会報「商工とやま」平成30年10月号

特集1
UIJターン就職希望者を仕事と暮らしで支援
WEBサイト「とやまUターンガイド」


 富山県は、県外在住者のUIJターン就職支援を目的としたWEBサイト「とやまUターンガイド」を開設しています。そして、このサイトを運営しているのが「富山くらし・しごと支援センター」で、富山市、東京都千代田区の大手町と有楽町、大阪市にオフィスがあり、富山へのUIJターン就職希望者を対象に、経験や希望条件に合った求人を紹介しています。県総合政策局企画調整室(UIJターン促進担当)主事の窪野茜さんと富山くらし・しごと支援センター大手町オフィス相談員の後藤美佳さんにお話を伺いました。


見やすく、使いやすいシステムに


 WEBサイト「とやまUターンガイド」は、富山で働きたい人と人材を求める県内企業を「縁結び」するシステムです。2017年4月にリニューアルされ、印象はずいぶん変わりました。このシステムについて後藤さんに聞いてみました。

 「今回のリニューアルでデザインを一新し、見やすく、入力しやすくしました。また、検索機能を強化し、さらに活用していただきやすくなりました」

 現在、「とやまUターンガイド」で自分のデータを公開している求職者は約500人。公開していない人を含めると実際にはさらに多くの登録者がいます。また、富山くらし・しごと支援センターは、県内の企業に働きかけ、8月末現在の求人登録数は1000件を超えています。このシステムでは、登録者は求人のある企業の情報をネット上で自由に見ることができます。一方、企業は求職者について保有している資格や自己PR、これまでどんな仕事についてきたか、出身学部、希望する年収などを閲覧できます。

 この時点では、求職者の氏名などの個人情報は明かされません。まずは「どんな人材」や「どんな求人」という情報を交換し、求職者と企業のマッチングを行います。


幸運な出会いを「縁結び」


 企業側が気になる求職者を見つけてネット上で「スカウトボタン」を押すと、富山くらし・しごと支援センターにその情報が伝わります。担当者がこれを承認すると、求職者本人に「スカウト」の意向が伝えられます。求職者は「スカウト」を受けるかどうかを決め、その回答が企業へ届けられます。また、求職者から企業へ「応募」する場合も、同センターを経て企業にその情報が伝わります。

 「スカウトや応募を『受ける』と回答すると、求職者と企業のやりとりが始まります。求職者が複数の企業に同時に応募することも可能です。この間、何かあれば私たちが求職者の相談に乗ります。

 マッチングはタイミングもありますね。県西部の老舗メーカーから学生の採用について相談を受けていたころ、ちょうど都内在住の大学4年の女子学生が『Uターン就職をしたいが、富山県内にどんな企業があるかが分からない』と来所されました。詳しくお話を聞いたところ、昔の建造物に興味があるとの事だったので、『地域とのつながりが強くて伝統のある会社だよ』とこの会社を紹介したところ、とんとん拍子に採用に至りました。企業も学生も喜んでくださいました」

 一方、マッチングは成功しても最終的にはうまくいかなかったケースも。

 「Uターンを考えていた社会人の方で、ほとんど決まりかけていたのに奥様の意向で辞退されたことがありました。移住を伴う大きな決断なので、まずはご家族での話し合いが大事だと実感しています」


富山の魅力を伝える


 富山くらし・しごと支援センターではWEBサイトにアクセスしたり相談窓口に来られたりする求職者をフォローします。企業からの相談も受けます。

 都内では有楽町オフィスのほか、さらに利便性を高めるため今年5月23日に東京駅から徒歩2分の大手町オフィスをオープンしました。また、関西地区在住者にも情報提供や相談業務を行うことができるよう、同日に大阪オフィスも開設しました。

 各オフィスでは、仕事だけでなく富山の暮らしについての情報も提供しています。

 「暮らしの相談員は『どの市町村に住んだらいいのか』『子どもの学校は』など、さまざまな質問に答えて、必要な情報を提供しています。田舎暮らしに憧れていくつかの地方都市を検討して就職先を探しているようなIターン希望者や、富山に縁のない求職者には、例えば、富山は景色が素晴らしいし、食べ物がおいしくて、都会暮らしに疲れたらおすすめだとお伝えしています」

 都内の大学を卒業し、Uターン就職した窪野さんは、富山の魅力を実感している一人です。

 「富山県は男女ともに働きやすいところだと思います。待機児童数はゼロで子育て世代へのサポートも充実しています。また、高い技術力を持つものづくりの企業が多いことも特徴です。このような富山県の魅力を伝えてもらえるよう、各オフィスの方々にお願いしています」


さまざまな支援の取り組み


 このほかにも、Uターン就職を支援するために行われているさまざまな取り組みについて、窪野さんに話していただきました。

 「例えば、理工系・薬学部生を対象とした奨学金返還助成制度があります。この制度に登録している企業に就職が決まったら、県とその企業が奨学金の返還を助成するという制度で、7月23日現在63社の登録があります。また、女子学生を対象とした『就活女子応援カフェ』を数年前から開催しています。今年も東京、名古屋、京都で複数回開催します。県内企業の女性社員の方々とスイーツやお茶を楽しみながら話ができるイベントです」

 そのほか、3年前から8月の帰省時期に合わせて実施している「とやま就活バスツアー」があります。今年度は6コースで約100人の学生が参加し、県内企業を巡り会社の見学、若手社員と交流したそうです。


センターをもっと活用して


 富山くらし・しごと支援センターでは、どのように求人をアピールしたらいいかなど、さまざまな相談に対応しており、「県としても、県内企業の皆様に当センターをもっと活用して優秀な人材の確保に役立ててほしい」と窪野さんは話します。同時に、学生の皆さんにも同センターの存在を呼びかけています。

 「大学のキャリアセンターから『富山出身の学生で困っている人がいる』などと相談を受けることがあります。迷ったり困ったりしている学生には励ますように接しています。もちろん社会人も大歓迎。また、県内在住の皆さんにはお子さん方にも当センターのことを教えてあげてほしいです。情報がなくて困っている人が少なくないので、こういう場所があることをぜひ知ってほしい」と後藤さんも強調します。

 UIJターンを考えている知人がいる人、県内外から人材を集めたいという企業は、ぜひ一度、富山くらし・しごと支援センターに相談してみてはいかがでしょうか。


富山くらし・しごと支援センター

■富山オフィス
富山市宝町1丁目3-10 明治安田生命ビル8F(株)パソナ・富山内
TEL:076・444・5766

■大手町オフィス
東京都千代田区大手町2丁目6?2
パソナグループ本部ビル3F
TEL:03・3548・0522

■有楽町オフィス
東京都千代田区有楽町2丁目10-1
東京交通会館8FNPO法人ふるさと回帰支援センター内
TEL:070・2798・7878

■大阪オフィス
大阪市中央区淡路町4丁目2-15
パソナ大阪事務所内
TEL:06・7636・6065


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