会報「商工とやま」平成24年1月号

新春座談会
いよいよ来るぞ! 北陸新幹線
 〜北陸新幹線で元気な富山をつくる〜


  出席者/金尾副会頭  近藤副会頭  中井副会頭  河上副会頭  小室専務理事(司会)


 平成26年度末の開業を目指し、工事が着々と進められている北陸新幹線。今、私たちは何をすべきか。それは、3年後の開業時、10年、20年先の富山の「ありたい姿」をどう描くか、にかかっています。
 そこで本誌では、「いよいよ来るぞ! 北陸新幹線〜北陸新幹線で元気な富山をつくる〜」と題し、新春座談会を開催しましたので、その概要をご紹介します。


●小室 今日は北陸新幹線というテーマで、皆さんのお考えを自由にお話しいただきたいと思います。
 はじめに、40年来の要望がようやく確実になりつつあるということですが、それぞれの業界等においては、北陸新幹線の開業をどのように受け止めていらっしゃるでしょうか。



出先事業所に引き上げの動き


●中井 通過駅になってしまうのではないかなど、不安感はたくさんありますが、中でも東京をはじめ県外へのストロー現象や、富山市内にある出先機関が引き上げていくという空洞化も心配です。新幹線が開業して都市の中心部が空洞化した事例は多いですから、県外への流出に対する備えを今からしっかりしていかなければならないと思います。

●金尾 一般的に一番のメリットは、2時間余りで東京へ行ける、あるいは東京から富山へ来られるということです。また、距離が近くなれば中央からの出先機関、あるいは大手企業の出張所をわざわざ富山に構えている必要がなくなって、出張ベースでやれるからと、撤退していく企業もあると聞きます。
 これからの問題は、関東圏から北陸へいかに来ていただくかについて、真剣な取り組みが必要だと思います。

●河上 新幹線に関連しなくても、一般的な経済の停滞感によって、企業の出張所の引き上げという話は、商売をしていてよく聞きます。
 特に建設関係の商社では、以前は現地に出先の事務所を持たなければなかなか仕事がもらえないということもありましたが、今ではそういう「縛り」も緩くなり、出先事務所の引き上げもかなり進んできているのは事実です。新幹線の開業で、日帰り出張が可能なエリアがさらに広がるので、引き上げがもう一歩進むような気がしています。


●小室 特に建設業は、地元に事業所を構えていないとなかなか入札に参加できないという事情はあるのでしょうか。

●近藤 富山県内でも、富山市などは「主たる営業所」を市内に有していないところは、WTO(※注1)案件以外は基本的には入札に参加できないことになっています。ですから、私どもも高岡市や射水市、黒部市などの仕事にはなかなか入れないのです。
 ただ、県の場合は新幹線や能越自動車道などの工事で10億円を超えると、主たる営業所がなくても大手企業が入ってこられるようになっていますが、そういう案件は非常に少ないです。ですから、われわれの業界だけで見ると、新幹線が来たから営業所などを引き上げるということは少ないと思います。
 現実に今、飛行機も東京に1日6便飛んでおり、それを利用した多くのビジネス客が往来しているわけですから、新幹線が開業したからいっぺんにどうなるということはないと思います。
(注1)WTO=世界貿易機関(World Trade Organization)、自由貿易促進を主たる目的として創設された国際機関で、日本をはじめ150を超える国が加盟している。本部はスイス・ジュネーブ。


もっと富山をアピールしよう


●小室 商工会議所でも若手職員を中心にプロジェクトチームを作って、先進事例をヒアリングしたり、県内外の企業経営者や社員等を対象にアンケートを実施したりしたのですが、富山が知られていないというのがはっきりしています。

●近藤 私もストロー現象を心配している一人ですが、ただ心配をしているだけでは問題は解決しないので、富山のいいものを今からどんどん作っていって、PRしないといけないと思います。
 NHKが朝のドラマで放送した「おひさま」の舞台になった安曇野へ行ってきたのですが、お客さんがたくさん来ていました。テレビドラマや映画に取り上げられると、すごい集客効果があるということを実感しました。
 今、富山を舞台にした映画「RAILWAYS」が全国で上映されていますが、あの美しい風景で全国の人から富山県全体を評価してもらえると期待しています。

●河上 県では東京の山手線でラッピング電車を走らせていますよね。お金もかかるのでしょうが、これからああいうことをもっと大々的にやって、富山をアピールしていかなければいけないと思います。

