「商工とやま」H17年7月号

 特集 バスで回ろう!富山 上手に使って賢く移動。意外と便利な循環型バス!


 近年、全国各地で運行されているコミュニティバスなどの循環型バス。この富山にも中心市街地を走る「まいどはや」、市街地と病院、ショッピングセンターなどを結ぶ「黄ーバス」、そして5月から本格運行となった「富山ミュージアムバス」などがあり、地域住民の身近な足として、また観光客の移動ツールとして活用されています。しかし一方では、まだ十分に認知されていない面もありますので、今回の特集では、各バスの最新路線図を含め、富山のコミュニティバスなどの循環型バスの特徴や便利な使い方をご紹介します。



■生活者の視点に立ったバスサービス

○コミュニティバスなどの循環型バスとは?

 コミュニティバスという言葉を聞いて、皆さんはどんなイメージを抱かれるでしょうか?「ワンコインバス」の呼び名に代表されるように低廉な運賃で市街地を運行しているバスや、街なかの狭い路地を走ることのできる小型バス、あるいは高齢者にやさしいノンステップバスなど、いろんな捉え方があります。

 国土交通省のホームページにはコミュニティバスを「主に地方公共団体が主体となり、地域住民の日常的な移動のために、小型の車両を用いて市街地を循環するような新しい運行形態で輸送サービスを提供するバス」と記しています。

 これによれば「まいどはや」はコミュニティバスの範疇に入るものの、利用目的を美術館めぐりに絞った「ミュージアムバス」や民間事業者が運行している「黄―バス」はコミュニティバスではないことになります。しかし利用する側にとっては重要な問題ではありませんので、ここでは『コミュニティバスなどの循環型バス』としてまとめて紹介いたします。



○原点は武蔵野市(東京)の「ムーバス」

 我が国に初めてコミュニティバスが登場したのは平成7年のこと。東京都武蔵野市が運行開始した「ムーバス」です。「ムーバス」は当時、交通僻地となっていた吉祥寺駅周辺の住民の足を確保しようと武蔵野市が企画、関東バスが運行管理し、欠損が生じた場合は武蔵野市が補助を行うというシステムでスタートしました。運行後は「便利で安全」というイメージが定着し、多くの乗客に親しまれるようになりました。

 この「ムーバス」の成功を機に、全国各地でコミュニティバスブームが起こりました。近隣では金沢市の「金沢ふらっとバス」、福井市の「すまいる」が平成11年に運行をスタート。その後も各地で増え続けており、現在、中部運輸局管内だけでも150を超える地域でコミュニティバスが運行しています。



■発案から2年あまりでスピード実現した「まいどはや」

○2ルート体制で市中心部を循環

 富山市中心街を運行しているコミュニティバス「まいどはや」(中央ルート)は平成13年3月にスタート。JR富山駅〜丸の内〜磯部町〜総曲輪通り〜中央通り〜富山駅を循環しています。さらに平成14年4月からはJR富山駅〜舘出〜清水町〜市民プラザ〜市役所などを循環する清水町ルートもスタートし、各ルートとも一日31便(20分間隔)運行しています。どちらも中心市街地および周辺地域の住民の利便性、回遊性の向上に役立っています。



○行政と商工会議所との連携が早期運行を実現

 富山市におけるコミュニティバスの運行は、平成11年ごろから市で論議されるようになりましたが難航し、当時は「実現には10年かかる」という声さえ囁かれたそうです。

 そんな状況が急展開したのは平成12年夏。富山商工会議所が創立120周年記念事業の一環として、コミュニティバス「まいどはや」を試験運行したことが契機となりました。当所では約3か月の試行運転期間中、利用者アンケートを実施し、「安くて便利」「あったらうれしい」という市民の声や利用実績を添えて富山市当局に、コミュニティバスの実現を訴えました。

 こうした住民の要望を叶えるため、富山市が動き始めました。市、当所、民間企業、地元商店街などの出資によって平成12年7月に設立した第三セクター(株)まちづくりとやまを活用して、コミュニティバスの運営を担わせることで協議が進み、その結果「運営は富山地方鉄道に委託し、既存のルートとバッティングしない路線を設定する」という形で運行が決定しました。

 「市にはコミュニティバスの担当窓口を企画管理部から商工労働部へ移管してもらいました。これによって行政と商工会議所、(株)まちづくりとやまの連携体制が強まり、予想以上の早期実現となりました」(同社代表取締役副社長 松井幹夫さん)。

 行政と民間の積極的な連携。これによって富山のコミュニティバス「まいどはや」は、発案から運行に5年以上かかった金沢市や福井市のコミュニティバスに比べ、半分以下の準備期間で実現できたのです。



○街なか観光の足として

 さて、気になるのが「まいどはや」利用状況ですが、平成14年度からの集計によれば「中央」「清水町」両ルート共、毎年少しずつではあるものの増加傾向にあります。

 こうした状況をふまえ、(株)まちづくりとやまでは、コミュニティバスを利用した「街なか観光」のPRに乗り出しました。同社では平成15年度、バス路線周辺の町内会長に「コミュニティバス運行アドバイザー」としての協力を依頼し、各町内の観光資源を再発見、再認識してもらいました。こうしてピックアップされた観光スポットを、インターンシップの大学生に実際に歩いて取材してもらい、観光パンフレットを作成。市内のホテルや観光案内所に配布し、コミュニティバスの利用拡大を図っています。

 「今、注目しているのは石倉町の延命地蔵尊。いたち川沿いは魅力がいっぱいです。近いうちにこの沿線にバスが通れないか、現在関係者と検討しているところです」(同・松井幹夫さん)。



