「商工とやま」H17年1月号

新春座談会
四副会頭に聞く「富山の新しいまちづくり」 (2)


◆中心街には居住者を増やす

【濱谷】富山の場合は富山駅周辺地区と西町・総曲輪・中央通りという中心商店街との距離が約1・2kmあり、街の賑わい作りに非常に難しい面を持たせていると思います。駅から中心地に向かって歩く道が、いわゆるシンボルロードとして位置付けられているわけですが、途中にある城址公園の辺りにもっと賑わいを作るべきだと思います。そうなると1・2kmは、感覚的には退屈せず来れるわけで、距離感が近くなる。

【朝日】高松の栗林公園から駅まで3・5kmが全て商店街ですね。

【中井】私は、子供の頃から総曲輪で育ちましたが、中心商店街に元気が無くなった理由は、商業者が住居を郊外に求めたことや、商品や品揃えが均一化してしまい、今まであったお店の個性や魅力が薄れてしまったことなどが考えられます。

【増山】中井さんが言われるのは、全ての商品がナショナルブランドに変わっており、郊外の大型店の中でやっていることを遅れてやっているだけにすぎないということだと思います。

 国勢調査にDID(人口集中地区)という指標があるんですが、総曲輪校下と五番町校下の数値が致命的なレベルに下がってきています。中心市街地の人口をどう増やしていくかがこれからの課題だと思います。

【中井】私の母親が総曲輪に住んでますが、買い物が大変だと言ってました。非常に住みにくくなっているように感じます。

【増山】中央通商栄会の黒田理事長は常々総曲輪と中央通りを合わせて商店は今の半分でよい、中央通りの東地区は住居系に変えていくべきだと言っておられますね。

 住居系を増やすには、八百屋や肉屋などの食料品販売のお店がなければならない。それがないと、先ほど言われたように不便でならない。極論ですが商店街で、今までファッション関係のお店をやっていた人が、「ひとつ八百屋をやってみるか」というふうに変わったらいいな、と思います。

【朝日】東京の神楽坂通りはすごいですよ。いろいろな業種の店があります。近代的な飲食店のほか伝統的な八百屋さんもあります。

【中井】東京という土地柄もありますね。人口が違うから成り立つ面もあります。

 私が心配するのは、地域の活性化に東京のコンサルタントを利用するケースが多い点です。富山に住んでいる地元の人々の声やアイディアを拾ったほうがずっと良いですよ。

【増山】製造業は、時代の変化とともに大きく変化しているのに、商店街の人達には「俺は昔から何屋だから何屋しかやらない」という硬直的な面がある。本当に頑張ってる人は、変化していってるんです。

【中井】中高層の商店街にして、その裏に飲み屋街や無料の駐車場を作ればいいと思います。昔の総曲輪の裏は全て飲み屋街でしたから。

【濱谷】全国何処の街にいっても裏通りは飲み屋街ですよね。



◆商店街にプラス回転を

【濱谷】「西町」「総曲輪」「中央通り」について、一般の市民は区別していません。どうして総曲輪は火曜日が休みで、中央通りは水曜日が休みなのでしょうか。火曜日に総曲輪に行くとシャッターが閉まっている。あくる日の水曜日に中央通を歩いても閉まっている。そうするとお客さんには1週間いつも休んでいるように見える。客の減少はそれも原因だと思う。休みを月曜日に統一してはどうかと思います。

【中井】商店街に休みはいらないと思いますよ。毎日お店をやらないとね。

【朝日】そうです。コンビニだって年中無休。大型店も正月に営業しようって言ってる。商店街としてはこれらに対抗していかなければならない。

【中井】僕ら製造業はどれだけ残業したか、どれだけ休日出勤したかで利益が出る分かれ目になるんです。ようするに、土日を休んでいると商業地では収支もむずかしいでしょう。

【朝日】商店街の皆さんも休みという事についてシビアに考えて、交代でもいいから出たほうが良いと思います。

【小林】サービス業は、人が休んでいる時に営業しているものじゃないかな。基本的に我々もサービス業ですよ。つまり、従業員は交代で休んでもいいが、店は閉めるなということですよ。店を休むという事と社員が休むという事は、全く別の事。その部分をしっかり理解して、シャッターを下ろさない。その姿勢が、お客さんの信頼に繋がると思います。

お客さんは、期待して来るわけだから。

【中井】お客さんが来て、店が閉まってたらどこにも行くところがない。

【濱谷】6時過ぎると一斉に店が閉まる。だから行っても仕方がないとお客さんが考える。お店側もお客が一人や二人ではしょうがないから早く閉める。この議論は、バスに乗らないから本数を減らす、本数を減らすから乗らない、というマイナス回転の議論と同じですね。プラス回転の議論に変えるにはどちらかが前に出ないといけない。

 商店街として、例えば6ヶ月間と期間を決めてシャッターを閉めないという実験をしてみたらと思いますが。

【中井】夜間、ショーウィンドーにスポットライトを当てて、街行く人がウインドーショッピングする楽しみがあった方が良いと思います。お店のPRにもなり、又今度売りたい商品を展示しておくとウィンドーショッピングしたお客さんが、その商品を買いに来る。良い循環が生まれると思う。それを、シャッターを閉めていると何の広がりもない。シャッターが閉まっていると鉄のドームのように感じます。



◆お客様第一に考える

【増山】最近、あちこちに大型店が出店してきて、売り上げが減少しているというのが今の状況です。

 しかし商店街として間違ってたなと感じるのは、ファッションなど品揃え全てが若い人向けになっていることです。実際のお客様は、50代〜60代なんですが、その年代をターゲットにした店作りや街づくりが行われていない。こういうことを踏まえて、大和の跡地問題や再開発を考えていかないと、色々なところに繋がっていかないと思います。

【小林】お客さんが何を考え、何を欲しているのかが大事だと思う。その部分を踏まえて自立しないとダメです。むやみに補助金に頼るのは今後は難しいと思います。

【中井】補助金に頼った商売を行うと、大変な目にあいます。補助金はなくなるんだから。小林さんが言われたように、お客さんが大切です。お客さんが来ないとどんな努力もムダになってしまいます。例えば、ロンドンやパリでは、一階は商店、二階から上は住居やオフィスになっている。総曲輪中心街もそうなれば、若い人達が住み、コミュニティが形成されるのではないかと思う。お客さんは、車で買い物へ行く必要もなくなりますよね。

【増山】自らが同じ目的を持って商業地としての魅力を作り出すこと。時間消費型の環境を作ること。そのためにはいろいろな方々を交えてみんなで協力していくことが、プラス回転に繋がる方法だと思います。批判だけしていては何も出来ません。

【濱谷】今郊外に出て行った人々が街なかに帰ってきています。さらに、来年から富山市が街なか居住推進ということで色々な優遇策を打ち出してきます。その状況を見ると中心商店街はファッションもさることながら、もっと生活に根付いた方向に向いても良いのではと思います。

【朝日】街なかに住むような方向にもって行きたいですよね。私は本当に住みたいと思うな。

【濱谷】商店街の先行きは決して暗くはないと思いますよ。今言ったように郊外の人達が帰ってきてますし状況は変わってきてます。その状況を見据えて今何をやれば良いのかを考えていけば良いと思います。

【中井】1つのキーワードは少子高齢化だと思います。高齢化をビジネスに変える事が出来れば良いと思います。高齢者の方々はお金も持ってらっしゃいますしね。

【朝日】高齢者に優しい食料品店や介護用品店があればいいですね。

【増山】楽しい商店街を作る環境が整いつつあるのは事実ですから、難しいですが商店街が非常に面白くなる展望が開けると思います。


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