●近藤 県外のお客様などから「どこかいいとこありますか?」と聞かれると、「富山ちゃ、なーもないちゃ」と言ってしまうのではなく、もっと積極的に富山のいいところを掘り起こしていかないといけないと思いますね。
 ただ、関東方面から来る人が富山を通過して、金沢に行ってしまうのではないかと心配です。富山がどこにあるかを知らない人は結構いますからね。

●金尾 特に県外の方には、富山は特徴をつかみ難いエリアの一つになっていると思います。首都圏の皆さんが富山に行ってみたいと思ってもらうには、このエリアの特色をもう少し絞ってアピールしていくことが大事だと思います。
 今は富山を通過して金沢などで泊まる方が多いので、富山の良さは滞在することによって分かるというイメージづくりがとても大事だと思うのです。その点では、立山が大いに役立つと思います。
 立山山麓が森林セラピーの拠点エリアとしてNPO法人から認定を受けたと聞きました。薬都富山のイメージも大事にしながら、癒しのエリアとしてのイメージを訴えていくことも、一つの方法かなと感じています。

●小室 確かに、長野の善光寺や松本の松本城、高山のまち、金沢の兼六園などのように全国にアピールできる観光資源が富山市には少ないですね。しかし、観光名所巡りの旅行よりも、富山は豊かな自然とおいしい食をもっとアピールしていけばいいのかなとも思います。

●近藤 この間、全国建設業協会の北陸ブロック会議が富山市内で開かれ、全建の会長をはじめ、国交省や北陸地方整備局、関係団体幹部の皆さんが大勢出席しておられました。
 宇奈月ビールの社長でもある、大高建設の大橋社長が地ビールを提供してくれましたので、開宴のあいさつで私はその地ビールを持って「これは宇奈月ビールという地ビールです。ぜひ賞味してください」と皆さんに紹介したところ、非常に好評でした。
 ですから、そういうチャンスがあるときには、富山にはこんないいものがあるというPRをもっと取り入ればいいと思います。私は、富山にはそういう隠れたいいものがもっともっとあるという気がするのです。

●中井 観光に関心がないというのでこんな話があります。この間、奈良へ行った時、友人に「せっかく奈良へ来たんだから、大仏案内してよ」と言ったところ、「おれ、実は一回も行ったことないのよ」と答えるのです。だけど「いいついでだから」と案内してもらいました。
 富山にいながら立山に登らないのと一緒で、いつでも行けると思ったら、意外と行かないものです。
 しかし、地元の人が地元のことをもっと誇りに思って話していくようにすれば、観光はもっとつながります。ほかの人にいろいろ指図するよりも、自らが富山のすばらしさを伝えていかなければならないと、自分も体験して思ったわけです。


線から面へ、2次交通の整備を


●近藤 富山商工会議所から富山市への要望にありましたが、2次交通の問題点として、新幹線で富山に着いた後、どのように移動すればよいかの案内や、移動する手段がないので、行きたい所へすっと行けない。こういう課題も解決していかなければいけないですね。

●河上 北陸新幹線を中心にした2次交通の整備はやはり大きな課題だと思います。  新幹線の駅ができれば、駅の周辺の再開発を含めて大変栄えるということはあります。しかし、それだけではなくて、次の2次交通を含めて、そこからどういう手段でどこに行けばどういう交通になっているかをもっと明らかにして、駅に看板などをしっかり立てて、案内することが必要だと思います。また、富山空港に駐車場が確保されていることも、飛行機の利用者増につながっています。ですから、ある程度の広域観光を考えるときに、レンタカーや駐車場の問題などをきちっと整備するべきだと思います。

●中井 私は10日前に飛行機で青森に行ってきました。うちの担当者は新幹線でしたが、津軽平野は広いので2次交通としてレンタカーを借りて、効率的に仕事ができたのです。富山も新幹線が開業したときに、レンタカーの整備も必要だと実感を得てきました。

●河上 富山は立山周辺の北アルプス全体の都市との連携を深めていく必要があります。今度、高山に向けて高規格道路もできるし、高山線の特急列車を利用すれば、東京からいらっしゃる場合、名古屋から高山に入る時間より、東京から富山へ来て、富山から高山へ入る方が早いと思います。そこは、向こうの商工会議所といろいろな形で連携する必要がありますね。

