◇戦略をもとに顧客心理段階に合わせてプロセスとツールを設計する

「戦略を構想する」、それが前回のテーマでしたが、今回は戦略からより具体的な戦術に視点を移したいと思います。
かつての高度成長時代の日本では、C(コンセプト)とT(ターゲット)が上手く合致していれば物が売れていく時代でした。
しかし、現在では「いかに市場や顧客に働きかけていくか?」ということが非常に重要な要素となります。その際に役立つのが今回紹介する2つのキーワード、PとT、つまりプロセスとツールです。
「プロセス」は
営業や販売に至るお客様との関係づくりの段取りであり、「ツール」は
チラシやDM、ポイントカードなどの各手法を意味しています。
この2つを「顧客の購買における心理」に合わせて、設計することが売上増加を実践する大きなポイントになります。
では、「顧客の購買における心理」とは何か? 消費者がある商品やサービスを買うとき、全く知らない商品をパッと買うことは殆どありません。

図2のように消費者は「先ず認知する(興味を感じる)ことで関心を高め、その後、商品やサービスの調査をすることで意欲的になり、結果購入し、気に入れば継続的な購入をする」といった心理的な行動経過を辿ります。
最近増えてきているインターネット検索による商品比較などの行動も、顧客心理の「調査」段階に該当します。
つまり、この消費行動の階段をいかにスムーズに上ってもらうかが、販売促進の鍵であり、そのために顧客の心理段階を分解して、細やかなプロセスごとにツールを繰り出す(設計する)手法を、キーワードの頭文字をとって「PT設計」と呼んでいます。
◇ツールは場当たり的になりがち。大切なのはプロセスとの組み合わせ
よくこんな声を聞きます。「チラシはイマイチ」「DMは反応率が悪いから止めた」というものです。
これは、顧客心理を考えずに、ツールの内容ばかりを気にするため、場当たり的となり、失敗に終わる危険性が非常に高いパターンです。
一方、プロセスとツールを上手く設計して成功した事例もあります。
富山市内のある飲食店では、「今日のお昼、何にしようか…」と迷っているビジネスマンの顧客心理(プロセス)に着目し、携帯電話のメールをツールとして利用しました。昼食を決定する11時〜11時30分の時間帯を狙って、お得なランチ情報を配信する作戦(戦術)を実施したのです。これにより「お得だから、ここにしよう」と意欲を高め、来店を促す結果となりました。
これはプロセスに合わせツールを繰り出し、お金をかけずに売上アップに成功した好事例だと思います。
◇有名な法則を参考に、顧客目線でPTを設計するのがコツ

顧客心理段階を考えるのに有効なある有名な法則をご紹介しておきます。それが「AIDMA(アイドマ)」の法則です。
広告やマーケティングの業界で長く活用されている考え方ですが、消費者が商品等を知ってから購入するまでの心理プロセスを表わしたものです。
購入への階段を上ってもらうために、どんなツールを繰り出すか、そのヒントは多くの場合、既存のお客様の中に隠されています。大切なのは「どんな理由で買ってくれているのか?」、購買までの心理プロセスを顧客目線で見直すことです。それが特定できれば、先ほどの事例のようにPT設計もしやすくなるということです。
当所地域力連携拠点事業の専門家/石橋孝史氏((株)ヒューマンサポート/取締役)に執筆のご協力をいただいています。