会報「商工とやま」平成24年6月号  【 特 集 】

地域特性に合った商品開発を手掛ける事業所紹介

富山県内最大級の大型パン店で、これまでになかったサービスを。

スペイン石窯パン工房パン・オーレ(有限会社ブランジェ・ペトリール)


 昨年11月、富山市掛尾町にオープンしたスペイン石窯パン工房パン・オーレ。パン店としては、県内初の郊外型大型店の出店であり、手作り・無添加のおいしいパンと独自のサービスで人気を集めています。今回は同店の人気の秘密と、地域特性に合った商品開発について、代表取締役社長の田中憲治さんにお話を伺いました。



広い駐車スペースを確保した県内初の郊外型・大型パン店


 有限会社ブランジェ・ペトリール代表取締役で、スペイン石窯パン工房パン・オーレを経営する田中憲治さん。パン店としては県内初の郊外型大型店として昨年の11月にオープンしました。婦中店との2店舗体制で経営しておられます。

 田中社長は、パンの生地づくりはもちろん、あんこやクリーム、カレーなど中の具材も、あくまで手作りにこだわり、無添加のおいしいパンづくりを第一にしています。

 それに加えて、今回の店舗づくりにあたっては、子供連れの方のためのキッズルームや、買ったパンを店内ですぐに食べられるイートインコーナー、店の外にもテーブルコーナーを設けるなど、お客さまに安心してくつろいでいただけるスペースづくりを工夫しておられます。

 もとはアピタ富山店の駐車場だった敷地に建つため、普通車で約40台分の大きな駐車スペースを確保。アピタでの買い物帰りにお店に立ち寄る方も多く、女性を中心に家族連れなど幅広い世代のお客さまが次々と来店しています。

 外観は三角屋根と大きなスペイン製の石窯がシンボルとなり、店内に入ると売り場面積は約36Fと、開放感あふれる空間となっています。石窯から焼きたてのパンが出されるところも敷居や壁を作らず、そのままお客さまに見せるオープンな造りとなっています。

 「いつでも焼きたて、揚げたてのパンを買っていただき、そのままイートインコーナーで召し上がっていただけます。しかも、コーヒーやウーロン茶、オレンジジュースなどのドリンクも無料でご提供しています。キッズコーナーでお子さんを遊ばせながら、安心して買い物をしていただくこともできるのです。

 これらのサービスは、以前からぜひやりたいと思っていたこと。店側の経営効率だけを重視するのではなく、お客さまにとって居心地の良い空間とサービスを提供したいという強い思いがありました」と田中社長は話します。

 そして、何よりも大きな駐車スペースが富山ならでは。女性でも楽に車を停められることも大きなポイントとなっています。


やわらかめのパンが好きな富山県人


 田中社長は東京の大学を卒業後、東京でサラリーマン生活を送っていました。しかし、学生時代に軽井沢の有名パン店と出合ってから、「いつかはこんな仕事ができれば」とずっと考えていたと言います。30歳を前に会社を退職し、横浜のパン店で修行。約1年半の後、富山市石坂の実家に戻り、倉庫と玄関などを改築して、平成7年に最初のお店、パン・オーレを開業しました。

 その後、平成10年には法人化し婦中町に店舗兼自宅を新築。そして昨年の11月に県内初のパンの大型店として掛尾店をオープンしました。

 掛尾店のオープンにあたっては、東京のコンサルタントに、店舗設計や商品開発などについても相談して準備を進めてきました。

 「しかし、実際にオープンしてみると、富山のお客さまにはあまり好まれない商品があることもわかり、東京とは違う地域性を感じました。いまもお客さまの反応を見ながら、この地域の方々に喜んでいただける商品を、独自に工夫するようにしています」