●近藤 現実に高山の人たちは、名古屋に行かないで、富山空港から飛行機を利用されているのです。北陸新幹線が通れば東京への運行本数も多くなるし、輸送量も格段に増えるので、高山や旧古川町の人たちはどんどん富山の方へ来てもらえると思います。逆に富山からも高山へお客さんが入り込んでいくという流れを作ってあげるといいのです。
●中井 九州は新幹線で一体化したなどと言っていますが、それは一部の県だけの話です。
 北陸新幹線の場合、富山だけ良ければいいというのではなく、全部つながって線から面になっていけば、大きな効果を生み出すはずですよ。

●近藤 九州の建設協会の会長さんがおっしゃったのは「九州でも新幹線の止まるまちでは2次交通の整備が進んでおり、新幹線が止まらず整備が進まないまちとでは、ものすごく格差が出てきている」ということでした。ですから、やはり2次交通は面的に、各地と連携して整備を進めることが重要だと思います。


金沢への特急接続は連絡快速で


●小室 富山へどっと人が来てくれれば、商業施設なども整ってくるし、商売も何とかやっていけるということですが、「それではどっちが先か」と言えば、初めはある程度行政主導型で、少しずつ変えていく努力が必要なのだろうと思います。

●金尾 ポートラムがセントラムと一緒になって、駅の南北間交通の一体化が早く進んでくれることも、大きな弾みになると期待しています。

●近藤 路面電車が地鉄の立山線に乗り入れるという話を聞いたことがあります。LRT型の電車が田園地帯を走るという情景を想像すると夢がありますね。そういうものができれば、人の往来が多くなると思いますが、30分や1時間に1本の運行ではなく、ポートラムのように高頻度の運行で利便性を高めれば、もっと多くの利用が見込めると思います。

●河上 夢のような話ですが、今のライトレールが富山県内中を走る形ができればいいですね。高岡から能登へ行く道もあれば、五箇山方面のルートもありますから。

●小室 北陸新幹線が開業したときに、関西方面へは金沢から在来線の特急に乗り換えなければならないとすると、例えば「サンダーバード」や「しらさぎ」の時刻に合わせて富山や魚津から連絡快速列車をどんどん出せば、第三セクターでもお客さんが確保できると考えられます。
 また、列車を乗り換えるときに、いちいち階段を昇り降りしてホームを移るのではなく、連絡快速が到着した同じホームの向かい側から在来線の特急に乗れるような工夫を是非やって欲しいものです。

●近藤 関西方面へは、せっかく「サンダーバード」が走っているのに、それをうまく利用できないのは残念な話です。逆に、関西から来る人にとっても、特急が金沢で終点になっているから、富山まで行きたいと思ってもなかなかその手段がない。これはなかなか難しい問題です。
 今、東京の方を向いた話ばかりしていますが、関西や中京方面のアクセスが非常に悪くなることにも、きちっとした対策が必要です。


サービスをセットで提供


●中井 私が、新幹線ができて描くイメージは、例えば夏場のゴルフは涼しい所でできるようになるということです。東海北陸自動車道ができたおかげで暑い夏の時期でも岐阜県の荘川で快適にゴルフができました。
 交通網が充実して利便性が高まれば、富山県内の企業や観光産業はそれだけ努力しなければならないのです。特に温泉地などは商店街と同様に、差別化が顕著になると思います。

●近藤 私もこの間、荘川へゴルフに行きました。あそこは今、コテージに家族で泊まって、周辺の探索などができるような、滞在型のリゾート地になっていて、人気を集めているそうです。
 最近は家族で旅行すると、孫などはどこかに遊びにいって、私らはゴルフをするというふうに、日中はみんなばらばらに行動して、夜は泊まる所へ集合して食事をする。
 ですから、立山山麓にもコテージやバンガローがありますが、近辺のゴルフ場とは少し距離があるので、これらをマッチングさせられれば、有効に使えるのではないかという感じがします。

●中井 そのとおりで、要するにつながりが必要なのです。
 例えば、軽井沢や蓼科などのリゾート地では、コスト面の魅力と満足度とアクセスのよさが揃っていますから。

●近藤 だからこそリピーターが多いのです。やはりリピートさせるような仕組みを作っていかないといけないのです。しかも、軽井沢は東京と富山のちょうど真ん中で、東京からも富山からも1時間ちょっとくらいで、便利になりますよ。

●中井 軽井沢でもそういうセットが昔からあったのではないのです。昔は産業をやれ、農業をやれという土壌があって、レジャーやゆとりはあまり考えなかった所ですからね。富山でもまずそこを根本的に変えないと、うまくいかないと思います。

