「商工とやま」H17年6月号

特集
ここにもあります、元気なとやま!  富山の朝市・夕市&フリーマーケット

 行楽シーズン到来!萌える緑を眺めながら外を歩くのが楽しい季節です。そんな気軽な外出にお勧めしたいのが最近、活発化している朝市やフリーマーケット。街のあちこちで市民が持ち寄った食材や不用品、雑貨などを売り買いする場が設けられ、大変な賑わいとなっています。

 売り手とのコミュニケーションも楽しく、市民パワーも感じられる現代の「市」。次の休日は少し早起きして出かけてみませんか? 掘り出し物が見つかるかもしれません。


◆ 活気が感じられる朝市・フリーマーケット

○昔から庶民になくてはならない存在だった「市」

 採れたての野菜を直売する朝市や、不用品や雑貨を販売するフリーマーケット。どちらも市民主体の自由な販売・購入の場として親しまれています。販売の形式や開催場所などは時代と共に変化していますが、その原点は昔から各地で催されてきた「市」にあります。


○売買だけでなく庶民の情報交換の場として

 昔の「市」は、社寺の前に栄えた門前町などが会場となり、日の出から日没まで大勢の庶民が詰めかけ、大賑わいとなっていました。「市」は暮らしに必要な物を買う場所であるだけでなく、新聞やテレビがない時代、情報交換の場としても機能していました。野菜や魚が売られている出店の前では「隣の集落で来週、嫁入りがあるそうだ」とか「路地の向こうの婆様が骨を折って寝込んでいるらしい」といった世間話が飛び交ったそうです。

 そんな時代も移り変わり「市」のスタイル、目的も少しずつ様変わりしてきましたが、現在、全国各地で開催されている朝市やフリーマーケットも、単なるモノを売り買いする場でなく、人々が集い、コミュニケーションする場として、その土地ならではの地域性が醸し出されているのは同じ。富山市周辺の朝市やフリーマーケットをのぞいても、会場の雰囲気、売っているものにそれぞれの個性がうかがえます。


◆ リサイクルの浸透によって人気が高まるフリーマーケット

○「自分が要らないもの」は「他人が欲しいもの」

 富山市中心部では、定期的に開催されているフリーマーケットが3ヵ所あります。フリーマーケットというのは、出店したい人が会場に出向いて売り場を確保し、持ってきたものに好きな値段をつけて自由に販売するというものです。

 ものがあふれている今、どんな家庭にも古着や雑貨、頂き物の贈答品など、使わないものがたくさん眠っています。しかし、せっかく買ったり、頂いたりしたものも生活に必要がなければ箪笥の肥やし。でも捨ててしまうのはもったいないし、環境にもやさしくない…といった思いがあるはずです。フリーマーケットはこうした家庭の不用品を少しでもお金に換え、必要な人、大切にしてくれる人に安く譲るというリサイクル活動を兼ねた場所なのです。

 最近では主婦のグループや若者同士、さらには家族での参加など年齢、性別を問わないものになっており、仕事や家事で忙しい日常を離れ、リフレッシュの場として楽しんでいる人も多いようです。フリーマーケットは、こうした住民の自主的な活動によって支えられているのです。


○神社境内を舞台にしたフリーマーケット

 護国神社の「青空のみの市」は定期的に開催されているフリーマーケットとしては県内最大規模のものです。毎月第1日曜日は早朝、まだ暗い頃から出店者が来場。開店を待ちきれない住民が続々と押し寄せ、7〜8時頃には大賑わいになります。

 青空のみの市が始まったのは昭和59年のこと。当時、護国神社のそばで喫茶店を経営していた田岸登志恵さんが店に集まる有志でのみの市を企画し、護国神社に依頼したところ、宮司の栂野守雄さんが「大勢の人が集まることなら」と境内の開放を許可。責任は実行委員会がもつ、清掃を徹底する、動物は入れないなどの条件を記した契約書を交わし、同年10月6日、第1回目が開催されました。神社境内でのフリーマーケットは全国でも先駆け的存在でした。

