会報「商工とやま」平成21年7月号

経営応援コーナー
  第2回 売れない時代に売る戦略のつくり方
    〜販売戦略の向かうべき方向を決める! 調査・分析の重要性〜



◇わかりやすく戦略を組み立てるコツは、設計図をもとに、手順を追って…

図1 戦略立案のフロー
前回の内容でもふれた「物量で劣る中小企業が勝つためのマーケティング」の考え方を、設計していくにはどうすればよいか?(図1参照)。

家具を組み立てるように、戦略を設計するには設計図が必要です。「いきなりチラシをつくっても効果がなかった」といったマーケティングの失敗は、設計図が不在のまま行動を起こした場合に多く見られています。

図1のように、全体の設計図から見ると、最初に着手するのは「チラシをつくること」ではなく、環境を「観察」し、自社・市場を「調査」することが何よりも重要です。よって、この作業が戦略をつくるうえでの第一歩となります。


◇堅苦しい「調査」ではなく、4つのマス目に情報を入れる感覚で

図2 調査・分析の定番、SWOT分析
「観察」「調査」というと、多くの経営者、ビジネスマンの方は難しいもの、専門の機関が行うものと思われるかもしれません。

しかし、経営資源の少ない中小企業では、社内で調査を進めなければなりません。

では、特別なスキルがないのに調査を進めるにはどうすればよいか。そのときに役立つのが「SWOT(スウォット)分析」という手法です(図2参照)。


◇S・W・O・Tの情報を眺めると、予想外の強み、ヒントが見えてくる


御社の特長はなんですか? お店の一押し商品は? ストレートに言うと、「強み」はなんですか?

このような質問に明確に答えられない皆さんは、早速、次のような手順に従って、自分自身の会社や店舗の商品やサービスを知ることが必要になってきます。こんな時、世界のビジネスシーンで頻繁に使われるのが「SWOT分析」です。

「SWOT分析」はS・W・O・Tの4つのマス目で構成されており、Sは自社の「強み」、Wは「弱み」、Oは「好機」、Tは「脅威」を表しています。

このマス目に情報を落とし込み、自社の強みと弱み(内部環境)、市場の好機と脅威(外部環境)を分析することで、思ってもみなかった自社の強みや新しいチャンスに気づく…そんなヒントを与えてくれるのがSWOT分析の長所です。

図3 美容室のケース 例えば、こんな事例があります(図3参照)。

若い女性をターゲットに広告を出したものの売上が伸び悩んでいたある美容室では、SWOT分析を行ったところ、「来店客が女性だけでなく男性の比率も高い」ことを自社の強みとして再確認しました。

そこで、その「強み=S」を前面に打ち出した広告を実施することで、女性が男性を連れてくる、いわゆる「同伴誘客」の効果が得られました。つまり、自社(店)の「強み」をしっかり把握し、その「強み」を活かすために、ターゲットを明確化することで、より効果的な戦略を描くことが出来る好例ではないかと思います。


◇「強み」は新しいものではなく、自社(店)の経営資源の中に眠っている。ただ気づかないだけ…


強みというと、何か新しいもの、業界にはない絶対的な強みと捉えることもありますが、成功している事例の多くは、これまでのビジネスの中で培った自社の経営資源のなかに眠っている、または気づかないだけというケースが殆どです。

また、弱みを克服するよりも、強みを伸ばすことで状況を変えている企業が多いのも中小企業の特色です。戦略を組み立てる前には、このSWOT分析を活用し「調査」を行うことで、自社の強みを再確認し、戦略の方向性を決めるヒントにしてください。

次回は「観察」「調査」段階から、さらに一歩進んだ「構想」段階についてお伝えしていきます。



当所地域力連携拠点事業の専門家/石橋孝史氏((株)ヒューマンサポート/取締役)に執筆のご協力をいただいています。

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