する方の約8割が県外のお客様だそうです。今後は、経営母体が同じ駅前商業施設「マリエとやま」との連携を強め、地元の方の利用を増やしていきたいと中崎次長は語ります。
 「兄弟ビルであることをほとんどの方がご存じないと思いますので、片方に来ていただいたお客様にもう一方の紹介をして、両方の施設を利用して欲しいですね。
 また、これまではそれぞれの施設で2000円以上のお買い物をしていただくことで、駐車料金の割引サービスを提供しておりましたが、この夏からは両施設の合算で2000円以上も可という形に変更しました。マルシェカードとマリエカードは両施設共通で使えるポイントカードですから、それらを利用して行き来していただければと思います」


●お歳暮も好調


 お土産のイメージが強い「きときと市場とやマルシェ」ですが、お歳暮やお中元のニーズも高いそうです。
 「11月に入るとお歳暮に力を入れる時期になります。昨年の開業以来、お中元やお歳暮は取扱い個数も売上も順調に増えてきています。この夏のお中元は、昨年のお歳暮の倍の実績がありました。ご利用については、旅行やビジネスなどで富山に来られた方からの需要もありますが、圧倒的に地元の方の利用が多いですね」
 富山のことに詳しい地元の方だからこそ、何でも事足りる品揃えの中から心のこもった一品を贈りたいという気持ちになるためでしょう。


きときと市場とやマルシェ
富山市明輪町1番220号
TEL076−471−8100
営業時間 物販 8:30〜20:30
     飲食 10:00〜21:30
     (一部異なる店舗あり)
定休日 なし


3年間限定の社会実験 富山駅前さかな屋 撰鮮(せんせん)


●駅前に魚屋のわけ


 富山駅の南口広場に、もう一つ活きのいい施設が誕生しました。「富山駅前さかな屋撰鮮」です。開業日は「ととやま」と同じ、7月15日です。その名の通り、富山湾の新鮮な魚介類を中心に販売する魚屋スペースと、海鮮丼などの魚料理を提供する食堂スペースに分かれています。
 富山駅の真ん前で、どうして魚屋なのか、事業を担う(株)エスエスコーポレーション代表取締役社長の白倉三喜さんにお話を伺いました。
 「北陸新幹線開業時、駅前の整備が遅れていると地元の方、県外の人からも言われたことや、魚に関する県別のイメージで富山が全国1位であると雑誌に取り上げられたことなどから、富山の駅前に魚屋を置けないかと考えていました。そんな折、魚の仕入れ・販売が得意な知人や、とやま市漁業協同組合の理事長などと話をして、動き始めたわけです」
 その後、富山市、富山県、富山県漁業協同組合連合会などからも協力を受け、事業がスタートしました。


●期間限定のお店


 「富山駅前さかな屋撰鮮」は、とても変わったお店です。富山駅周辺の商業者らでつくる「富山駅前活性化研究会」が富山市から無償で借り受けた土地を利用し、3年間限定の社会実験として実施しています。
 しかし、期間限定といえども約100坪もある店舗の開店は容易ではなかったと白倉社長は振り返ります。
 「3年後に更地にして返すとはいえ、プレハブハウスの様なものではなく、耐震性なども考慮した、しっかりした建物でなければなりません。そうなると億単位の費用がかかります。そういった理由もあり、しばらくは足踏み状態でしたが、周囲からの後押しもあり、やるしかないだろうと奮起しました」


●開店前に並ぶのは地元の方


 こうして各方面からの期待と協力を背景に船出した「富山駅前さかな屋撰鮮」は、食堂スペースを中心に予想以上の来店者数となっているそうです。多い時は1日500人程が食事に訪れ、当初80だった客席数は現在117にまで増えています。
 「海鮮丼などのメニューが人気ですね。常日頃から、スタッフには良いものを求めて見直しを続けていかなければならないと訓示しています。
 7月のオープンから9月まで、県外のお客様が約7割という感触でした。
 時折、11時の開店時間前に並ぶお客様がおられますが、大抵は地元の方。その姿に引き寄せられるように観光客も並ばれていますね」
 また、食堂スペースは食券方式ですが、予算や料理の希望を告げて申し込むいわゆる「おまかせ」の予約が入るようになってきたということで、地元の飲食店として根付きつつあるようです。
 「品数はそう多くはありませんが、お刺身とお寿司は特に良いものを提供しようと心掛けています」


●誇りをもって富山の魚をPR


 物販の魚屋スペースでも、白倉社長は地元の方を意識した品揃えを展開しています。
 「インターネットやテレビ番組などで、地域の隠れた食材や地元の方がどこに買い物に行っているかが注目される時代ですから、とりわけ魚屋スペースは地元の方にこそ利用してもらいたいですね。そして旅行や仕事で来られた方に『撰鮮へ行ったらいいですよ』と言ってもらえる店にしていきたいです」
 最後に、白倉社長に今後への想いを伺うと、「富山の玄関口で、誇りを持って富山の魚をPRすること」との力強い意気込みを語っていただきました。
 皆様も忘年会や新年会に富山の上質な魚で舌鼓を打ってみてはいかがでしょうか。


富山駅前さかな屋撰鮮
富山市明輪町1番231号
TEL076−432−6665
営業時間 11:00〜20:30
(LO 20:00)


 三者三様の「ととやま」「きときと市場とやマルシェ」「富山駅前さかな屋撰鮮」ではありますが、富山の玄関口で富山を知ってもらいたいとの熱き思いは共通しています。富山県民としては食事や買い物、お歳暮などで、その思いを応援していきたいものです。