会報「商工とやま」平成29年2・3月号

続・おじゃましま〜す
大津賀 保 信 氏(ダイト株式会社代表取締役社長)


 新たに就任された副会頭を訪ね、時には仕事を離れて、ご自身のこれまでの歩みや明日への期待などについてお話を伺った。


3人兄弟の末っ子です


 生まれは富山市のまちなかで、住まいはずっと変わっていません。男ばかり3人兄弟の末っ子で、兄二人は県外に就職して富山へ戻らなかったので、結局、私が富山に留まって家の後を継いでいるのです。


薬学系の大学で空手道得


 大学の進学先を決める際、製薬会社に勤めていた父に相談したら、薬剤師の資格を持っていれば自分の強みになるとの助言をもらい、また、小さい頃から耳の病気があったので、いろいろな病気を治す薬の勉強に関心があり、薬学の大学を選択したのです。
 高校、大学では運動系の部活動にも時間を割きました。特に、大学では空手部に入り、薬品の化学式ばかりでなく、先輩・後輩の上下関係を重視する環境で、人間形成の場として貴重な時間だったと思ってます。
 大学を卒業後、父の知人が経営する製薬会社に入社したのですが、たまたま近くに父が勤める会社があり、私が入社した会社と取り引きがあったので、商っている薬の原材料や、作っている医薬品など、父の勤める会社のことを初めて知りました。


日商簿記2級で経営の視点広げる


 最初に入った会社で2年間の経験を積んだ後、昭和50年、父が勤める会社に改めて入社しました。会社が変わった後でも、毎日が勉強でした。
 30歳の頃、専門学校に通って簿記を勉強し、日商簿記検定の2級をとりました。簿記を勉強したおかげで、経営を財務の面からみることができるようになったのです。
 また、仕事の面では、医薬品の営業から研究開発、企画、品質保証や管理本部などひと通りの部署を回わり、そして平成11年からは子会社の社長も務めました。経験を積んできたことと、薬剤師としての視点を合わせて、会社全体を把握し、経営の舵取りをすることが重要であり、いろいろな部署での経験が現在の自分の支えとなっているのだと思ってます。


「着眼大局、着手小局」は経営の基本


 座右の銘としているのは、「着眼大局、着手小局」。物事を大きな視点から見て、小さなことから実践するという意味です。
 同じ薬の分野でも、生活習慣病の薬、例えば血圧や糖尿病の薬などはもう出尽くしていると言われており、今、必要なのは認知症の薬や抗がん剤の分野です。脳出血や心筋梗塞は本人の健康管理と薬の服用を徹底すれば一定の健康レベルを確保できるようになってきています。
 しかし、認知症や抗がん剤は、まだまだ薬だけでは不十分なので、この分野を強化していくことが、我々業界の命題になっており、大きな視点から見て時代の流れに沿って考えていくことの一つだと思うのです。
 また、来年から薬価の改定を毎年実施されるとの報道もあるので、薬価に依存しない、薬局の薬などに分野を広げていくことも考えています。
 薬関係の企業は、県内に70〜80社ありますが、みんな業績がいいわけではありません。伸びている会社、衰退傾向の会社、横ばいの会社があるように、医薬品業界の厳しい競争の中で、時代の流れをきちっと組み込んで、どの方向に舵を切っていくか、難しい判断をしなければならない時は、経営の基本である「着眼大局、着手小局」の精神で考えるようにしています。


時流に乗ることが経営の大前提


 これから事業を始めようと考えていて皆さんには、ビジネスは時流に乗らないとうまくいかないということを肝に銘じていただきたい。時代の流れがどの方向に向いているのかをよく見て、その中で自分の立ち位置を考えることが重要なんです。
 例えば、今は「少子・高齢の時代」と言われており、特に介護の分野には様々な業種が参入してきています。国は介護と医療の連携を強める方向性を打ち出しており、この先、国がどの方向に向かっていくのかをよく勉強した上で、自分たちがビジネスとしていく部分を一所懸命考えて欲しいのです。つまり、時代の流れをよく見て仕事を作っていく姿勢で、これからの経営に挑戦して欲しいと思います。(談)