「商工とやま」平成14年8・9月号

富山市価値創造プロジェクト(5)

 思い出に残る富山の素晴らしさ 〜でも、もっと情報発信を〜


県外有識者アンケート調査結果から

 富山市価値創造プロジェクト特別委員会では、委員会での意見を取りまとめる参考に、県外に住む有識者(※)に対してアンケート調査を実施しました(平成14年3月)。その一部をご紹介します。※富山市出身またはかつて仕事上の関係で富山市に住んだことや訪れたことのある方(回答は48名から)。

 先ず、県外在住者の方々が抱く「富山市のイメージ」(ひと言ふた言で表現する)を記述式で聞きました。


■やっぱり「立山仰ぐ特等席」がイメージ

 一般的には、富山市のイメージとして「山の幸や海の幸に恵まれた都市」「立山山麓のまち。くすり、鱒ずしのまち」が多かったようですが、少し言葉を継いで、次のようなイメージを語る人がいました。

 「美しい立山連峰がシンボリックなイメージとしてある。そして水も米も美味しい」。さらに言葉を費やして、「3千mの立山連峰を中心に三方の山々と幸ゆたかな富山湾に囲まれ、名水を生む河川に恵まれた肥沃な富山平野の中心部にある県庁所在地」の回答もありました。

 また、万葉の歌人・大伴家持が詠んだ歌「立山に降りおける雪を常夏に見れどもあかず神からならし」を紹介し、「3回26年余の富山市民としての思い出は、四季折々、朝夕に眺める立山には心洗われる思いである」と富山時代の想い出を語る人もいました。富山に生まれ育った人、転勤などで富山で暮らしたことのある人、さらには旅行や講演などで富山を訪れたことのある人、回答者は様々ですが、県外に住む今でも、「立山仰ぐ特等席」が富山市のイメージのようです。


■食べ物が美味しく、四季がはっきり、住みやすい街

 また、「四季がはっきりしていて、歳時感がある。食・祭り・花・自然も豊富」「お米、魚、水などの食物が安くて、美味しいところ。大変住みやすい都市」など、食の豊かさ・住みやすさを語る人も多くいました。その他、「気さくな街。中心市街地は徒歩圏でもあるし、路面電車もあるので便利」「豊かな自然環境に囲まれながら、道路は広く、近代的に整備された清潔な都市」など、私たちが“そんなことは当たり前”として、日頃はその価値に気づかない点を指摘した人もありました。


■活気が感じられない・ハード志向の街

 反面、「活気・刺激のなさ」「街や市民性の暗さ」のイメージを指摘する声も多かったようです。

 「若者が少なく、寂しい感じがする」「車だけはやけに沢山走っているが、人々の活気が伝わってこない」「冬は雪が降り、暗い。でも、その分、冬の魚の恵みが多いのか」「整然とした街路には人通りが少ない。徹底的なハード志向、特に建物へのこだわりがあるが、商店街は老朽化。所得が高いのに賑わいがない。食が美味しいのに食べる所がない。自然が美しいのにコンクリートだらけ」と、厳しい指摘もありました。

 そのほか、「公共投資の集中地区を見ると、行政主導の都市とも思う」「車での生活が中心で、街(商店街)の暖かさや生活感がない」といったイメージを語る人もいれば、「冬の厳しい生活に耐えなければならないため、市民は固い生活(冒険の少ない)を余儀なくされた」ことが、官任せの市民意識に繋がっていったのではないか、との指摘をする人もいました。こうした厳しい意見にどのように対応していくか、今後も、議論して,改善していきたいものです。


■特色が感じられない

 ただし、先に実施した市内在住者へのアンケート結果と比べると、「緊張感のない、のんびりした田舎都市という印象」「単なる地方都市の一つ」といった回答も多くみられ、県外在住者の目からみて、良くも悪くも、「富山市のイメージ自体が少ない」「情報が発信されていない」という実態を示す結果とも受け取られます。