 「1回目の出店は10店ほど。雨が降って来客が少なかったのでラーメン屋が儲からなくて…。後からみんなで売れ残りを食べましたよ」と当時を振り返る宮司の栂野さん。


○若いパワーでさらに盛り上げてもらいたい

 スタート当時は苦労があったものの、その後は出店者、来場者とも増えていき、現在は常連の骨董店やラーメン店、コーヒーショップのほか、主婦グループ、職場仲間、学生仲間、福祉施設関係者など、規模も内容も様々な出店者が入り混じり、多い時はのべ1万人近い人で賑わうようになっています。そしてここは、雨の日も雪の日も中止しないことが自慢。開始以来約20年、神社に見守られ、トラブルもなく現在まで継続されています。

 「神社の境内なので、広場や駐車場のフリーマーケットにはない趣があると思います。ここまで継続できてうれしいですね。ただ最近は学生グループの出店が減ってるのが寂しいところ。会場を活気づけるためにも、もっと若い方に参加していただきたいと思います」(栂野さん)。

 護国神社では来る8月1日、終戦60年を節目とした大祭を行います。この月に開催される8月7日ののみの市は、大勢の来場者で盛り上げてほしいと願っているそうです。

護国神社青空のみの市
護国神社境内
第1日曜 夜明け〜14:00頃
今年度の開催日(6月5日・7月3日・8月7日・9月4日・10月2日・11月6日・12月4日)
(問)実行委員会 TEL090-2034-1929



◆ 個性や地域性を創出し、まちおこしにつなげていく

○個人店主が多くアットホームな岩瀬朝市

 富山市岩瀬地区で根強い人気を集めている「岩瀬朝市」は、運河沿いにある駐車場で開催されています。これは地域の物産品展示販売や貸ホールなどの運営を担っている(財)岩瀬カナル会館が「北部地域の賑わい創出に」と平成7年7月にスタート。以来、毎月第2日曜日に開催しているものです。

 ここのシステムは駐車場に仕切られた1区画(約2畳)を500円で借りてフリーマーケットを開くというもの。受付は開催当日の朝でOK。事前予約などの手続きがいらないという手軽さから、若い学生グループたちにも人気の会場となっています。

 スタート時は出店数30件ほどの小さなフリーマーケットでしたが、今は60件以上となり、その顔ぶれも骨董店、飲食店、古着屋のほか、子どもの古着を持ち込む主婦グループ、自分のコレクションや手作りアクセサリーを販売する若者、日用品を処分しにきた家族連れなど多種多様。来場者も近隣の住民だけでなく、市外からも多数訪れています。


○岩瀬の旬が満載の海鮮鍋に行列

 岩瀬朝市の特徴は飲食店が充実していること。実行委員会では毎月、季節の旬の素材を使った鍋料理を1杯200円でふるまっています。メニューは春から夏は白えび鍋、竹の子汁、キス味噌汁(7・8・9月は休止)、秋から冬はカニやタラを使った具沢山の海鮮鍋や甘酒、おしるこなど港町岩瀬ならではの豪華な献立。大鍋の前はいつも人だかりになっています。このほかには朝食・昼食バイキングも実施。旬の魚料理や野菜、果物などが食べ放題になっていて「第2日曜日はここで朝ごはんを!」と毎月、通ってくる常連客も多いそうです。

 「水辺の景色もよく、気持ち良く過ごせる場所だと思います。遠方からいらっしゃった方には、このフリーマーケットを見た後、港や森家、諏訪神社などを観光していただけたらと思っています」(同会館事務局長 酒井勇さん)。

 開催から約10年。これまでには駐車場不足や陣地取りなど若干のトラブルなどが起こったこともありましたが、実行委員会では周辺住民の協力を要請した駐車場の確保やブロック分けの徹底、雨天対策のテント敷設など迅速に対応し、円滑な運営に取り組んでいます。

 また12月は、当所とのタイアップ事業として「ぶりノーベル出世街道祭り」のイベントを併催。毎回、多数の来場者を迎えており、地元の町おこし、活性化にも貢献しています。

岩瀬朝市
岩瀬カナル会館駐車場
第2日曜 7:00〜12:00
今年度の開催日(6月12日・7月10日・8月14日・9月11日・10月9日・11月13日・12月11日)
(問) 岩瀬カナル会館 TEL076-438-8446


