会報「商工とやま」平成31年1月号

特集3
働き方が変わります!

第2回 正規・非正規雇用労働者の不合理な待遇差の解消


 本年6月に成立した「働き方改革関連法」について、事業主の皆さまに改正の内容をご理解いただき、社内制度の整備などに取り組んでいただくために、前回の11月号に引き続き、専門家により解説をしていただきます。

 平成30年6月に成立した働き方改革関連法について、第1回(本誌11月号)では、平成31年4月1日施行期日の法律について説明いたしました。今回は、それ以降に施行される法律についてみていきます。


中小企業の時間外労働の割増賃金率の見直し


 平成22年4月1日に施行された改正労働基準法で、1ケ月に60時間を超える時間外労働の割増賃金率の引き上げ(50%以上)が行われました。

 ただし、経過措置として、中小企業には当分の間、適用を猶予するとされました。その後、何度か中小企業に対する適用猶予措置の廃止が検討されましたが、ようやく今回、2023年4月1日から、中小企業にも50%の割増賃金率が適用されることになりました。


不合理な待遇差を無くすための規定の整備


 正規労働者と、パートタイム労働者や有期契約労働者との不合理な待遇差の禁止や、それらの労働者への説明義務の強化、紛争解決援助制度などが定められ、大企業では2020年4月1日から、中小企業は翌年の2021年4月1日から施行されます。

 均衡待遇規定(職務内容(業務の内容や責任の程度)、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情等の違いを考慮して不合理な待遇差を禁止するもの)、均等待遇規定(職務内容(業務の内容や責任の程度)、職務内容・配置の変更範囲が同じ場合は、差別的取り扱いを禁止するもの)が、パートタイム労働者、有期契約労働者、派遣労働者のいずれの労働者との関係においても法律に明記され、均衡待遇、均等待遇が義務化されることになります。

 均衡待遇については、法律上明記されていたものも、さらに規定の解釈の明確化が図られます。また、均衡・均等待遇規定の解釈の明確化のため、ガイドラインの策定根拠も規定されます。

 なお、派遣労働者は、労働者・派遣元・派遣先という3者が登場し、しかも派遣先の労働者との関係で待遇を是正するものなので、少し特殊な設計になっており、

(1) 派遣先の労働者と派遣労働者との均衡・均等待遇を確保する。
(2) 一定の要件を満たす労使協定による待遇を確保する。

のいずれかを実施すればよいことになっています。

 事業主は、パートタイム労働者や有期契約労働者等、非正規労働者から「正社員との待遇差の内容や理由」等の説明を求められた場合には、その説明義務を課されます。また、説明を求められた場合に不利益な取り扱いをすることの禁止義務も課されました。そして、これら不合理な待遇差をなくすため、行政による履行確保措置及び行政ADR(裁判外紛争解決手続)規定が整備されます。


同一労働同一賃金ガイドライン案


 平成30年11月27日に行われた厚生労働省の労働政策審議会の同一労働同一賃金部会で、具体的な指針が示され、了承されました。

 「基本的に労使で合意することなく通常の労働者の待遇を引き下げることは望ましい対応とはいえないことに留意すべきである」との考えを新たに打ち出し、一方で、平成30年6月1日に出された「ハマキョウレックス事件」及び「長澤運輸事件」についての最高裁判決の内容も踏まえ、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者との間に待遇の相違が存在する場合に、それが不合理と認められるものであるか認められないものであるかなどの、原則となる考え方及び具体例を示したものです。

 今後、「同一労働」の判断について、「同じようではあるが微妙に違う」というような場合に、どのように判断するのか、議論を深めていく必要があると思います。


●著者紹介
・岩峅  勲氏(特定社会保険労務士)
・大花 哲仁氏(特定社会保険労務士)

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