■富山の良さを伝えるためにも、その良さを知ろう

 ここから見えてくるのは、富山市がハード的にはかなり整備されているものの、長く住むと分かってくる市民の人情や面白い人がたくさんいること、工夫すれば評価が高まる観光資源があることなど、富山の良さが沢山あるにもかかわらず、上手に外部に伝えられていない、あるいは自信を持って伝えようとしていないことではないでしょうか。さらに言えば、自分たちの良さを認識していないのかもしれません。


■情報発信不足・PRべた

 次に、「富山市の課題」を聞いてみました。その結果をポイント順に並べると右表(左が県外在住者の回答)のとおりとなりました。

 前述した富山市のイメージとも関連しますが、「中心部・商店街の活気のなさ」が最も多く指摘されました。そのほか、今年2月に実施した市内在住者へのアンケート結果と比べると、「市外県外への情報発信不足・PRべた」「市民の意識の問題」が上位になっていることが分かります。


■口コミで富山の情報を入手 もっと積極的にPRを

 次に、県外にいて、富山市に関する情報をどのように入手しているかを尋ねたところ、約7割の人が「時々送られてくるか、目に触れる」と回答。その媒体としては、「友人・知人・親戚」といった口コミが多く(44%)ありました。その他、「テレビ・ラジオ」(27%)・「新聞・雑誌」(25%)といったマスメディアのほか、意外であったのは、「富山市の広報」から入手しているという方も23%もありました。

 しかし、回答者の約3割が「受け身の状態では、情報はほとんど入ってこない」としている点を留意する必要があります。このアンケートの対象とした「富山市と何らかの関わり」を持っている方(有識者)は、いわば県外における「富山ファン」であり、こうした人的ネットワークを有効に活用して、富山市の各種情報を発信していくことは、これからも重要になっていくものと思われます。

 いずれにしても、この結果から、富山市としても、積極的に県外に向けてPRをしていくことの重要性が裏付けられたようです。


■「釣りバカ日誌13」を観よう

 2ページでもご紹介したように「釣りバカ日誌13」(松竹)が7月20日から一般公開(県外では8月10日から)されています。富山市出身の本木監督が、立山や黒部峡谷等の自然、くすりの富山、お魚など,富山(県)の素晴らしさをスクリーンいっぱいに描いています。この映画から、私たち自身が「富山の価値」をもう一度再評価し、家庭や会社などで語りあい、自信と誇りを持って富山から情報発信しようではありませんか。

※今回は、県外に住む富山市関係者に対して実施したアンケート調査結果をもとに、富山市の価値資源と課題を探ってみました。富山市の情報が県外に向けて発信されていない・PRべた、との指摘に対して、私たちとしてどうすればいいのか。企業のPR誌(紙)等を県外の取引先に定期的に送付したり、ホームページに富山の紹介コーナーを設けることも一案でしょう。また、個人的には、親戚や友人などに、最近の出来事や耳より情報を伝えることも1つの方法ではないでしょうか。

県外在住者の回答(平成14年3月実施)
参考/市内在住者の回答(平成14年2月実施)
1.中心部・商店街の活気のなさ
2.市外県外への情報発信・PRの不足
3.官(行政)任せの市民意識
4.市民が市の良さに無自覚

5.資源が点在し、繋がっていない
6.歩いて楽しめる環境になっていない
7.公共交通機関が不便
8.人口減、若年の定着率の低さ
9.移動手段が自動車中心
10.南北地区の一体感のなさ
11.内向きの安定志向の市民意識
12.若者の遊ぶ場所が不足
1.中心部・商店街の活気のなさ
2.人口減、若年の定着率の低さ
3.公共交通機関が不便
4.祭りやイベントが不足
5.移動手段が自動車中心
6.歩いて楽しめる環境になっていない
7.文化施設の散在
8.資源が点在し、繋がっていない
9.若者の遊ぶ場所が不足
10.市民が市の良さに無自覚
11.官(行政)任せの市民意識
12.駅周辺と中心部の2極化


▼会報TOP  ▼富山市価値創造TOP  ▼富山商工会議所TOP