◆ 伝統の朝市と現代のオープンショップが融合、街なか観光の拠点に

○明治期から続く伝統の大手朝市

 富山市中心街にある大手モールでも、地元住民の取り組みが行われています。総曲輪通りの入り口にある大手町は江戸時代、富山城の正面玄関「大手門」があったことから名づけられた町で、明治期には県庁前通り、県庁移転後は大手通りとして栄えてきました。この当時から、通りには朝市が立ち、戦後も「地元住民の台所」として親しまれてきました。

 のどかな柳並木だった通りは平成元年、市民プラザの建設と共に大手モールとして整備され、モダンなケヤキ並木へと変貌しましたが、朝市は今も地元青年会が運営。6月から11月の奇数日、夜明けから8時頃まで開催されています。ここでは新鮮な野菜や花、加工品などが売られ、常連客で賑わっています。


○若さと個性でアピールする大手市場

 大手モールでは平成11年、全日空ホテルと国際会議場がオープンしたことを機に街の賑わいづくりを強化。これまでポスタートリエンナーレのサテライト会場やチンドンコンクールの舞台など、様々なイベントを開催してきました。

 そして平成14年秋からは毎月第1・第4日曜日、オープンカフェや出店、ストリートパフォーマンスなどを誘致した「越中大手市場」を開催しています。ここでは従来のフリーマーケットや骨董市とは一線を画し、この会場でしか買えない商品を売る参加者の出店を重視しています。通りで販売されているものを見ると、クラフト作家が作ったガラスアクセサリーや高山名産のコロッケ、地元の駄菓子、深層水など他にはないユニークな商品が多く、出店者の7〜8割が20〜30代と、若い活気に満ちているのも特徴です。

 「他と同じではつまらない。大手市場ならではという出店で、個性を出していきたいと思っています。ここはあえて駐車場を設けていません。街歩きを楽しみながら総曲輪通り、中央通りへと足を伸ばしてもらいたいと思っています」(同実行委員長 秋吉光雄さん)。

 実行委員会では、今後も個性ある出店者、参加者を募りながら独自性のある「大手市場」を演出していきたいということです。

越中大手市場
大手モール
第1日曜・第4日曜 9:00〜16:00(12月の第4日曜と1〜2月は休み)
問 実行委員会事務局(まちづくりとやま内) TEL076-495-5900


◆ 消費者と生産者が顔をあわせ、声を交わす朝市・夕市

○土の香りがする野菜を食卓に

 では最後に朝市・夕市についてご紹介しましょう。現在、富山市では8つの女性農業者グループが市内11ヵ所で朝市・夕市を開催しています。会場では産地直送の野菜や切り花、地元の郷土料理などを安価で販売しており、どの会場も朝早くから多くの来場者で賑わっています。

 最近は食の安全性が危ぶまれるような問題が深刻化しており、新鮮で安全かつ安心な食材を求める声が高まっています。こうした状況の中、地元でとれた食材を地元で消費する「地産地消」がクローズアップされており、朝市はその具体的な実践例。生産者と消費者の結びつきを深め、郷土の食材、食文化に対する理解を啓蒙していく上でも有意義な活動といえるでしょう。


○市民の自発的な行動をバックアップ

 当所は平成14年に「富山市価値創造プロジェクト」をスタートさせ、市民の手による価値資源の発見、再評価、再構成、編集、創出と、市民による価値資源の共有と情報発信活動などを「価値創造」と位置づけ、様々な事業に取り組んでいます。

 富山市の価値を創造するためには、市民一人ひとりが考え、できる事から実行することが大切です。今回、ご紹介したフリーマーケットや朝市・夕市は、まさに市民の自発的な行動に支えられているものであり、ひいては街の活性化や富山の元気創造につながる活動の一つです。

 当所は、今後もこうした市民レベルの活動をバックアップし、中心市街地の賑わい創出や新たな「富山の価値創造」に取り組んでいきたいと考えています。

 まずは、皆さんも活気あふれるこれらの市を訪ねて、地域の隠れた価値を楽しんではいかがでしょうか。



◆みんなでいかんまいけかあちゃんの朝市・夕市
これからの季節はたくさんの野菜や花が採れる時期。街のあちこちでは産地直送の朝市・夕市が開催されます。採れたての野菜はとびきり新鮮。体の中から元気にしてくれます。早起きは三文の得。早速、足を運んでみませんか?

