会報「商工とやま」平成21年12月号

経営応援コーナー
  第6回 売れない時代に売る戦略のつくり方
   〜高額商品の販売や法人営業などで役立つ、ある法則とは〜



◇買ってくれた人とそうでない人。その真ん中にいる人をどう顧客にするか?


 顧客心理に合わせて、営業プロセスを組み立て、ツールを組み立てる、これが前回ご紹介したPT設計の考え方です。

 しかし、ツールを繰り出してもなかなか顧客に接近できない…というケース、特に高額商品や法人営業の場合に多く見られると思います。金額が大きかったり、意思決定に時間がかかったりして、なかなか購入にいたらない…。関心があるのか、それとも冷やかしなのか?

 それを見極め、顧客との距離を縮めるために注意するポイントが、今回ご紹介する「YAN(ヤン)の法則」です。

 顧客には「商品購入意向がある(Yes)」層と「購入意向がない(No)」層のほかに、「欲しいけど…でも」という、あいまいな層(Ambiguous)が存在します(図2参照)。

 腕時計を欲しいが、旅行にも行きたいし語学も学びたいなど、日用品を買う場合と異なり、高額商品の購入にはこのような迷い、心理的な葛藤が付きものです。

 そのため、販売側では「買ってくれなかったからあの人はお客様ではない」と白か黒かで判断するのではなく、結果、買わずに帰ったとしても「買いたいけど、でも…(Yes But)」という見込み客なのか、「買わないがとりあえず見に来た(No But)」客なのか、つまり、どのくらい関心があるかを見極めることが、増販増客を効果的に図るうえで重要なポイントとなります。



◇一律な販促活動は非効率。関心度の高さを事前に見分けることかポイント


 買わなかったお客様が、「どのくらい関心度があるのか?」、それを図る有効な手段として利用されるのが次のような「アンケート」です(図3参照)。

 ある住宅展示場のモデルルームで行うアンケートは、次のようなチェック項目が設けられており、「詳しく話が聞きたい」と答えた方は「YesまたはYes But」、「関心がない」と答えた方は「No」と見分けることができます。これにより顧客の関心度が分かり、プロセスとツールを効果的に繰り出すことが可能となります。つまり、「関心がない」人に「詳しく話が聞きたい」人と同じような営業を仕掛けても非効率となります。そこで、メールマガジンやニュースレターなどコストが掛からない手法で対応することがより効果的です。反対に、「詳しく話が聞きたい」人に対しては、アポイントや訪問、積極的な提案が必要です。

 購入できない課題を共有し、一緒に解決してあげる姿勢を伝えることが成約率を高めます。

 石川県の住宅業者で、「YANの法則」を上手く活用した成功事例がありますのでご紹介します。同社ではアンケート結果に基づき、「家は欲しいが、マネープランに困っている」と回答されたお客様へはファイナンシャルプランナーを紹介し、また、「自由な設計を楽しめたら購入したい」というお客様には建築家を紹介するという手法をとりました。これにより「欲しいけど…でも」という、YesでもNoでもない顧客層の買わない理由を特定し関心を高めることで、受注の大幅な獲得に成功しています。

 一律にチラシを配布するといった販売促進活動は、コストの割に成果が見えにくいのが難点です。要は、顧客の関心度を把握し、それに応じたPTを設計することが、コスト効率を高め、増販増客を達成するコツの一つとなります。


当所地域力連携拠点事業の専門家/石橋孝史氏((株)ヒューマンサポート/取締役)に執筆のご協力をいただいています。


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