会報「商工とやま」平成25年1月号

特集3
地域で子どもを見守り、育てよう
  少しの余力を活かして社会貢献を
富山市ファミリー・サポート・センター


 みなさんは、地域の住民同士が相互に子育てを助け合う支援拠点「富山市ファミリー・サポート・センター」をご存じですか。

 今回は、同センターを運営する富山市子育て支援センターの谷内早苗所長と、依頼会員として子育て支援を受けている佐藤朝乃さん、そして協力会員として子育て支援を行っている日中友里さんにお話を伺いました。


会員同士が、子育てを助け合う


 富山市ファミリー・サポート・センターは、富山市子育て支援センターが実施している事業です。毎日の保育所・幼稚園への送迎や、学校から帰宅した子どもの預かり、親の体調が悪いときの子どもの見守りなど、育児の支援が必要な様々なケースに対応しています。

 運営にあたっては、子育てのお手伝いをしてほしい方と、育児経験などを生かして子育てのお手伝いができる方が会員となり、会員同士が助け合う子育て支援組織をつくり、同センターで調整とサポートを行っています。このような会員同士による育児の援助活動を「相互援助活動」と言います。谷内所長は同センターの取り組みについて次のように語ります。


事前のマッチングで 親子とも安心


 「核家族化がすすみ、従来のように家庭や地域で子どもを育てることが難しくなっています。特に富山市の中心部では転勤族の方も多く、頼れるご家族やご近所の方も無く、日頃から困っている親御さんが多いと思います。

 現在、当センターでは依頼会員、協力会員、両方会員を合わせて、約2500名の方が登録されています。ご利用にあたっては、それぞれの方のご希望や条件に合わせて、事前にマッチングを行っています。いきなり知らない方同士で支援を始めるのではなく、事前に会っていただくことで、依頼会員の親子に安心していただけるように調整しています。子育てに一人で悩み、誰にも相談できずにいるお母さんも多いと思います。ぜひ、みなさんに気軽にお問い合わせいただき、ご利用いただきたいですね」


協力会員も募集中


 平成9年からスタートして今年で15年、事業について徐々に知られるようになって会員数も増えています。しかし、子育て支援を頼みたい依頼会員が平成23年度末現在で1804名なのに対し、子育て支援をする協力会員は471人、そして、両方会員は231人と、協力会員、両方会員とも、依頼会員に比べてまだまだ少ない状況にあります。

 「少しだけならお手伝いしてもいいと言う方には、ぜひ協力会員としてご登録いただければと考えています。ちょっとの余力を社会貢献にも使っていただければありがたいですね」と谷内所長は、今後の協力を呼びかけています。


自宅で子どもを見てもらう


 依頼会員として子育て支援を受けている佐藤さんは、飲食店の女将として頑張っておられます。お子さんの幼稚園入園とともに同センターを利用するようになりました。

 「夕方から夜にかけて仕事が忙しくなるため、平日で1日3時間、自宅で見ていただける方という条件で探していただきました。

 それまではずっと、実家や兄弟家族に協力してもらってきましたが、家族にも面倒をかけますし、迎えに行って寝かしつけると夜10時や11時になり、子どもにとっても落ち着かない日々でした。幼稚園に入るからには、子どもにも規則正しく、安心できる生活をさせたいと考えたんです」

 協力会員の自宅で子どもを預かるケースが基本とのことですが、依頼会員の要望に合う協力会員を見つけてもらうこともできます。

 佐藤さんは、自分で準備した夕食を食べさせてもらい、あとは寝かしつけるまでを依頼しています。

 「毎日、本当に助けられていますし、安心です。いずれ余裕ができたら、今度は自分が協力会員としてお手伝いができたらと考えています。最初の登録には勇気が必要かもしれませんが、支援は特別な技術が必要なことではなく、普段通りの家庭での子育てです。子どもたちは世界の宝。みんなで助け合っていけるといいですね」


