会報「商工とやま」平成21年05月号

特集U
富山県経営品質協議会 Toyama Management Quality Association
「経営品質向上活動」で不況に勝ち残る体質と風土を作ろう。



 富山県経営品質協議会(以下TMQA)をご存じですか?「経営品質向上活動」とは、厳しい時代に勝ち残るために、「顧客本位に基づく業績の卓越性」を徹底的に追求し、たえず「経営全体の仕組み」を見直し、自社の強み・弱みを客観的に自己評価することによって「経営革新」へとつなげ、長期的に競争力を高める強い経営体質を築いていくための活動です。全国各地で30を超える研究会や協議会が設立されており、活発に事業を展開しています。

 TMQAの会員数は78企業・組織=189名(2009年4月1日現在)で、今後も、意欲ある企業および経営幹部の皆さんの参加を呼び掛けています。



「製品の品質」から「経営の品質」へ


 「品質」というと、「製品の品質」を指すのが一般的でした。しかし、製品の品質さえ追求すれば顧客・消費者の要求に応えられたのは、もはや過去のこと。今や先進各国は「供給過剰」慢性化の時代、市場・顧客側に主導権が移った時代です。供給側=企業側主導の考え方で「製品品質を向上させれば売れる」「良いものを安く作れば売れる」といった考え方は通用しません。

 「顧客主導」の流れへの対応は、近年「顧客満足(CS)」「顧客価値」(顧客が評価する企業の価値)重視の考え方のもとに各企業で取り上げられています。しかし、単なる接客マナーレベルでの対応に終始したり、口先だけのスローガンに陥ったりという事例が多かったのも事実。このような反省に立ち、業績向上につながる真の顧客重視を実践するには、製品・サービスだけでなく、企業の「あらゆる部門・あらゆる業務」を「お客様の要求・期待の視点」から見直すことが最重要の経営課題であるという認識が、好業績企業を中心に広まってきています。

 このような「顧客の視点」から見た「経営の仕組み」の質的レベルを表わす概念が「経営品質」です。つまり、経営品質とは、顧客によって競合他社との比較の上で評価され、支持される「企業活動のトータルな質」(マネジメント・クオリティ)を意味するものなのです。

 「経営品質」向上の考え方は、アメリカ産業復活の源泉とも言われる「マルコム・ボルドリッジ国家品質賞(MB賞)」に始まり、我が国では(財)社会経済生産性本部(現・(財)日本生産性本部)が1995年に創設した「日本経営品質賞」に反映され、各地の各種経済団体を母体とした活動として急速に普及しています。


「経営品質」とは「経営の仕組み」の良さのこと


 利益・売上、顧客満足度、人材の能力など、企業の「業績」(結果)の良し悪しには、リーダーシップ、業務管理システム、人事管理システムなど、経営の「仕組み」(原因)の良し悪しが根本にあります。健康な体はT生活習慣Uを変えることによってもたらされるように、健全な企業体質もT仕事の仕方・経営の仕方U=「経営の仕組み」を変えることによって実現されるのです。


経営品質向上プログラム事例紹介


 今回は、TMQAに参加し、現在、経営品質向上活動に取り組まれている、株式会社高橋の代表取締役高橋賢氏にお話をうかがいました。

 1968年創業の株式会社高橋は、従業員数は50名。コンベアベルトの加工販売・各種メンテナンス、コンベア設計・製作、プラント(搬送ライン)工事などを手がけています。高橋氏は2003年に、現会長で父の高橋博氏より経営を引き継ぎ社長に就任。そして、2004年からTMQAに参加しておられます。同社では2006年の8月から本格的に経営品質向上活動に取り組み始め、現在に至っています。


経営品質導入のきっかけ


 「まず、定例会に参加し、さまざまな事例を知って衝撃を受けました。紹介されていた企業では、経営品質の考え方が社員一人ひとりに浸透していて、組織として確実に実行されていました。勉強すればするほど、経営品質の考え方の大切さがわかってきましたが、それを自社の経営にどう反映させていくのか、一人だけでは社員になかなか浸透していかないジレンマもありました。そんな時に、コンサルタントの植木さんからご協力いただけるとのお話があり、自社での取り組みを始めることになったのです」。


全社員で取り組むために


 高橋氏はまず、経営品質の基本について全社員への研修を行い、会社への不満や問題点などを改善カードに書いて提出してもらう取り組みを開始。その意見をもとに、中期経営計画の策定に着手しました。

 「経済の低迷とサービスの過剰、ニーズが多様化する現状の中で、いかに自社を選んでいただくのか。それには、やはり根本的な体質改善がどうしても必要だと考えました。創業以来培ってきた良い面はもちろん活かしつつ、改めて、テコ入れをしていく段階だと。全社員から意見を集めるのは、短絡的な問題解決のためではなく、根深い原因を探り、社風を変えるための第一歩です」。