■通院やショッピングに便利な循環型バス「黄−バス」

○富山駅で乗り換えせずに病院へ

 地元のバス会社も循環型バスの運行に積極的に乗り出しました。富山地方鉄道(株)が平成13年から運行している「黄(き)−バス」です。

 このバスの特徴は、富山市郊外に住む人々の利便性を追求している点。例えば従来のバス路線では、富山市南部の住民が中央病院に行きたい場合、一旦、富山駅まで行って乗り換えする必要がありました。こうした住民のニーズに応えたのが「黄−バス」。市内主要病院やクルマでなければ行きにくい大型ショッピングセンターなどを結ぶ新路線です。ちなみに名前の「黄−」には、運行開始当初、黄色だったボディカラーのほか、「拠点」=「キー」を結ぶという意味が込められているそうです。

 ルートは新庄・奥田線(日赤病院〜駅北口〜アピタ東店〜中央病院)と、布瀬・大泉線(日赤病院〜逓信病院〜市民病院〜中央病院〜駅北口)の2系統。それぞれ逆回りがあり、計36本運行。200円均一としており、両ルートを乗り継ぐ場合はプラス100円で済むそうです。



○クルマに乗らない高齢者の外出をバックアップ

 「従来のバス路線は富山駅が起点の放射状でしたが、その視点を変えてみました。まず利用者が行きたい目的地を設定。そうしたらこれまでつながっていなかった路線が見えてきたのです」(富山地方鉄道(株)村田嘉庸さん)。

 同社では「黄−バス」を導入するにあたり、バス乗務員によるワーキンググループを立ち上げ、乗客の意見や要望を収集。様々な要望をまとめた意見書をもとに今回の2ルートを策定したそうです。

 「黄−バス」の利用者には普段、クルマに乗らない高齢者の人々が多いようで、「根塚から乗り換えなしで中央病院まで行けるようになって便利」、「通院に時間がかからなくなった」という声が聞かれます。また、これまでバス路線空白地だったアピタ富山東店周辺に路線を作ったことに対しても「家族のクルマに頼らず、一人で買い物にいけるようになった」と好評です。



■市民だけでなく観光客も意識した富山ミュージアムバス

○市内の美術館・博物館にアクセス

 最後にちょっとユニークな循環型バスをご紹介しましょう。富山市教育委員会ではこの春から、市内にある公立の美術館、博物館を結ぶ「富山ミュージアムバス」の運行を始め、美術ファンや観光客に好評です。

 このバスは駅前〜松川べりギャラリー・彫刻公園前〜科学文化センター・近代美術館〜市民プラザ〜郷土博物館・佐藤記念美術館〜駅前〜水墨美術館〜民俗民芸村を8の字ルート、1時間間隔で巡回しています。乗車は無料ですが、目的地を限定しているため、事前に専用パンフレットを持参することが必要。各施設でスタンプを押印したパンフレットがチケット代わりになります。

 市内の文化施設を効率よく巡ることのできる交通手段として、全国的にも珍しいスタイルのバスといえます。



○市民の善意から生まれたバス

 この「富山ミュージアムバス」の運行は昨年、一般市民の方から市役所に「文化行政に役立ててほしい」と寄付金があったことがきっかけとなりました。市ではこの使い道を検討し、森市長の提案でミュージアムを巡るバスを購入しました。バスは高齢者の乗降にもやさしい低床車両の小型バスで37人乗り。ミュージアムバスにふさわしいスタイリッシュな外観デザインも特徴です。

 市では運行業務を富山地方鉄道に委託し、3月19日から試験運行を開始、この5月から本格運行になりました。また、市では利用者の方々によりバスに親しんでもらうために、バスの愛称を募集。その結果「この春、観光で富山を訪れ、ミュージアムバスを利用した」という和歌山県在住の片山葉子さんの案「ぐるりん」に決まりました。

 「1日30〜50人の利用があり、小・中学生の校外学習など団体利用も増えてきました。今後は、巡回ルートやスタンプ押印システムの再検討などが必要。徐々に対応しながらより良いサービスを提供していきたいと思っています」(富山市教育委員会 川上貴裕さん)。

 市では今後、県内の小・中学校や専門学校にパンフレットを送付していくほか、専用カードや見学コースなども企画し、積極的な活用を促して行きたいということです。



○使いこなせば安価で便利、富山を再発見

 このように富山市中心部には、安価で便利なコミュニティバスなどの循環型バスが多数、運行しています。システムや形態はそれぞれですが、目的にあわせてうまく利用すれば、その使い勝手はもっと良くなるでしょう。また、環境の面から見ても公共交通であるバスは有益であり、利用促進が望まれます。

 当所は「富山市価値創造プロジェクト」を実施しており、市民による価値資源の発見や再評価、その共有と情報発信活動を「価値創造」と位置づけ、市民の様々な取り組みを支援しています。そのためには市民自身が自分たちの住む郷土を深く知ることが必要で、今回ご紹介した循環型バスは、街の観光資源を再発見するための絶好の移動手段になると思います。そしてその発見が街の賑わい創出、街なか観光の活性化に繋がっていくとが期待されます。

 皆さんも路線図を片手にこれらのバスを活用してみてください。普段通ることのない細い路地や中心街の町並みなど、マイカーのハンドルを握りながら眺めている街の風景とはまた違った「新しい富山」を発見できるかもしれません。



■お問い合わせ先
 〈まいどはや〉(株)まちづくりとやま TEL 076-495-5900
 〈黄ーバス〉 富山地鉄テレホンセンター TEL 076-432-3456
 〈富山ミュージアムバス〉 富山市教育委員会生涯学習課 TEL 076-443-2138


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