今回は中小企業支援ネットワーク強化事業を活用し、富山県から経営革新計画の承認を受けた有限会社北糧米よし葬儀事業部「富山さくらセレモ」の事例をご紹介します。葬儀にあまり費用をかけたくない若い顧客などを対象として、すべてガラス張りの低価格設定でセレモニーを行うという、同社代表取締役の宮越弘至氏にお話を伺いました。
少子高齢化による葬儀の変化
高齢化がすすみ、「老老介護」や「独居老人」「孤立死」などが社会問題となっていますが、葬儀需要も都市部を中心に「家族葬」や「直葬」が増えていると言います。
これまでは、故人の死を友人・知人・近隣・仕事関係などに幅広く伝え、盛大に見送ることが、故人への手向けになり喪主や関係者の面目を保つとされていました。しかし、その傾向は若い世代を中心に、今後大きく変化していくと考えられています。宮越社長は自社の新事業を立ち上げた背景について、次のように語ります。
「少子高齢化で、都市部を中心に近所付き合いも減っていますし、不安定な雇用形態による生活不安などから、葬式にお金をかけられないという若い世代の方が増えていると思います。
また、菩提寺との関係が希薄になったり、葬儀費用やお布施の金額に疑問をお持ちの方も多いと思います。
そのような状況のなかで、単に形式的に立派なお葬式をするのではない、自分らしさ・故人らしさを大切にした葬儀にしたいという思いが強くなる傾向にあるのではないかと考えたのです」
低価格のシンプルな葬儀を
昨年の12月からスタートした富山さくらセレモでは、通夜や告別式を行わず、火葬のみのプランや、通夜は行わずに火葬当日に親しい方だけで告別式を行うといった、低価格のあたらしい葬儀スタイルを提案しています。この新規性が経営革新計画の承認につながりました。明確にターゲットを定め、そのターゲットに合うプランを最小限に絞り込んでいます。
「富山県の葬儀費用は他県に比べても高い傾向にあります。そこで、葬儀にあまり費用をかけたくない方々に向けて、すべてガラス張りの料金で、安心していただける葬儀を目指しています」
ただし、宮越社長が目指すのは単なる低価格だけではない、「こころ重視のお別れをプロデュース」することだと言います。
メインプランとしては2つあります。通夜を行わず、病院から遺体安置所、もしくは自宅からそのまま火葬する「火葬式」のプラン。また、同じく通夜は行わず、富山市営斎場での告別式を行う100名まで対応可能の「一日葬」があります。
このほかにサブプランとして、通夜と告別式をいずれも市内の正源寺で行う「家族葬」があります。「家族葬」は、家族・親族・本当に親しかった方を中心に営まれる葬儀です。
「故人を知る方たちで最後を見送りたいという方にご利用いただきたいですし、歴史あるお寺でのこころ温まる葬儀を目指しています」と話す宮越社長。
「富山さくらセレモ」は会員制です。利用するにあたって、入会金は1000円で、その他には積立金や更新料などの費用は一切必要ありません。但し、富山市営斎場を使うため、富山市内の方に限定されます。
由緒あるお寺でこころを結ぶ
「家族葬」の通夜と告別式は、県指定文化財などがある富山市西番の由緒あるお寺「正源寺」で行います。
「もともと葬儀はお寺を中心に行われていたものですが、その後の時代の流れのなかで、いまではお寺での葬儀は少なくなっています。本当に親しい方たちで、正源寺のような由緒あるお寺をご利用いただくことで、故人への思いも一層深くなるのではないかと思っています」
また、菩提寺との縁がなくなってしまった方が、正源寺との出会いをきっかけに、檀家になる必要はありませんが、新しいかたちでお寺とのご縁がつながるのも良いのではないかと、宮越社長は考えています。
宮越社長はこれまでに群馬の葬儀社などで100回以上葬儀に臨み、自ら経験を積んできました。そのなかで様々な家族のお別れの場面に接し、深く考えるところがあり、今回のような葬儀の形に結びついていったと言います。
NPO団体にも加盟
「これからは、葬儀にもいろいろな選択があっていいのではないでしょうか。その選択肢の1つを弊社が提供させていただくわけですが、まだまだこれから市場をつくっていく段階で、認知いただくには時間がかかると思っています。
大切にしたいのは、安さだけではない、できる限りのサービスをさせていただきたいということ。しっかりとしたプランとともに、小規模ならではの温かさを感じていただき、少しずつ共感の輪を広げられたらと考えています」
同社はNPO全国葬送支援協議会に加盟し、ネットワークを活かした事業運営や研修、またこれからの時代にあった葬儀のあり方などについて、各地の企業と情報交換しながらサービスの向上に努めていきます。
米販売を主力事業として
今回ご紹介した「富山さくらセレモ」は有限会社北糧米よしの葬儀事業部の事業ですが、本業はお米の販売です。
宮越社長は県内の大学を卒業後、京都の大手機械メーカーに就職。3年後に脱サラし、平成8年に26歳の若さで北糧米よしを設立しました。
現在は、スーパーの店内にお米の専門店を2店開き、店頭で米を精米して販売するという、他にはないユニークな事業形態をとっています。他の製品より割高になりますが、安全・安心にこだわる消費者に向けて、質の高いブランド米を中心に扱って差別化を図り、成功しています。
