「商工とやま」平成20年2・3月号

特集
 グランドプラザの活用で、街はもっとおもしろくなる。

 平成19年9月17日に西町・総曲輪CUBYと総曲輪フェリオ・大和富山店の間にオープンした街なか賑わい広場『グランドプラザ』。
 あたらしい街の顔として多くの人に親しまれ、これまでに多彩なイベントが開催されてきました。今回は、中心市街地の活性化の起爆剤の一つとして注目を集める、グランドプラザの様々な動きについてご紹介します。

■あかるい開放空間

プロボクシングの試合(平成19年11月3日)

 富山市が事業主体となって整備運営しているグランドプラザは、総曲輪フェリオのオープン4日前の9月17日にオープン。透明なガレリア(大屋根)を設けた全天候型空間として、おしゃれな外観とともに、人々にあたらしい総曲輪の始まりを強く印象づけました。

 施設面積は南北65m、東西21mで約1400平方メートル、天井までの高さは約19m。ガラス屋根を通して明るい陽射しが差し込む開放的な空間となっています。

 総曲輪通り側にある277インチの大型ビジョンでは、ライブの模様を流したり、プロモーションビデオを流したりすることもできます。イベント開催時にはステージとして使用できる6×6mの昇降式舞台兼用倉庫や、撮影機器、電気・給排水設備が完備されています。その他にも、モバイルグリーン(可動式樹木)と呼ばれる、移動できる自然木の緑化ユニットが置かれていて、訪れた人に安らぎを与えています。

■2つの再開発ビルを一体化する

外車の展示商談会(平成19年10月6日)

 大和富山店を中心とした総曲輪フェリオ、そしてグランドパーキング(630台の駐車場)と商業施設を併わせもつ西町・総曲輪CUBY。その間にはかつて「グランド通り」がありました。2つの再開発ビルはそれぞれ事業主体が異なるため、この通りを挟んで別々に計画・着工が進められていきました。

 一方でグランド通りをはじめ、いくつかあった細い市道を一カ所に集めてくることで、幅21mの広いスペースが創りだされました。このスペースは当初は、フェリオへの物品の搬入用のバックヤードや、駐車場の出口として利用する案があがっていました。しかし再開発の検討が重ねられるなかで、それまでの発想を大きく転換。2つのビルを一体化し、現在のような開放空間・グランドプラザが生み出されることになりました。

 今回はグランドプラザの運営にあたる、富山市都市整備部都市再生総室・都市再生整備課の京田課長にお話を伺いました。

■活性化に向け一丸となって協力

 CUBYとフェリオの間のスペースをどうするか。「2つの再開発組合のみなさんと富山市が検討を重ねた結果、お互いの機能を補完し合って一体的に整備することで、訪れる人がより使い易く、人が集まる施設にしよう、ということになりました。一体的な開発と言っておきながら、それぞれの再開発ビルがその間のスペースで分断されてしまっては、人の行き来も不便です。まさしくこの2つの施設の間こそ、賑わいの核として整備すべきということになり、雪の多い富山の土地柄を考慮して、屋根のある施設が計画されました」。

 CUBYは平成17年に完成していて、昨年のフェリオとグランドプラザのオープンまでは約2年半のずれがありました。そのため、それぞれの建物の上にグランドプラザの屋根をつけるためには、両者の協力が欠かせないものとなりました。先にオープンしていたCUBY側では、後からグランドプラザの屋根が被さる形でつながり、同時に建設が進んだフェリオ側では屋根はフェリオ本体の柱と兼用して支えることにしました。通常であれば所有者の違う3つの建物を一つにつなぐことは、費用負担の面からも困難な計画です。

 「グランドプラザは関係者の大きな理解があってこそ実現した施設で、画期的なことです」と振り返る京田課長。再開発にかける関係者の熱意が伝わってくるエピソードです。

■予想を上回る利用率とユニークなイベント

 オープン以来、平日・休日も含めて、全日数の約6割で、何らかのイベントが開催されているというグランドプラザ。予想を遥かに上回る利用率で、様々な話題を提供し、たくさんの人で賑わいをみせています。昨年の11月3日にはプロボクシングの試合が行われ、訪れた人を驚かせました。その他にも、結婚式や、テレビの生中継、料理コンテストなどが開催され、また、クリスマスイブには、彼女へのメッセージを大型ビジョンに流し、その場でプロポーズした男性もいたそうです。こんなふうに、運営スタッフの想像を超えたユニークなイベント企画や利用方法は、市民の期待と注目度の高さを物語ると同時に、これからの大いなる可能性を感じさせてくれます。

■子供たちに「街なか」の記憶をつなげたい

園児のフットサル大会(平成19年10月13日)

 グランドプラザでは子供たちの利用を広く呼びかけています。これまでに園外保育や遠足、社会見学で訪れた保育所や小学校は20〜30ほどあり、子供たちは大型ビジョンに写る自分の映像や、昇降する舞台に歓声を上げて大喜びします。

 「われわれ中高年は子供の頃、親に連れられて街なかに遊びに来て、大和の屋上で遊んだり、レストランでお子さまランチをたべたりと、わくわくした思い出があります。しかし、今の若い親御さんは郊外のショッピングセンターに子供を連れて行くことが多く、子供たちには、街なかでの思い出や記憶が生まれにくいのではないでしょうか」という京田課長の言葉通り、子供たちがグランドプラザで楽しみ、「また行きたい」と思う気持ちは、親・家族を街なかに呼び込むだけでなく、いくつになっても街なかに目を向かせ、大人になれば自分たちの子供を連れて街なかに来ることにもつながっていく。そんな循環を生む芽とも言えます。

