◇売上増加の取り組みをカタチに残すことで得られる3つの効果

これまでの連載の中でご紹介した手法によって、売上増加を成功させた事例が多くある一方、取り組み自体に夢中になってしまい、その場限りで終わるケースも見られます。
最終回は、そんな一度の成功で終わらせない、継続的な成長のためのポイントについてご説明します。
私達は、売上増加の取り組みを必ず「企画書」に残しています。企画書が難しいという方には、ワンシートでも何でもいいので「カタチに残してください」とお伝えしています。
紙に残しても売上は上がらない。そうした指摘もありますが、このカタチに残す行為は成長を後押しする大きな効果が3つあります(図1)。
@先ずは、取り組みの内容をコンパクトに伝えることが可能になることです。会議で全員を集め、口頭で伝えていては多くの時間が浪費され、組織の生産性が落ちてしまいます。
A次に、タタキ台があると着想が生まれやすい点です。何事もゼロから考えるのは大変ですが、メモや企画書をヒントにすれば、アイデアが刺激され、新しい切り口が生まれやすくなることは学術的にも証明されています。
B最後は、成功・失敗の要因が可視化され、次の一手が打ちやすくなることです。流行りの言葉を借りれば「見える化」です。医師がレントゲンなどを使って患部を特定するように、商品の魅力が原因か、営業力なのか、問題点を具体的に特定できれば打つ手も早く、的確に手術できます。
大切なのは個々の成功ではなく、次の成長、組織全体の力に変えることであり、問題点や要因を共有することです。その為にも、企画書やカタチに残すことは、シンプルなようですが「見える化」の非常に重要な要素と言えます。
「見える化」の取り組みを次に繋げる。見直すポイントは…
取り組みの後は、それを次に繋げる検証のプロセスが欠かせません。
しかし「どこを検証したら良いのか分からない」とよく聞かれます。
確かに全て検証していたら大仕事となります。
そこで、効率よく検証するためのポイントが図2にある項目です。中でも重要なのは「コンセプトとターゲットが整合しているか?」という点です。
狙う顧客に対して「こんなの待っていた!」と思わせる価値を提供できなければ、いくら営業の強化を図り、チラシを数多く配布しても多くの反応を期待するのは難しくなります。
そのためには「観察→着眼→調査→構想」というプロセスのもと他社にはない強みを構築し、ターゲットに投げかけていくことがこれまで以上に求められています。
また、ヒットしている企業や事例がどうなっているか、コンセプトやターゲットという切り口などを着眼点に、観察や分析を行うと、自社の売上増加のヒントが必ず得られると思います。
是非この連載で紹介した情報を参考に、不況に勝ち抜く取り組みを実践いただければ幸いです。
≪■図2≫
●コンセプトとターゲットは整合しているか。そうでない場合、どちら(または双方)をどんな風に見直せばよいか。
●PTの設計はどうか。壁はどこにあるのか。壁にどんな小刻みな階段を繰り出せば、スムーズに階段を登れるか。
●組み込むツールが妥当か。修正は必要ないか。作業・予算的に現実的か。またセールストークなど見えないツールはどう共有するか。
●戦略に対して目標と期限は正しいか。達成可能か。事業全体の目標とズレがないか。
当所地域力連携拠点事業の専門家/石橋孝史氏((株)ヒューマンサポート/取締役)に執筆のご協力をいただいています。