●河上 この間、カナダへ行ったときに、カナディアン・ロッキーにしても、氷河を見にいくとか、湖がきれいだという観光は、リーマン・ショック以来、客数が落ちてきており、これからは癒し的な、特に滞在型観光やアクティビティなものや環境など、いろいろなものを取り混ぜて集客を図っていかなければならないという話を聞きました。

●小室 最近の観光というと、日常生活の中での癒しを求めるとか、ちょっとおいしいものを食べに出掛ける、そしてこれがいいから年に何回か行こうかという話になるわけですね。富山もそういうことがアピールできるようにしないといけないわけですね。


京都から入るか、大阪から入るか


●金尾 そろそろ北陸新幹線の敦賀以西のルートの選定にかかると聞いていますが、これも富山にとって大きな関心事だと思います。金沢から敦賀までの着工時期だけではなくて、特に京都、大阪へどういうルートで入るのかがポイントです。
 例えば外国の方が大阪から入ってきて、京都を観光した後に北陸エリアへ向かう場合、京都からストレートに入ってくるのと、いったん大阪へ戻って、そこから新幹線利用で北陸エリアに入ってくるのとでは、相当印象の違いがあると思います。
 富山としては、小浜ルートで京都へ入ってくれればいいのですが、京都を外して直接大阪に接続ということになると、どうでしょうか。

●近藤 私はこの間、広島へ「サンダーバード」と新幹線で行ったのですが、広島駅では、福岡方面と大阪方面の両方の車両が通過しますから、16両編成の列車がラッシュ時の山手線くらいの間隔で走っていました。本当にびっくりしました。
 山陽新幹線の時刻表を一度見てください。すごい数の列車が走っていますよ。その多くが一番速い「のぞみ」で、その間に「ひかり」や「こだま」は、1時間に合わせて2本くらいしか走っていません。それを見ると、先ほど言われた米原ルートから京都や大阪へ向かうダイヤを組める状況ではないと思うのです。

●金尾 富山空港を利用して海外から来た人たちが、新幹線を使って、関西方面に向かうことを想定した場合でも、利便性の高いルートを考えていくことが大切だと思います。

●小室 北陸新幹線だからといって、北陸の人間が地元のことだけを議論していればいいという話とは全然違うということですよね。

●中井 海外のお客様、特に中国や台湾からのお客様にいかに来てもらえるかです。海外からのお客様が、富山を起点に新幹線で東京へ行く観光ルートを構築するなど、国際化をどんどん進めて欲しいと思います。

●金尾 従来から繁栄している都市は必ず交通の要衝にある地なので、高山方面を含めて、交通の結節点としての富山をどうやって維持していくかは、重要なテーマだと思います。
 交通手段別に交通の要衝としての情報発信をこれからどんどんやっていかないと、新幹線が大変なデメリットになってしまう可能性があると思うのです。


企業誘致で交流人口を増加


●小室 もっと交流人口を増やすために、富山への企業誘致を大々的にやっていくという発想もありますね。

●中井 交流人口の増加ということから言うと、富山はいろいろな工業が非常に整っていて、一日に6便もある羽田―富山便はほぼ満席というくらいにサラリーマンや技術者などが富山を訪れています。北陸新幹線が開業すれば、飛行機から新幹線への乗り換えも起きて、人の流れが大きく変わると思います。

●近藤 新幹線は1回当たりの輸送量が全然違いますよね。それと、天候にあまり左右されない。私も東京へ月に何回か行くのに、飛行機を使ったり、JRを使ったりしていますが、「はくたか」で越後湯沢で乗り換えて上越新幹線に乗る、あるいは逆の使い方をしたときに、越後湯沢で降りられる人の数がものすごく多いわけです。
 北陸新幹線の開業が、ビジネス客をはじめ人々の往来に大きな影響を及ぼすことは間違いないと思います。

●河上 やはり北陸新幹線が開業すれば都会から近くなるのだから、もっと企業を誘致して、そこに住んでいただける定住人口を増やすことも必要だと思うのです。そのときには、こういう時期、震災の問題や自然災害の問題も出ていますから、災害からのリスクを回避する意味から重化学工業の誘致もチャンスだと思うのです。
 また、県内の大学で行っている研究や先端技術などともお互いに提携して、もっと幅広く企業にPRする必要があるのではないかと思っています。

●近藤 3月の大震災を受けて、いずれ起こるであろうと言われている太平洋側の地震や津波災害によって東海道新幹線の機能がマヒした場合の代替路線として、北陸ルートの重要性が今また考え直されてきていることをチャンスとして捉まえないと、いつまでも待っているわけにいきません。
 九州新幹線が鹿児島までつながったというのは、「鹿児島から着手したことをチャンスと捉えて各方面に働きかけた結果、一本につながざるを得なくなったからですよ」と鹿児島の建設協会の会長さんがおっしゃっていました。