 全天候型広場の強みは、散歩や遠足で訪れる子供たちが持参した敷物に座って楽しそうに食べるお弁当タイムにも、「雨でも心配がない」と好評。また、以前イベントで開催されたフットサルの試合のように、今後は人工芝を準備して教室を開催できるようにするなど、子供たちが街なかで楽しむための検討が進んでいます。

■継続した賑わいづくりを

 総曲輪通りや平和通りの歩行者はオープン以前の数倍にアップし、街なかを訪れる人は確実に増えています。グランドプラザが実施したアンケートでもグランドプラザへの評価は高く、街なかのイメージはマイナスイメージからプラスイメージへと変わったという意見が多数を占めました(資料1)。今後は、この好結果が商店街に波及していくことが求められています。

 そのためには、この先もずっと飽きられない仕掛けを考える必要があります。「平日はグランドプラザに行けば、誰かに会えるし、週末は何かおもしろそうなことをやっている場所としてイメージを定着させたい」。オープン以来、メディアや大手企業の利用が多くありましたが、「今後は地元の商店街等の利用も増やしていきたい」と意気込むグランドプラザ。商店街の中にあるからこそ、その環境を生かした賑わいづくりが重要になってきます。

■利用料金も柔軟に対応

 利用料金については、土日の全日12時間利用で最大20万円となっています。しかし、イベント内容や企画に合わせ、その都度、柔軟に対応されています(資料2)。また、イベントの企画についても、打ち合せを重ねながら、より良いものにするために様々な提案、アドバイスができる体制が整っています。

 予算があまりなくても、「こちらの方が逆に、ぜひ実現したいと思えるおもしろい企画が寄せられることが多いんです。20万円の使用料だから最初から無理と思わず、ぜひ私たちに相談してほしいですね。さまざまな関係先にも呼びかけるなど、多様な面から協力します」と、京田課長はグランドプラザの利用を推めています。

■新しい試み「マッチング事業」

 グランドプラザでは現在の賑わいを一過性のものとしないため、「グランドプラザマッチング事業」に取り組んでいます。グランドプラザを多くの方に利用してもらうため、アイデア豊富な「市民・個人店主等」を事業提案者とし、社会貢献を通じて企業PRをしたいと考えている「企業・団体」をスポンサーとして、両者を結びつけることを斡旋する事業です。

 昨年の11月に第1回マッチング事業がグランドプラザで開催され、応募した7組が約30社の協賛企業の皆さんの前で、独自のイベント企画案をプレゼンテーションしました。その結果「ファイブミニッツクリエイションナウ」という、1組5分間でグランドプラザの舞台上で自由にパフォーマンスしたり、絵や様々な作品をブース展示するイベントが選ばれ、2月3日に開催されました。その他のイベントも、順次開催予定となっています。また、今回の経過を見て反省点などを考慮しながら、来年度のマッチング募集を検討し、市では年に1〜2回の募集を予定しています。

■市民参画によるソフトの充実を

 富山では多くのハードの整備が進み、その結果きれいな街になりましたが、街の賑わいにはあまりつながっていませんでした。今後はハード整備だけではなく、今回のグランドプラザのような、ハードをいかに使いこなすかのソフト事業も重要な時代です。

 また、行政まかせではなく、市民がもっと意欲的に参加していくことが、賑わいを継続させるためにも必要とされています。民間や市民レベルでの継続した積極的な参画によって、賑わいを創造する知恵と行動力が求められているのです。

 当所では、中心市街地の活気あふれた街づくりの推進のため、今後も多方面から協力・支援していきます。

 

≪安全を第一に、ベストをつくしたい。≫
「お絵かきプロジェクト」平成19年11月27〜29日

グランドプラザ運営事務所 チーフスタッフ 道木 健さん

 埼玉県出身の道木さんは、大学卒業後、NPO法人で地域活性化などのイベント企画・運営に携わり、その経験を生かして、グランドプラザ運営事務所のチーフスタッフとして勤務。街の賑わいづくりのため、忙しい毎日を送っています。

 「いつも子供の目線で、安全であることを第一に考えています。総曲輪通りからグランドプラザにかけてはバリアフリーになっていますから、ベビーカーを押しながら訪れるお母さんも随分増えました。今後は、子供向けのイベントも増やし、もっと親子で楽しめるグランドプラザにしていきたいですね。

 富山の皆さんは参加型のイベントでも、きっかけをうまく提供すると、すごく積極的になり、楽しんで下さいます。それにまじめな県民性からかマナーも良く、ゴミも少ないですね。

 この仕事を通していろんな人にお会いできるのが一番のやりがいです。私自身まだまだ勉強が必要ですし、毎回教えられることが多々あります。いままで会えなかったような方にお会いし、あたらしいアイデアが生まれていくこの場所で、この仕事に携わることができ、とてもうれしく思っています。これからも常に、その時のベストをめざして頑張っていきたいですね」。



富山市 都市再生整備課
グランドプラザ運営事務所
〒930-0083 富山市総曲輪3丁目6番15‐23号 西町・総曲輪CUBY2階
TEL:076-407-4400  FAX:076-407-4422
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