会報「商工とやま」平成25年1月号

年頭所感

絶え間ない「イノベーション」への挑戦

  日本商工会議所   会 頭 岡村  正


 平成25年の新春にあたり、謹んでご挨拶申しあげます。本年が日本再生へ力強く踏み出す一年であることを心より祈念いたします。

「決める政治」のもと 産業の競争力強化を

 2012年はわが国をはじめ米国、中国など、世界経済に影響力のある国々が新たな指導体制に移行した年でした。本年は各国が協調し、日本、欧州、米国、新興国のそれぞれにおいて、力強い経済発展が実現されることを期待したいと思います。

 しかし、現下の世界経済は減速懸念が強まる状況にあります。欧州の財政金融問題は当面の危機は回避しているものの、経済不安は依然くすぶり続け、また、米国の財政問題や新興国の成長力鈍化など不安材料も多く、今後も注意深く見守る必要があります。国内経済も10年以上にわたるデフレにより国内市場は縮小し、GDP(国内総生産)も減少し続ける中、長引く円高やエネルギー供給制約など企業経営を圧迫する要因も重なり、景気後退局面との見方も強まっています。

 こうした中、昨年末の選挙を経て発足した新たな政権には、強いリーダーシップによる「決める政治」のもと、成長戦略の着実な実行、なかでも私どもが求め続け、その柱に位置づけられた中小企業戦略を強力に進めることを強く期待します。「科学技術創造立国」、「文化立国」を旗印に、官民あげて成長分野へ集中的投資を行い、国内需要を喚起しながら、世界を牽引する気概を持って産業のイノベーションを巻き起こす政策を断行するときです。


被災地復興と「攻め」の中小企業政策を

 東日本大震災から間もなく2年が経過しようとする中、被災地復興と福島の再生は遅々として進まない状況にあります。震災の記憶を風化させず、国内需要を拡大させるためにも復興のスピードを上げなければなりません。被災地の復興が日本の再生の第一歩であることを改めて強く認識する必要があります。商工会議所では具体的な活動として遊休機械の無償提供事業や被災地域産品の販路開拓支援事業などを展開していますが、今後も復興の支援活動を継続的に展開してまいります。

 また、わが国の国民生活や企業経営を左右する重要課題については、その解決に一刻の猶予もありません。国家の命運を握るエネルギー政策、給付の重点化・効率化策の多くが先送りされた社会保障と税の一体改革、価格転嫁対策などの課題が残る消費税増税、早急な決断が求められるTPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加問題、企業の海外進出などの加速に伴う国内産業の空洞化や雇用の減少など、今後の経済社会にとって極めて重要な課題ばかりです。

 日本経済を成長させる原動力は中小企業のダイナミズムです。中小企業の「成長」を促す視点を踏まえた起業・創業や販路開拓、海外進出支援、人材供給・育成など「攻め」の政策が必要です。中小企業の支援ニーズは多様かつ成長段階に応じて異なりますが、我々としてもきめ細かく、より踏み込んだ具体的な支援策を政府などへ強く働き掛けてまいりたいと存じます。

 日本商工会議所でも全国の商工会議所間のネットワークをさらに強固にし、これら直面する諸問題の解決に向けて全力でまい進してまいります。

よりよい経済社会を次の世代に

 高度成長の象徴として1964年に開催された東京オリンピックから56年の時を経て、2020年オリンピック・パラリンピックの招致が実現するならば、東日本大震災という国難を乗り越え、日本経済再生に向かう大きな目標となります。この3月にはIOC(国際オリンピック委員会)評価委員会が来日、最終調査を実施し、9月7日にIOC総会で開催都市が決定します。まさに最終決戦となりますが、日本中に勇気と希望を与え、未来を担う子供たちの健全な育成のためにも、全力を挙げて勝ち取りたいと存じますので、全国の皆様の熱いご支持をお願いいたします。

 今日の日本は閉塞感の中にありますが、我々には将来の世代に対してよりよい経済社会を創り、襷を渡していく責務があります。長年にわたり積み残してきた課題に勇気を持って切り込み、日本経済の再生を果たしながら、50年、100年後の社会発展の基盤を再構築しなければなりません。絶え間ない「イノベーション」への挑戦により閉塞感を打ち破り、日本経済の再生と持続可能な経済社会の実現を果たすため、本年も皆様とともに前進していく決意であります。皆様の一層のご支援とご協力を心からお願い申しあげます。


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