 現在でも日々の仕事のなかで感じたさまざまな問題点、あるいは良い点などを社員全員がカードに書き、それをレビューとしてまとめることで、情報を共有する試みが続けられています。

 「カードを書くことによって、毎日のお客様や社員同士のやりとりの中に、実はビジネスチャンスはたくさんあるということに気づいてもらうことも重要です。それぞれがアンテナの感度を上げて、目の前にあるチャンスをもっと活かしていけたらと考えています」。


見えてきた課題


 経営品質向上活動に取り組んでみると、さまざまな問題点が見えてきたと話す高橋氏。

 「やはり何といっても、社内の組織づくりが第一です。社員が少ない頃は、トップダウン方式で良かったのですが、社員も増え、全社的な取り組みを進めるための組織体制の見直しが何より大切ということがわかってきました」。

 現在、月に1回、各部門から若手リーダーを集めた「改善委員会」を開催して、新しい組織づくり、管理体制づくりが始まっています。また、全社員の自由参加で社内の課題を解決する「サミット」も開催。ここをスタートに、全員がいかに協働して課題に取り組み、共通の認識を持ち、あたらしい社風を作り上げていくかが課題となっています。


「共に育ちあう、しあわせな人生」のために


 経営品質向上活動に取り組むなかで、経営理念もさらに明確になり、自分自身で、より納得できるものになってきたと語る高橋氏。

 「以前は、なかなか社員に踏み込めない自分がいましたし、それまでの経営理念はどこか言葉だけが先行するような、腹に落ちない部分もありました。しかし、いまは経営理念と経営品質の考え方がひとつにつながり、取り組むべき課題もよく見えています。時間がかかることは覚悟していますが、今後も、社員一人ひとりの意識改革と、納得して実行できる体制づくりを目指したいですね。組織を固めながら、自分の思いも、もっと伝えていけたらと思います。経営理念にも掲げていますが、共に育ちあい、しあわせな人生を実現するために、思いやりのやりとりを通して、お金だけではない、生きがいを感じられる会社にしていきたいと考えています」。

 皆さんも厳しい時代を乗り切るためにも、経営品質の考え方を学び、あたらしい経営の「軸」を手にいれてみませんか。お問い合わせは富山商工会議所のTMQA事務局まで。年会費は一口3万円で3名様まで登録できます。定例会や講演会には無料でご参加いただけます。

≪お試し参加Uしませんか?≫
 毎月第2水曜日開催の定例会は、お試し参加〔無料〕ができます。
 次回は5月13日(水)、当所ビルで午後2時から。お待ちしております。
■TMQA事務局 TEL:076-423-1175


身の丈に合った改善を本気でやる
TMQA幹事・定例会講師 (株)フォーワン代表取締役 植木 悟

 経営品質は「競争優位の顧客価値を実現する」ための「経営体質(仕組み)づくり」を目指すものですから、まずは経営者・経営幹部が研修や定例会などを通じて「経営品質の考え方」の基本をしっかり学ぶことが大前提です。しかし、事例にある高橋社長もTMQA入会後熱心に経営品質の勉強を続けましたが、すべてが分かってから活動を開始したわけではありません。一つ一つの地道な実践を通じて学んでゆく(走りながら考える)のが経営品質向上活動の王道です。とはいえ、基本を学んだ後、どのように導入すれば良いかと逡巡する経営者が多いので、導入の第一段階の要諦を簡略に記します。

 どの企業にも「社風」と一括されるような慣行・制度などの現行の〈仕組み〉がありますから、経営品質の視点からその〈仕組み〉を全面的に見直して「改善課題」を洗い出すことが大切です。その際、(株)高橋のように「現場の声」を収集して、具体的な「中期経営計画(重点施策)」としてまとめる作業が肝要です。なぜなら、事業活動の現在のレベル・実状は現場の人々の意識・行動に体現されており、レべル・実状に合わない施策には実効性が望めないからです。導入段階からいきなりハイレべルを基準としたような取り組みを想定すると、現場も混乱してうまくいきません。経営品質を学んだ方々は、ややもするとハイレベルでないといけないといった固定観念に囚われがちですので、その意味でも「現状の見直し(アセスメント)」を通じて、身の丈に合った「中期経営計画」の策定を第一ハードルと見定めて着手するのが現実的なアプローチだと思います。

 高橋社長の言葉にもあるように、経営体質の改善は「時間がかかることは覚悟」して計画的に本気になって取り組まなければ叶わないのです。


■「経営品質向上プログラム」 導入のメリットとは

  ●経営レベルでの強み・改善領域が明確になります!
  ●経営幹部の思いがどれだけ伝わっているかを検証できます!
  ●自己評価(セルフアセスメント)で改善の仕組みを作ることができます!
  ●中小企業や事業部門・支店での改善にも効果的です!
  ●いま取り組んでいる改善活動と矛盾しません!
  ●アセスメント基準書で社内の体質改善ができます!

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