会報「商工とやま」平成21年8・9月号

特集2
自店を客観的に知ることで、進むべき道が見えてくる。 固定観念の殻を破り、お客様目線でサービス改善へ。 地域力連携拠点事業 事例紹介(2)



 当所では、経営力の向上(経営革新、IT活用)、創業・再チャレンジ、地域資源活用、農商工連携、事業継承など、事業所の皆さんの様々な悩みを各分野の専門家がバックアップする「地域力連携拠点事業」を行っています。

 今回は、昨年の「知的資産経営」実践セミナーを受講された「トラットリア ヴィバ ラ ヴィータ」代表の牧谷政睦さんにお話を伺いました。

本場で学んだ北イタリアの郷土料理


 牧谷さんは平成14年に、呉羽にイタリア料理店「トラットリア ヴィバ ラ ヴィータ」をオープン。その後、平成19年に、現在の安田町へとお店を移転しました。

 独立前、牧谷さんは市内のイタリア料理店などに勤務し、その後、約1年半、本場イタリアで料理修行。現地で、地場の農業や伝統食を大切にし、その土地ならではの豊かな食を提供する「アグリツーリズモ」(日本ではグリーンツーリズム)の取り組みに触れ、感銘を受けます。いずれは富山でも、地元の穫れたての野菜などを使う地域密着型のレストランを営みたいという希望を胸に、自分のお店を呉羽にオープンしました。

 現在の安田町のお店も、イタリアの農家風の内装となっていて、富山ではまだあまり知られていない北イタリアの郷土料理やワインを、気取らない雰囲気の中で堪能することができます。また、実家のご両親が作る穫れたての野菜がメニューに登場することもあるそうです。



問題点がわからないという悩み


 呉羽から移転して1年あまり。牧谷さんは当所の記帳継続指導を受けたのをきっかけに、地域力連携拠点事業「知的資産経営」実践セミナー(平成20年8月20日〜9月24日までの5回シリーズ)を受講することにしました。どんなに一所懸命仕事をしても、それがなかなか結果に結びつかず、しかも、どうして結果に結びつかないのか、牧谷さんはその問題点自体が分からずに悩んでいたのです。

 セミナーで様々な視点で自店を見つめ直すことを教わり、受講後、専門家派遣の無料サービスを利用して専門家からアドバイスを受けました。そして、まずは現状分析のためにアンケートを実施しました。これによって、牧谷さんの考えは大きく変わっていくことになります。



固定観念を覆す結果に


 「最初は、アンケートに対する抵抗が少しあったのですが、実際に実施してみると、お客様の声をダイレクトに伺うことができ、自分たちに欠けていたことがたくさん見えてきました。何より、アンケート結果で驚いたのは、お客様のことをあまり知らなかったということ。それまでは、常連のお客様中心のお店という意識があったのですが、実は高い割合で、初来店の方が多かったんです」。

 独立してから約7年、ある程度お客様に認知され、常連さんが多い店だと考えていた牧谷さんの固定観念を大きく覆す結果となりました。そこで、初来店のお客様にも喜んでいただける分かりやすいサービスや、はずれなく注文いただけるメニューの必要性を感じるようになり、様々な対策がとられていきました。



初の販売促進をスタート


 昨年の11月からは季節ごとのおすすめメニューを中心にしたフェアを開催し、アンケートに回答したお客様にフェアのチラシが入ったDMの定期発送をスタート。これは同店にとっては、お客様に積極的にアプローチする、初の販売促進となりました。

 さらに、そのDMに同封したチラシには、以前から行っていた、記念日のお花とデザートのサービスも改めて掲載しアピールしたところ、お客様の認知度が高まり、さっそく利用者が増えていったのです。

 「お花のサービスをインターネットの口コミサイト『食べログ』などに書き込みされているお客様もあり、当店ならではのサービスをしっかりアピールすることで、新規のお客様、常連のお客様の両方に喜んでいただけるということを実感しました。今後も繰り返していくことで、お客様との見えない糸を、さらに太くしていけたらと考えています」。



お客様の視点に立ったサービスへ


 セミナーを受けて一番変わったのは「自分のお店を客観視できるようになったこと。そして、お客様の視点に立ったサービスを考えるようになったこと」と話す牧谷さん。

 「どちらかと言えば、以前はあれを食べてほしい、これを食べてほしいというこちらの思いが先だったのですが、いまでは、お客様が何を求めていらっしゃるのかということを真剣に考えるようになりました。その中で自分たちのコンセプトがどう整合されていくべきなのかを考えることが大事だと感じています」。

 牧谷さんは専門家派遣の無料サービス終了後も、独自に契約を結び、引き続き専門家から指導を受けています。そして、今年の4月には、特典サービスが受けられる会員カードを発行。さらに6月からはメニュー表も刷新するなど、多くの点で改善が進められています。

 それまでのメニュー表は文字だけのもので、初来店のお客様に分かりづらいものでした。新しいメニュー表では、キャッチや写真、料理についてのコメントを大幅に増やすなど、非常に分かりやすいものとなっています。

 さらに、黒板メニューも、以前よりも数を絞り込み、初来店の方にもおすすめのメニューがすぐに分かるものへと工夫されました。



意識の大きな変化


 昨年から牧谷さんは、新たに調理スタッフを採用し、ご自身は主にホールでのサービスにあたるようになりました。余裕ができたことで、お客様へのサービスの思いもさらに変化していったといいます。

 「料理がおいしいことはもちろんですが、お客様に和んでいただくための料理であるということを何より大切に、そのタイミングやさりげないサービスといったものを強く意識するようになりました。

 それは、アンケートに書かれていた『スタッフの方の笑顔がステキですね』とか、『来るたびに気持ちよく帰れます』などのお客様の声も大きく影響しています。スタッフみんなが楽しく仕事をしていると、自然に笑顔になり、それが、お客様にも伝わります。スタッフの笑顔が自然に生まれるような、その人の良さを全面に出せるような環境づくりも、お客様への重要なサービスであり、お店づくりではとても大切なことなのだと思うようになりました」。

 外からの視点によって視野が広くなり固定観念が破られ、大きな意識改革がお店の雰囲気をも変えました。「お店づくりを一から再構築していくことができた1年だった」と振り返ります。

 いまでは、他業種の方からのアドバイスや話も、すっと受け入れられるようになり、より共感できるようになったと、その成果を語ります。

 専門家のアドバイスをもとに、客観的な視点から自店の「常識」を改めて見つめ直した牧谷さん。問題点を明らかにすることによって、本当の実態に合った、より効果的なサービスへの道筋が、はっきりと見えてきたようです。



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 不況の中、売り上げ減や新規顧客の獲得など、さまざまな悩みを抱えている経営者の皆さんのために、当所では各種相談会やセミナーを開催しています。

 経験豊富な専門家が、実践に基づいたより効率的な改善・解決策をアドバイスいたします。一度、気軽に相談してみてはいかがでしょうか。



事業所紹介
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富山市安田町3−14 TEL:076-413-7166 P5台
URL http://www.ric.hi-ho.ne.jp/viva-la-vita/
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