「商工とやま」平成18年5月号

特別寄稿
「新しい富山の創造」 〜未来への出発点〜  (平成18年度/富山市商工労働部関係施策)

 本格的な人口減少・超高齢社会の到来など社会環境の大きな変化に伴い、地方自治体においても、地方分権の時代にふさわしい簡素で効率的な行政システムを確立する必要があり、行政改革の推進と効率的で持続可能な財政への転換が求められております。

 本市では、北陸新幹線の開業を見据えた中で、高齢者にとって暮らしやすい、都市機能が充実し魅力にあふれた夢のあるまちづくりを進める必要があると考えており、今後は、車中心の地域づくりから拠点集中型の、いわゆる「コンパクトなまちづくり」を目指してまいります。

 都心部では、路面電車を活用しながら、商業施設が集まり、人々で賑わう都市としての再生を図り、また、郊外では、富山港線やJR高山本線の沿線駅を核とした魅力あるまちづくりを進めてまいります。

 平成18年度の富山市の予算は、新市の予算編成方針に基づいたはじめての予算であり、市では、この予算が、本市の未来への出発点となると考えており、この予算をもとに、県都として、また、日本海側有数の中核都市として、将来に向かって大きくはばたくため、夢の実現に向けて、各種事業に取り組んでまいります。


■企業誘致の推進と新産業の育成

 本市経済の活力を維持・発展させるため、企業誘致は大変重要であります。

 このため、市域におけるそれぞれの地理的な優位性を活用し、生産環境や立地条件の整った企業団地の整備を促進するとともに、オーダーメイドによる用地整備やリース制度による用地供給方式など、企業の多様なニーズに応えながら、本市の優れた立地環境や助成制度のPRを行い、製造業、流通業、先端技術産業等の企業誘致に努めてまいります。

 また、バイオ・ナノテク・ITなど新しい成長産業分野の研究開発型ベンチャーの育成・集積を図り、産業・経済の振興・活性化を目指す「ハイテク都市基本構想」の中核となる新産業支援施設の整備に取り組むとともに、県や関係機関との連携により、バイオテクノロジー関連のセミナーや研究会を開催し、バイオ産業の育成を図ります。



■薬業の振興

 薬業の振興については、「富山くすりフェア」を9月のおわら風の盆に併せて開催し、県内外の観光客に配置薬と「くすりのまち富山」のPRを図ってまいります。

 また、薬など富山の特色を活かした観光資源(薬膳料理提供店、漢方薬販売店、体に良い食品やお菓子の製造販売店等)を全国に発信し、富山を訪れる観光客に「くすりのまち富山」を紹介するガイドブックを作成してまいります。



■企業誘致の推進と新産業の育成

 富山ブランドとしての特産品を首都圏でPRし、販路の開拓及び地域産業の振興を図ってまいります。

 また、岩瀬地区において、豊かな自然と歴史、伝統を活かしたイベントを開催し、地域ならではのブランドの発掘、育成に努めるほか、富山ライトレールの終点にある岩瀬カナル会館に浜焼きコーナーを整備して集客を図り、地域の「にぎわい創出」に努めてまいります。



■商店街の振興による商業・サービス業の活性化

 魅力ある商店街づくりが求められている中、「富山市商業振興ビジョン」に基づき、商店街が行う地域の特性に応じた魅力的な商店街づくりに対する取り組みを、引き続き支援いたします。

 また、地域商業の活性化を図るため、市民がボランティア活動等を行った際にポイントを発行し、商店等で買い物券として利用してもらう「エコボランティアサポート事業」を試行実施してまいります。



■新たな賑わいの拠点の整備による中心市街地の活性化

 中心市街地の活性化については、中心市街地に都市機能を集約し、コンパクトで賑わい溢れるものとするため、新たな「中心市街地活性化基本計画」を策定し、市民・商業者・行政が一体となったまちづくりに取り組みます。

 (株)まちづくりとやまによる中心市街地の賑わいの創出や中心商店街周辺の駐車場料金を無料にする「街なか感謝デー」に支援するとともに、平成17年度に引き続き「地域再生マネージャー」を活用して「(仮称)グランドプラザ」やその周辺地域での賑わいづくりを検討し、さらに昨年12月に寄附を受けた総曲輪ファッションビル(通称ウィズ)を改修し、名画座や演芸会等を開催できる「(仮称)賑わい交流館」として整備いたします。

 また、本年度から利用範囲を全市域に拡大して「おでかけバス事業」を実施するほか、「中心市街地活性化コミュニティバス運行事業」、レンタルサイクル・レンタル電動スクーターを活用した「街なか回遊性向上事業」を実施し、来街者の交通アクセスの充実と回遊性の向上を図ります。



