会報「商工とやま」平成23年1月号

年頭所感 
 会員の皆様の声に耳を傾け
 共に悩み、知恵を出し、力を合わせて地域活性化の原動力となる

 富山商工会議所 会 頭 犬島 伸一郎

 平成23年の新春を迎えるにあたり、謹んで新年のお慶びを申し上げますとともに、会員の皆様のご健勝とご多幸を心からお祈り申し上げます。

 わが国経済は、一昨年に発生した米国の金融危機に端を発した景気の急速な落ち込みから、一旦回復基調に転じたと見られていました。しかしながら、昨年8月に入り急激な円高と景気後退による株価の低迷のなかで、個人消費の冷え込み・デフレの進行や国内産業の空洞化、雇用情勢の悪化、環境問題への対応など企業にとって厳しい状況が続き、地域の中小・小規模企業を取り巻く経営環境は大変に厳しいものがあります。

 また、昨年6月には鳩山内閣が退陣し、替って菅内閣が誕生しましたが、東アジア諸国など、とりわけ経済発展が著しい中国などに隣接する日本は、経済のみならず政治的にも大きな転換期に差し掛かっていると思われます。

 富山地域では医薬品など比較的持続力のある一部の業種を除き、景気の底ばい状態が長期化しており、全体的には未だ明るい兆しが感じられないことから、地域経済は引き続き厳しい状況が続いております。

 このような時期にあってこそ、商工会議所は地域の総合経済団体としての使命である「地域商工業の発展と社会福祉の増進」という原点に立ち返り、必死に頑張っている中小・小規模企業の方々を支援する活動に軸足を置き、自らも率先して原動力となり経営革新の推進や雇用の創出・拡大等につなげ、活力ある地域社会の創造に向けて、全力を尽くしてまいりたいと考えておりますので、よろしくご支援のほどお願いいたします。

 当地域では、経営環境の先行き不透明感もあり、新卒採用を含めた雇用環境の改善が見られないことから、昨年度に引き続き富山県の「県内企業人材養成モデル開発事業」を受託し、新規学卒未内定者等の求職者に対し、業種に応じた人材を養成し、正規雇用につなげる事業に取り組んでまいります。

 また、地域の中小企業の皆様が直面する経営、金融、税務、労務、法律などの専門家による相談支援体制の充実を図るほか、地域や業界の代表である小規模企業振興委員との連携の強化に努めるとともに、小規模企業等の巡回訪問を徹底し、きめ細かな経営相談を行ってまいります。

 他方、会員として当所に入会されて間もない皆様に商工会議所をより身近に活用していただくため、会員企業間の交流やビジネチャンスを提供する「新入会員の集い」を今年も開催し、商工会議所の各種サービス事業を紹介するとともに、新入会員の方々の相互の交流を促進してまいります。

 当所が平成18年度からスタートさせた「とやまビジネスドラフト」は、さらに対象エリアを拡大し、北陸三県の商工会議所・商工会が連携した「北陸三県縦断ビジネスチャンス創出プロジェクト」を昨年8月に金沢市で、11月には福井市で実施し、あわせて500件近い商談が行われ、会員企業同士のビジネスチャンスの拡大を図りました。平成23年3月には富山市での開催を予定しており、多くの会員企業にご参加をいただきたいと思っています。

 加えて、東海北陸自動車道の全線開通後、愛知・富山両県が経済的な結びつきが広がったことから、「会員ビジネス交流会in名古屋」にも昨年初めて参加しました。今後とも、より広範な会員企業の新規顧客発掘と販路開拓等に寄与してまいりたいと考えています。

 明治13年に誕生した当所は、昨年6月に創立130周年を迎えました。先人の知恵と努力、我々を育んでくれた地域に対する感謝の気持ちを改めて確認するとともに、これからの富山の「地域づくり」「人づくり」「産業づくり」に富山県・富山市をはじめ行政当局、関係団体とも連携を深めながら、間断なき努力を重ねてまいりますので、今後とも一層のご支援ご協力をお願い申し上げます。

 最後になりますが、新しい年が会員の皆様ならびに関係各位にとりまして希望に満ちた飛躍の年となりますことをお祈り申し上げまして、私の年頭の挨拶といたします。



年頭所感 
 『個が光るイノベーション』で日本経済復活の礎を

 日本商工会議所 会 頭 岡村  正

 平成23年の新春を迎え、謹んでお慶び申しあげます。

◆中小企業の活力強化で真の成長実現へ

 世界経済は先進国において回復の動きが緩慢なものの、多くの新興国では内需の拡大が続いており、総じて緩やかな回復傾向にあると言えます。一方、日本経済は、昨年前半に持ち直しの動きが見られたものの、現在は足踏み状態が続いています。今後、景気の持ち直しが期待されるものの、デフレの影響に加え、依然として高い為替水準など、先行きの不透明感は払しょくできておりません。