おもてなしの心とは


●小室 県外からのお客様にいかに喜んでもらって富山のファンになってもらえるよう、いろいろな取り組みが考えられると思います。富山には観光客ばかりではなく、ビジネスマンもたくさん来ていますよね。

●中井 うちの会社には、年間約3000人のお客様が来社されます。来社されたお客様に、富山にはこんな素晴らしいところがあるということを、各企業がいろいろな場面をとらえて情報発信していくのが一番確実だと思います。
 お酒がおいしかった、お寿司がおいしかった、では今度は泊まろうという話は結構あるのです。ですから、県外からのお客様に対して社員一人ひとりが営業マン精神を発揮して、心からのおもてなしを充実していけば、大きな効果が出るのです。
 私どもの会社ではそういう意味で楽しみにして来られる方が多いし、リピーターも結構おられますよ。

●河上 富山がPRすべきものとしては、食べ物のおいしさがあると思います。この間経済同友会で食文化の研究家・藤原浩さんの話を聞かさせていただいたのですが、味を宣伝するときは、マスコミでのPRが一番効果があるということでした。
 富山の人がどれだけおいしいとか、新鮮だと言っていても、その新鮮なものはどこに行けば食べられるのか、どこで買えるのかということを、通信技術も発達してきた時代ですから、もっともっと富山から発信していくべきだと感じました。

●小室 有名シェフだから一度は行ってみたいとか、おいしいものを食べてみたいと、みんな思っているのです。それを拡大して、富山に行けばおいしいものが食べられるということをもっと県外へアピールできるような仕掛けが必要です。
 ただし、「魚がおいしいよね」と言っても、金沢あたりのおもてなしと、富山でどーんと「はい、どうぞ」というのとは、少し違いますね。

●中井 富山はおいしさに対する追究がされていないのです。
 この間、ある大阪のお客さんを食事に連れていったのです。店の人が気を利かせて、刺身を厚みに切って、ご飯もたくさん出したら、そのお客さんは怒って「おれたち年寄りは、おいしいものを少しずつ、いろいろ食べたい。おにぎりのようなことをされたってかなわんよ」と言われたのです。ただ、素材がおいしいというだけではなくて、盛り付けや料理を出すタイミングなどにも気配りがなければ、本当のおもてなしにはならないということです。


乗ってみたくなる新型車両で


●小室 最後に北陸新幹線の開業に向けて何か提案がありましたらお願いします。

●中井 東北新幹線や九州新幹線には、「はやぶさ」、「さくら」などの新型車両が走っていますが、本革張りの豪華なシートをはじめ、木目調の落ち着いた内装を採用するなど、乗ってみたくなるデザインをたくさん取り入れています。
 北陸新幹線も、今の長野新幹線の車両がそのまま乗り入れてくるのではなく、車両のデザインだけではなくて、内装やサービスまでもが、まったく新しい新幹線を是非走らせて欲しいと思います。開発コストとか時間の制約などはさておいて、誰もが「乗ってみたい!」と飛びつくような、そして海外からも乗りに来てもらえるような新型の新幹線を走らせたいですね。

●近藤 新型車両も魅力的ですが、接続する高山線などの電車も思い切ってモデルチェンジして、ユニークで個性的なデザインにすれば、相乗効果になると思います。ポートラムやセントラムの洗練されたデザインと合わせて、「電車のまち・とやま」を印象づけられると思います。
 新幹線で富山に到着した人たちの第一印象が大事ですからね。

●河上 新幹線が来れば、やはりこのスピード時代に応じてみんなが変わらなければ駄目だと思うのです。
 その一つとして富山市の中心市街地活性化の問題も、新幹線をきっかけに大きく変わる必要があると思います。
 現在、富山市は交通機関のライトレール化でまちなか居住を促進して中心市街地の活性化を進めていますが、駅前だけではなく、中心部全体が盛り上がるように、自分たちで力と知恵を出していかなければならないと考えています。

●金尾 城址公園、あるいは市街地に薬の博物館が整備されると聞いていますが、中心市街地に立地、プラスアルファで何とか集客力に結び付く施設にしないといけないと思います。

●小室 北陸新幹線開業まであと3年ほどとなりました。富山に大きな夢を運んでくれる北陸新幹線であることを期待したいと思います。
 本日はお忙しい中、どうもありがとうございました。



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