■金融、経営指導による中小企業の支援・育成

 中小企業の振興には、金融、経営指導の両面にわたる対策の強化が必要となっていることから、まず、金融面においては、中小企業者の事業経営の安定と資金調達の円滑化を図るため、十分な融資枠を確保するとともに、借り換え制度として緊急経営基盤安定資金を継続し、中小企業者の資金需要に応えてまいります。

 なお、本年度から、創業者支援資金と設備近代化資金において、融資要件を緩和するとともに、全ての資金において連帯保証人要件を緩和し、さらなる制度の利用促進を図ってまいります。

 また、中小企業者の経営相談に対応するため、引き続き中小企業経営相談員を配置するとともに、「とやま企業経営未来塾」を開催し経営者の能力の向上を図るなど、経営指導の充実にも努めます。



■デザイン・工芸の振興

 デザインの振興については、商業デザイン活動の活性化や市民普及を図るため、デザイン活動の拠点である「デザインサロン富山」を支援するとともに、「富山デザインフェア」を開催し、本市の商業デザイン活動の育成を図ってまいります。

 また、「世界ポスタートリエンナーレ富山」の協賛イベントである「ポスターの街・とやま」を支援するとともに、市民に街かどでポスターに親しんでもらうため、ポスター塔を増設してまいります。

 工芸の振興については、ガラス工芸を富山の地場産業としてより発展させるため、富山ガラス工房を発信基地として、ガラス文化の普及と優れた人材の育成に取り組んでまいります。

 また、本市の貴重な伝統工芸である木象嵌技術伝授への支援、並びに国指定の伝統的工芸品である越中和紙の伝承を支援し、後継者の育成や販路の拡大を図ってまいります。



■通年・滞在・周遊型観光の振興

 観光の振興については、日本海沿岸から三千メートル級の山岳地帯に至る広大な区域に本市が有する豊富な観光資源を活かしながら、通年・滞在・周遊型の観光をさらに推進していくことが重要であります。

 特に近年、本市を訪れる外国人が増加していることから、国際観光の振興に力を注ぐこととし、外国語表示の観光案内板の整備やホテルの外国語テレビ放送導入に対する支援、立山山麓のホテル・旅館等が行う外国人スキー客宿泊料金助成事業に対する補助などを新たに実施し、本市を訪れる外国人観光客の受入態勢を整備します。

 また、富山空港にはソウルからの定期便が就航していることから、従来からとりわけ韓国からの観光客誘致には積極的に取り組んでおり、今年度も南砺市及び飛騨市と連携しながら広域的な周遊ルートを盛り込んだ観光商品の企画を韓国の旅行業者に働きかけてまいります。

 さらに、富山商工会議所が中心となって新たな観光資源を発掘しようとする産業観光ルートの策定などについて引き続き支援いたします。

 観光行事については、従来からある「全日本チンドンコンクール」、「富山まつり」、「とやまスノーピアード」などに加えて、新たに「おわらと民謡のステージ」を「おわら風の盆」の時期に開催するなど、四季に応じた魅力あるイベントを充実させてまいります。

 また、コンベンション開催支援制度を活用して、引き続きコンベンションの誘致に努めます。



■創業の支援と雇用の促進

 創業支援につきましては、「とやまインキュベータ・オフィス」や「ハイテク・ミニ企業団地」など創業者支援施設の入居企業を支援するとともに、都心地区において新たに事務所を開設するIT関連の創業者等を支援してまいります。

 また、ベンチャー企業の新商品出展にも助成してまいります。

 さらに、大きな雇用効果が期待できる情報通信関連企業にオフィス賃借料などの助成を行うとともに、新たな関連企業の誘致に努め、一層の雇用の拡大を図ります。

 景気の回復を背景に雇用情勢は全体として改善が進んでいる一方、依然として厳しい状況が続いている高年齢者や障害者の就業を支援するため、引き続き、雇用奨励金の交付や高年齢者職業相談室の充実、障害者雇用支援推進員による養護学校等で実施する「就業体験」受け入れ事業所の開拓、障害者雇用の優良事業所表彰の実施等、雇用の促進と安定を図ってまいります。

 「ニート」と呼ばれる若者の増加が社会問題となっている中で、就業意識の醸成を促すセミナーを開催することで、若年層への就業支援を推進してまいります。

 さらに、雇用のミスマッチの解消を図るため、富山地域職業訓練センターのパソコン実用講座などを通じて、求職者などの能力開発に努めてまいります。

 また、勤労者福祉の向上や生活の安定を図るため、子育ての相互支援活動を実施するファミリー・サポート・センター事業の拡充をはじめ、勤労者小口資金融資制度の継続や富山市勤労者福祉サービスセンターの運営について支援をしてまいります。


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