これらの取り組みによって、第14回優良米穀小売店全国コンクールで農林水産大臣賞を受賞。第4回富山市ヤングカンパニー大賞では審査委員長特別賞も受賞しています。
さらに、富山商工会議所の第二創業コースで学んだことを実践に活かし、県内産のもち米を使った本格派おはぎの開発・販売も手掛けています。独自のアイディアとたゆまぬ努力によって、新事業を切り開いてきました。
「セミナーや研修を受けただけでは本当にその人の力にはならないと思っています。自ら苦労して実践するなかからこそ、オリジナルなものが生まれると思っています」
土と触れ合う対話の場づくり
そのほかにも、「コミュニティ米よし」の活動を通して、地域の方々に畑で野菜をつくる場を提供するなど、職業や利害関係を越えた、人と人の出会いの場、コミュニケーションの場の創出に努めています。この事業は富山県起業未来塾で優良賞を受賞しています。現在、富山市天正寺に畑を整備し、参加者は月に500円の会費を払って、思い思いに野菜づくりなどを楽しんでいます。
「土と触れ合う中でお互いに自然と会話が生まれるような場を、これからも作っていきたいですね。
今回立ち上げた葬儀事業部も本業の米販売も、お客様とのかかわりを大切にし、お客様の思いを実現するために、費用はかけず自分たちの手間を惜しまない。突き詰めて考えるとコミュニティ米よしの活動に相通じるものがあると思っています。
私はいつも、人は人の役に立つために生まれてきたと考えているんです。子供からお年寄りまで、幅広い世代が集うコミュニティ米よしの活動を、将来は中心にできるようにしたいですね」
お客様のために動けるようになると、自然と仕事へのモチベーションも上がります。今後も人の役に立ちたいと思う気持ちが、さまざまな形で同社のビジネスに反映されていくことでしょう。
今回、宮越社長は新事業立ち上げに際し、当所経営指導員に相談したことがきっかけで、経営革新計画を申請されました。「今回利用した支援事業やエキスパートバンク制度などもそうですが、とても役立つ制度ですし、今後も支援制度は積極的に活用したい」と話す宮越社長。
当所は会員事業所の皆さまのご相談をお受けし、専門家と一緒になって様々な支援を行っています。
皆さまもぜひ、ご活用下さい。
○中小企業支援ネットワーク強化事業とは
「自社の現状や課題を見極めたい」「自社の業績をアップさせたい」また、「自社の経営の向上を図りたい」など、中小企業の経営革新をすすめるための支援事業です。
中小企業が新商品の開発、商品の新たな生産方式の導入、その他の事業活動を通じて経営の向上を図るための手助けを行っています。
当所をはじめ、財団法人富山県新世紀産業機構などに相談窓口があり、当支援制度についてのご相談に応じています。
低利融資制度や、税の優遇措置、特許関係料金の減免制度など、多彩な支援が受けられる「経営革新計画」。ぜひ気軽に当所にお問い合わせいただき、支援制度を活用してみてはいかがでしょうか。
米よし葬儀事業部富山さくらセレモ 0120-048-833
(有)北糧米よし
HP
[本 社] 富山市掛尾町522-2-704 TEL:076-493-2444
[米よし経堂店] 富山市経堂1-251アルビス店内 TEL:076-424-9999
[米よしグリーンモール店] 富山市山室226−2アルビス店内 TEL:076-491-7567
■3つの葬儀プラン
| | 税別価格 | 通夜 | 告別式 | 会場収容人数 |
メインプラン | (1)火葬式 | 198,000円 | ― | ― | ― |
(2)一日葬 | 358,000円 | ― | 富山市営斎場 | 100名 |
サブプラン | (3)家族葬 | 518,000円 | 正源寺 | 正源寺 | 100名 |
※上記は富山さくらセレモ会員料金です。ご入会は富山市内の方に限ります。入会金は1,000円。積立金や更新料などの追加は一切ありません。
※上記料金は葬儀費用で、飲食費や返礼品、お布施などは含まれません。
■最もシンプルな葬儀プラン「火葬式」
内容 | 富山さくらセレモ会員価格 | 非会員価格 |
葬儀セット※ | 198,000円 | 198,000円 |
お棺用布団 | 0円 | 20,000円 |
旅支度セット | 0円 | 10,000円 |
骨壷・骨箱 | 0円 | 10,000円 |
ドライアイス(1日分) | 0円 | 9,000円 |
搬送用寝台車(病院→自宅) | 0円 | 27,000円 |
搬送用寝台車(自宅→火葬場) | 0円 | 27,000円 |
火葬料金(市民料金) | 0円 | 0円 |
運営スタッフ(2名) | 0円 | 60,000円 |
花束 | 0円 | 5,000円 |
合計 | 198,000円(税込207,900円) | 366,000円(税込384,300円) |
※葬儀セットには、お棺(桐)・枕飾り・後飾り・線香・ろうそく・役所手続き・位牌(野位牌・本位牌)・棺覆いが含まれています。なお、セット料金となっているため、不使用品があっても減額できません。