中教院とれたて市 中教院モール
6月〜12月(毎週木曜日 8:30〜9:30)
みずの里市、池多朝どり特産市、グループあざみの3グループが出店。野菜・切り花・加工品など品数豊富。
夕市くれは JAなのはな呉羽駅前支店前
6月〜9月(毎週水曜日 16:30〜18:00)
10月   (毎週水曜日 16:00〜17:30)
代表者:庄司玲子(436-0804)
採れたての野菜が豊富に揃う夕市。品数も豊富。安心な野菜を食卓に。
朝市くれは JAなのはな呉羽支店駐車場
5月〜11月(毎週土曜日 9:00〜10:00)
代表者:庄司玲子(436-0804)
土の香りがする新鮮野菜を市価より安値で提供。特産の梨、放し飼いの鶏の卵、季節の漬物なども販売。
アリス朝市 五福ショッピングセンターアリス前
6月〜11月(毎週日曜日 9:30〜10:30)
代表者:庄司玲子(436-0804)
朝どりの新鮮野菜や切り花などを販売。手作りの漬物も安価で。
池多朝どり特産市 とやま古洞の森入り口駐車場
5月〜12月上旬(毎週日曜日 10:00〜12:00)
※7・8月は水曜日も開催(同じく10:00〜12:00)
代表者:栗山美知子(436-7790)
地場産の新鮮野菜を中心に特産のスイカ、リンゴ、さつまいも、季節の花を安価で提供。おこわや旬の加工品、リンゴジャムなども販売。
あじさいふれあい市 中川忠昭さん自宅倉庫前
6月中旬〜11月中旬
 (毎週木曜日・日曜日 5:30〜7:00)
代表者
 あじさいグループ 飯田美紀子(425-3151)
 すみれグループ 高田 典子(425-8343)
野菜を中心に切り花や苗(花や野菜)も販売。消費者と会話をしながら調理法や食べ方なども紹介。
とれたて市 富山市農協山室倉庫前
6月中旬〜11月中旬
(毎週土曜日 6:00〜7:00)
代表者:グループあざみ 横山美智子(425-5976)
平成12年、農産加工施設「食彩あざみ工房」を開設。手作りの郷土料理のPRに取り組んでいる。おこわや黒豆うま煮、大根こうじ漬けなどが好評。
月見町朝市 月見町公民館前
7月上旬〜8月中旬
(毎週日曜日 7:00〜8:00)
代表者:わかばグループ 竹田テル子(429-1288)
地区内に酪農団地があり、そこの完熟堆肥を使用して栽培した100円売りが基本の新鮮野菜が人気。漬物なども販売。
きときと朝市 月岡東緑町公民館前
7月中旬〜8月中旬(毎週日曜日 6:00〜7:00)
代表者:睦会 山本美知代(429-2534)
地区内に酪農団地があり、そこの完熟堆肥を使用して栽培した新鮮野菜を販売。期間中、注文を受けた越冬野菜を12月上旬までお客さんに届けるサービスも。
10 みずの里市 水橋ふるさと会館前
6月〜11月(毎週日曜日 7:30〜8:30)
代表者:山本節子(478-0005)
畑からとったばかりの新鮮な野菜、切り花を安価で販売。むぎころ、手作り加工品などおふくろの味を提供。
11 みずの里市 JAなのはな二ツ屋倉庫駐車場
5月〜12月(毎週土曜日 8:00〜9:00)
代表者:山本節子(478-0005)
形は不揃いでも低農薬で新鮮な野菜を提供。特産の切り花は菊から洋花まで豊富な品揃え。干ずいき、漬物など加工品も多数揃えている。

●お問い合わせ…富山市役所農林水産課 TEL076-443-2083



▼商工とやま記事別index  ▼戻る