会報「商工とやま」平成21年12月号

特集
緊急特集!! 新型インフルエンザ大流行
従業員と会社を守る予防と対策
〜事業継続計画の策定を〜


 新型インフルエンザの感染者が県内でも急増しており、本格的な流行期にあります。小中学校や高校では感染者が多くなれば、学級・学年閉鎖や休校により感染の拡大を防ぐ措置が講じられますが、企業の従業員に感染が拡大した時には、事業活動に大きな影響が及ぶことも予想されます。

 今回は、新型インフルエンザから従業員と会社を守る予防と対策についてご紹介します。


事業活動への影響は計り知れない


 今年の春にあった第1次感染拡大期には、旅行のキャンセルやイベント・外出の自粛で、事業活動にも大きな影響が出たことは記憶に新しいと思います。

 当所は、新型インフルエンザの流行に備えて「新型インフルエンザに関する相談窓口」を設置しているのをはじめ、事業活動への影響を最小限にとどめる対策セミナーの開催、会報による情報提供などを行ってきました。

 しかし、本格的な大流行ともなれば、従業員本人や家族の感染により企業活動の停滞や、外出の抑制で売上・生産活動の低下が現実に迫ってきます。景気回復の行方が不透明なこの時期に、さらにこのような事態が重なれば、経営に計り知れない影響を及ぼすことが懸念されます。

 感染拡大などの緊急事態に遭遇した場合に、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時において事業を継続するための方法、手段などを取り決めておく計画(事業継続計画=BCP)をまとめておくことが大切です。


まず、最新の情報を入手します


 新型インフルエンザ(H1N1)とは、従来、豚が感染していた豚インフルエンザA(H1N1)ウィルスが、「人から人」へと感染できるものに変異した新型インフルエンザウィルスに感染して起こる病気のことです。新型インフルエンザは、季節性インフルエンザと類似する点、異なる点があるため、その特徴をきちんと理解しておくことが求められます。

 また、政府の新型インフルエンザ対策への取り組みや、新型インフルエンザの流行状況、医療などの公共サービスに関する正しい情報を、政府や都道府県のホームページなどから入手し、全従業員に周知しておくことが重要です。


大流行に備えて、事業継続のための運営体制を検討します


 新型インフルエンザが流行した場合、従業員の欠勤や取引先の休業、原材料の不足など、企業活動への影響が想定されます。こうした影響を最小限にとどめるために、流行時における事業運営体制などをあらかじめ検討し、事業継続計画として取りまとめておくことが重要です。

 従業員の感染防止を最優先し、発生段階に応じて複数班による交代勤務や在宅勤務などの事業運営体制に変更するなど、流行時においても代替要員を確保する事業継続計画を策定している企業は、流行のまん延期においても中核事業を一定レベル継続することができ、経営への影響を最小限にとどめることができます(図1参照)。


感染防止対策を検討します


 新型インフルエンザの場合、従業員や顧客など、人への被害が重大となります。こうした被害を軽減するために、新型インフルエンザに対応した事業継続計画の策定においては、感染防止策をしっかりと行うことが前提となります。



企業の備蓄品も確認してください


 新型インフルエンザの流行の最初の波は、2ヵ月程度と想定されていますので、できるだけ長期の備蓄を心がけます。例えば、不繊布製マスク(従業員用)、消毒薬(速乾性消毒用アルコール製剤など)、石鹸、体温計、常備薬などが考えられます。


■事業継続計画等に関するご相談・お問い合わせ先   当所中小企業支援部 TEL:076-423-1171


●事業継続計画策定のポイントは


 新型インフルエンザの流行時に、「どの事業を継続しなければならないのか」や「縮小や休止が可能な事業は何か」など、事前に自社の事業を分析しておきます。

・業種によっては、事業の継続を要請されたり、事業の自粛を要請されることがあります。

・限られた経営資源の中で継続すべき事業を、売上高、取引関係、将来展望などの観点から検討し、具体的に特定します。

・受注の維持、部品や原材料の確保、在庫管理、出荷のための輸送手段の確保、支払・決済手段の確保など、中核事業を継続するために必要な業務を確認します。

・中核事業を継続するための業務を遂行するために必要な資源(人、物、金、情報など)を洗い出します。

・国や都道府県の発生段階ごとの宣言を参考に、事業の縮小・休止や再開・復帰のタイミングについても考えておきます。
 そして、継続をしなければならない事業については、その継続手段を検討し、計画に取りまとめておきます。

・新型インフルエンザによる事業リスクが顕在化し、通常の営業収入が確保できなくなる場合に備えて、有事の期間に発生する費用(従業員の給与、建物の賃借料など)を概算し、これをまかなうために必要な資金を確保する方策を検討します。新型インフルエンザの場合は、通常の状態に戻るまでの間の運転資金を確保することがより重要です。

・事業継続のための対策として、必要な要員の確保が最も重要です。要員を確保する方策として、@複数班による交替勤務、A在宅勤務、Bクロストレーニング(同一の業務について複数の従業員が習熟しておくこと)などの実施が考えられます。取引先などの連携が必要な場合は、あらかじめ取引先の生産計画や事業継続計画を確認しておきます。

・感染防止対策を検討します(次項に詳細)。

・事業継続計画を策定していても、従業員が事業継続計画の内容を理解していなければ、緊急時に機能しません。策定した計画の内容を従業員に周知・徹底しておくことが重要です。

・また、策定した事業継続計画が前提としていること(事業内容や新型インフルエンザの特性など)が変わってしまった場合には、いざという時に役立ちません。策定した事業継続計画が現時点の状況に適合しているかを随時確認し、必要な見直しを行う必要があります。



○関連情報の入手先
●新型インフルエンザに関する情報
厚生労働省「新型インフルエンザ対策関連情報」
富山県「新型インフルエンザ関連情報」
 
●事業継続計画に関する情報
中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針を用いた新型インフルエンザ対策のためのBCP策定指針」
中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」(2006年2月20日)




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