 東京との違いとしては、富山ではどちらかというとフランスパンなどのハード系のパンより、やわらかいパンが好まれる傾向があるそうです。「フランスパンなどと食事を合わせる食文化が富山にはまだあまりないということもある」と語る田中社長。お料理と楽しむパンというよりも、そのまま食べられて、中にクリームや具材が入っている、味が濃いめのパンが好まれることも特徴だそうです。


在庫管理は問屋にまかせる


 掛尾店では材料の仕入れや在庫管理を、主に出入りする4つの問屋にまかせていると言います。

 「この方法は、この店になってから始めました。大型店になり、取り扱う原材料も増えたため、材料の発注管理はかなり大変で時間がかかる仕事です。そこで、富山の置き薬のように、基本的には仕入れや在庫の管理を問屋さんにお願いすることにしました。

 問屋さんにとっても、計画的に配送したり管理することができ、ロスが減るなど、お互いに様々なメリットがあります。もちろん、大量に原材料を扱う店だからこそ問屋さんに対応してもらえたのだと思います。

 特に土日や正月、ゴールデンウィーク、お盆などの連休は、パンがよく売れるのですが、各問屋さんの休みがまちまちで、以前は発注のタイミングを合わせるのが難しかったんです。でも、いまでは問屋さんに管理してもらっているので、安心できるようになりました」

 これは、お互いの信頼関係があってこその取引方法ですが、スタッフはパン製造と販売などに専念することができるため、非常に効率の良い方法だと言えます。


人気のカレーパン


 同店で販売されている商品は約100種類あり、調理パンの中でも特に人気なのが、「牛肉ゴロゴロカレーパン」です。具材となるカレーは専用の鍋で約5時間煮込んで作られているもので、1つのカレーパンに約30グラムの牛肉が入っている自慢の商品です。平日で1日に150から200個、休日の多いときで1日に350個は売れるという人気商品です。

 「たくさん売れるからこそ、どんどん作れますので、どの時間帯に来店されてもだいたいは焼きたて、揚げたてを召し上がっていただくことができます。これは、小規模店ではできないことで、多くのお客さまにご来店いただけるからこそ可能になることですね」

 来客数は1日に約1500人とのことで、一般のパン屋さんとは客数も販売個数も桁が違います。


気持ちよく働き夢を託せる職場


 県外では大型のパン店が徐々にできているそうですが、富山ではパン・オーレ掛尾店が初めての大型店です。掛尾店の店づくりを通して、売上への絶大な効果はもちろん、働く約30人のスタッフや店づくりにかかわった人すべてに、とてもいい影響があったと田中社長は語ります。

 「パンを作る広い作業スペースはもちろん、更衣スペースや休憩場所、2階には事務所、打ち合わせスペースなどを設けることができ、スタッフたちもとても働きやすいと言ってくれています。

 パンづくりは朝の4時、5時から始まります。しかも当店はすべて手作りですからたくさんの人手が必要になる。最初は人が来てくれるか心配でしたが、その心配は不要でした。良い環境を提供すれば、スタッフが自然と集まり、皆、自ら積極的に動いてくれるんだなと実感しています。施工していただいた会社さんもこちらからお願いしなくても必要な工事を提案して、無料で施工していただいたことがありました。材料管理をして下さる問屋さんもそうですが、皆さんがそれぞれ夢や希望を持ってこの店に関わって下さっているのを感じます。それにはやはり黒字経営であることが大前提で、経営者としてはそこを大事にしながら、これからも、良い循環を生み出せる場所にしていきたいですね」

 今後もイートインコーナーをさらに充実させ、お客さまにもっとゆっくりとパンや飲み物を楽しんでいただけるようにしたいと話す田中社長。その実現に向け、次の大型店構想が温められています。


パン工房 パン・オーレ(有限会社ブランジェ・ペトリール)
■掛尾店
富山市掛尾町61-1  TEL:076-464-5752
営業時間 8:00〜19:30
定休日 月曜日

■婦中店
富山市婦中町分田63-1  TEL:076-421-8533
営業時間 9:00〜18:00
定休日 日曜日



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