会報「商工とやま」平成24年11月号

特集2 県内企業人材養成モデル推進事業 事例紹介A

自らもスポーツマンとして

スポーツの楽しさを伝えられる人材を育成

株式会社太陽スポーツ


 当所は今年度、富山県が実施する「県内企業人材養成モデル推進事業」を受託しています。この事業では、平成22・23年度に同じく富山県が実施した「県内企業人材養成モデル開発事業」の成果である「人材養成モデル」を活用した人材育成の取り組み等を推進しています。

 「県内企業人材養成モデル開発事業」を受託した企業では、新規学卒未内定者等を1年間雇用し、人材養成計画のもと、実務や訓練等が行われ、当所はそのサポートをしました。2ヵ年の実施により、44社で69名が採用されました。

 本誌では、この事業を活用して人材養成を実践した企業をシリーズでご紹介しています。

 今回は、平成23年度に当事業を活用した株式会社太陽スポーツ代表取締役社長の上田良雄さん、専務取締役の鶴見昇司さん、そして新規採用され、現在、太陽スポーツ富山店で働く片岡亮さんにお話を伺いました。


県内外5店舗で展開


 昭和45年創業の株式会社太陽スポーツは、野球やサッカーなど、各種スポーツ用品や体育器具、スノーボード・スケートボード・インラインスケート・BMXなどのX−GAME用品の店舗販売やメンテナンスを行っています。

 そのほか、競技会場の床フローリング工事や塗替、防球ネットなどの工事、テニスコート・クレー・人工芝工事、X−GAMEパーク・セクション設計施工なども手掛けています。

 現在、同社の店舗は「太陽スポーツ」としては富山店、魚津店、砺波店の3つ。そして、スキー・スノーボードや登山用品などアウトドア用品を中心に取り扱う「ランプジャック」は掛尾店、野々市店の2店舗で展開。このほか、インターネットでの情報発信も充実させ、オンラインショップ「TRIP(トリップ)」も運営しています。


スポーツの楽しさを自ら体験し伝えられる身近な存在に


 同社では、これまで毎年継続して新卒者を採用してきました。今回採用された片岡さんが働く太陽スポーツ富山店は、野球・サッカーを中心とした競技者を応援する、県下唯一のアスリート専門ショップとして、アマチュア選手の中でも上級者向けの商品を取り扱っています。

 片岡さん自身も、働きながらハンドボールの富山県代表の国体選手として活躍しています。上田社長は自社の新規採用や人材育成のポイントについて次のように語ります。

 「やはり、自らもスポーツマンとして、お客さまにスポーツの楽しみを伝えられる人間が商品を売ることが大切だと考えています。そして、商品を売るだけでなく、同じアスリーターとして共感できたり、相談しやすい、お客さまにとって身近な存在であることが大事ですね」

 同社にはスポーツをする社員が多く、中には高校時代に話を聞いてもらいたくて太陽スポーツへよく通っていたという社員もいるそうです。

 その一方で、スポーツを熱心にやっている学生は、特に強いチームになると年末まで試合があるため、就職活動がなかなかできず出遅れてしまう事情があります。年明けに採用活動ができた当事業について、「スポーツに取り組む学生にとってとてもいい制度であり、当社にとっても新しい出会いに恵まれた」と振り返ります。


OFF−JTの大切さを実感


 これまで、同社の人材育成は各店舗でのOJTが中心で、今回のようなOFF−JTを豊富に盛り込んだ教育プログラムは実施していませんでした。同社の鶴見専務は、「従来はお店での実践がすべてだと考えていた部分はありましたが、人としての基本的なことやITスキルなども早いうちから同時に勉強させていくことが必要だと改めて感じさせられました」と語ります。

 当初計画していたビジネスパーソン基礎研修や販売士取得セミナーなど、売り出しやイベントなどの繁忙期と重なって受講できかったものは、別のセミナーに切り替えて実施。また、毎月の面談により、不足しているカリキュラムを優先したり、反省点を次月の行動プランに活かしながら研修が行われました。

 1年間の研修を振り返り、片岡さんは次のように話します。

 「社内だけでなく、社外の研修に参加して、様々な方と交流することができて良かったです。人とコミュニケーションを取る能力は、他社でも同じように求められているんだなということが実感できて、すごく勉強になりました」

 また、富山店はスポーツの種類別にコーナーがしっかりと分かれていますが、今後は自分が得意なハンドボールだけでなく、野球やサッカーなど他のスポーツにも取り組んだり、お客さまと積極的に交流したりしていきたいとも語る片岡さん。

 「実体験を通してお客様に対応することが、とても大切だということがよく分かりました」


人材育成の方向性が明確に


 同社では今回の経験により、コミュニケーション力や向上心・チャレンジ精神をどう習得させていくかを改めて考えるきっかけになりました。今後はOFF−JTには新入社員研修だけでなく、外部講師による2年目、3年目のフォローアップ研修や業務に連動させた研修をしっかり組み込むほか、この事業で実施していた月1回の面談を継続することにしています。

 「よりお客さまの満足を得るためには、商品知識や専門知識はもちろん、ラケットの張り替えやグラブの補修、インソールの成型など加工技術の習得が欠かせません。これまでは現場での実務指導中心でやってきましたが、メーカーの勉強会などへも積極的に参加するようにしていきたいと思っています。

 また、月1回の面談をこれからも続け、目標や課題を明確にし、本人の思いを取り入れながら粘り強く育てていきたいですね」と鶴見専務は語ります。


富山ならではの山の楽しみ方で、富山を活性化したい


 団塊の世代も含め、いま、ランニング、ウォーキング、トレッキングブームがあります。これからも、スポーツ愛好家はどんどん増えていくのではないかと語る上田社長。

 「富山の豊かな自然や食文化を活かしながら、スポーツと食を結びつけ、富山をもっとアピールしていこうと、県や市とも計画しています。

例えば、山にイタリアンの食材を持って行って食事をしたり、温泉とつなげながらイベントを開催したり。今後は、富山駅にも、山での様々な遊び方を提案できるガイドがいるようになればいいなと考えています」

 富山を活性化するためには、一過性の観光客を呼ぶばかりでなく、富山の自然を活用して、観光ルートにはない多彩な山の楽しみ方をもっと伝えることが重要と語る上田社長。

 「そうすれば、リピーターは必ず増えるはずです。時間はかかるかもしれませんが、いまはフェイスブックやツイッターなども活用して、少しずつ輪が広がっています。しかし、何よりもまず、富山の人が自ら体験して、その魅力や楽しさを語り、発信していくことが大事ですね」

 ロンドンオリンピックで皆さんも感じられたと思いますが、スポーツにはその種目を問わず、人やまちを元気にする大きな力があります。スポーツを通した人と人との交流はもちろん、富山の活性化のためにも、これまでと違った視点でスポーツの楽しみ方を提案し、発信していく太陽スポーツ。その一員として、片岡さんの今後の活躍が期待されます。


株式会社太陽スポーツ
 本 社 魚津市上村木2-3-30
 本 部 富山市一番町3-17  TEL:076-422-2911
 富山店 富山市黒瀬北町1-7-7  TEL:076-425-1030
  営業時間:平日10:30〜20:30、土日祝 10:00〜20:00
  定休日:無



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