 こうした中、日本経済が自律的な景気回復を果たし、持続的な成長を実現するには、政府が策定した「新成長戦略」の具体化に、官民一体でスピード感を持って取り組むことが重要です。中でも、地域経済と雇用を支える中小企業の活力強化なくして、真の成長実現はあり得ないと考えています。私は、新成長戦略実現会議などの場を通じて、中小企業を「新成長戦略」実現の中核的な担い手として位置づけ、中小企業が参画できるより多くのプロジェクトが具現化されるよう働き掛けてまいる所存であります。


◆勇気を持ってイノベーションに挑戦を

 さて、私は、昨年11月に会員各位のご推挙をいただき、引き続き日本商工会議所会頭の任を務めさせていただくことになりました。中小企業の活力強化と地域経済の活性化という商工会議所の不変的な使命の下、「企業、地域、そして社会から、より多くの支持と信頼が得られる商工会議所」を具現すべく、全国の商工会議所の皆様の先頭に立って全力でまい進する所存です。

 特に、グローバル化の進展に伴う世界経済の構造変革の中で、地域や企業が潮流変化に的確に対応すべく、勇気を持ってイノベーションに挑戦するための取り組みに注力してまいりたいと考えております。


◆商工会議所運営の3つの基本方針

 地域経済の活性化や中小企業の活力強化に向けては、商工会議所自らが、これまで以上に取り組みを強化・推進することも重要であります。このため、私は再任にあたり、商工会議所の運営について、3つの基本方針を示させていただきました。

 第一は、現場主義の徹底です。私は会頭就任以来、「現場に立脚した活動こそが、商工会議所の『原点』であるとともに、『強み』である」と考え、可能な限り各地を訪れ地域の実情を直接伺い、意見交換することに努めて参りました。

 地域経済の活性化を実のあるものに具現するためには、この地域をどのような形にするのか、という「ビジョン」を、企業・市民・行政が共有しなければなりません。商工会議所が地域の核として先頭に立ち、コーディネーターの役割を果たす必要があり、そのためにも、地道な「全会員訪問」活動を通して、「現場の生の声」を意識していきたいと存じます。

 第二は、潮流変化に対峙するイノベーションの推進です。世界的な潮流変化の波が押し寄せる中、中小企業は生き残りを懸けてイノベーションに取り組まなければならない時代を迎えています。

 世界経済の一体化が進む中、中小企業も積極的に海外展開を図っていくことが求められています。日商では昨年を「国際化元年」と位置付けて、APEC中小企業サミットの主催等をはじめ、さまざまな取り組みを進めてまいりました。本年は「中小企業国際化支援特別委員会」を中核として、商工会議所のグローバルネットワーク化を進め、会員企業や地域の国際化への取り組み支援を強化していく所存です。

 また、市場競争力を強化するためには、生産性向上が不可欠であります。ITを戦略的に活用し、具体的な業務改革に結び付けるべく、「IT経営推進専門委員会」を新設致しました。この委員会を中心に、本格的なIT経営導入とさらなるイノベーションを促進させたいと考えております。

 基本方針の第三は、商工会議所自身の「組織イノベーション」です。商工会議所自らも活動理念や組織のあり方を見直し、潮流変化に対応する態勢を整えていかなければなりません。日本商工会議所と各地商工会議所のネットワークをより強固なものとし、広域連携や農商工連携など、商工会議所の連携活動をさらに進めてまいります。

 本年は第28期の実質的なスタートの年であります。これら基本方針に沿った取り組みを鋭意進めるとともに、着実な成果の積み重ねに努めてまいる所存です。同時に、大きな潮流変化に直面している時代だからこそ、商工会議所の原点に立ち返る必要があります。「商工業者の声を集約し社会に訴える」という渋沢栄一翁の思いを堅持し、日本経済の礎を築くべく、「個が光るイノベーション」の推進に注力していきたいと考えます。

 結びに、皆様のご発展とご健勝をお祈り申しあげますとともに、商工会議所活動に対する一層のご理解とご協力を心からお願い申しあげまして、年頭のごあいさつといたします。


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