15年にわたって支援を継続


 この事業が富山市でスタートして以来、約15年にわたり協力会員としてサポートを続けているのが日中友里さんです。保育士としてパートで勤務しながら、勤務後の時間を使って、週に2回、2人の兄弟を保育園から自宅へと送るサポートをしています。

 「私にも子どもが2人いるのですが、2人目の出産のときに入院することになり、ご近所のお母さんたちが上の子どもを見て下さったんです。それはとてもうれしいことで、いまでも宝物のように思っています。だからこそ自分もお手伝いしたいということと、仕事が終わってからの空き時間に何かしたいという思いもあり登録しました。

 最初にサポートしたお子さんは1歳から小学校卒業まで関わらせていただきました。これまで20人くらいのお子さんをサポートしてきたでしょうか。1回だけというサポートもあるのですが、長いサポートの場合は、そのお子さんの成長を見られるのが一番の楽しみ。以前サポートしたお子さんが成長されて、たまに街で会ったり、お母さんとお茶することもあり、それもうれしいですね」

 わずかな時間でも、子どもの面倒を見てくれる人がいると、親にも気持ちの余裕が生まれ、楽になれるもの。この制度はヘルパー派遣の制度ではありませんから、原則として家事などは支援対象にはなりません。しかし、ちょっとの助け合いで、親や子どもの気持ちが豊かになり、より安心できることは間違いありません。

 「子どもたちにとって、親ではないけれども、親身に接してくれる人との出会いはとても意味があると思うのです」と話す谷内所長。

 いろいろな人との関わりの中で、地域社会で子どもを見守り育てていくことへの理解を深めていただき、みなさんも協力会員として少しの余力を生かしてみませんか。助けてもらった感謝の気持ちが「誰かの役に立ちたい」という思いとして次々に受け継がれ、より子育てしやすい社会へとつなげていきたいものです。


富山市ファミリー・サポート・センター

◆こんなときに、気軽に助け合い
 ・保育所(園)、幼稚園の開始前や終了後の子どもの預かり
 ・保育施設までの送迎
 ・学校の放課後や学童保育の終了後の子どもの預かり
 ・幼稚園、学校の休み等の子どもの預かり
 ・軽度の病気の時の子どもの預かり
 ・保護者の急用や体調不良の時の子どもの預かり
 ・子育てを離れて自分の時間を持ちたい時の子どもの預かり
 ※原則として、子どもの宿泊は行いません。

◆会員登録について
 ・「子育てのお手伝いをしてほしい方(依頼会員)」と「子育てのお手伝いかできる方(協力会員)、
  また、その両方で利用したい方(両方会員)」は、会員となるための事前登録が必要です。
 ・会員登録後、援助の依頼については、ファミリー・サポート・センターに申し込んでいただき、
  アドバイザーが依頼に応じて協力会員を紹介します。
 ・相互援助活動の終了後、依頼者は協力者に対して報酬を支払っていただきます。

◆会員の条件とは
 ●依頼会員(協力会員と兼ねた両方会員として登録も可能です)
  ・市内在住か、市内に勤務・通学している方
  ・生後2か月から小学6年生までの子どもをお持ちの方
 ●協力会員(資格・性別・経験は問いません)
  ・市内在住の方
  ・自宅で子どもを預かることができる方
  ・心身ともに健康で、社会参加してみたいと思っている方

◆会員になるには
  ・事前に会員登録が必要になります。
  ・入会金は無料です。
  ・登録の際には、事前に連絡をいただき、本部・各支部までお越しください。
 ●利用料金(報酬額)
  ・平日(月〜金) 7時〜19時
   1時間 1人700円 2人(兄弟)1,050円 3人(兄弟)1,400円
  ・平日の上記以外の時間、土・日・祝日・年始年末、軽度の病児保育(終日)
   1時間 1人 900円
  ※キャンセル料 
   前日までの取り消し 無料 、 当日取り消し 50% 、 無断取り消し 全額
  ※補償保険制度に加入しています(会員負担無)。

◆お問い合わせ
 富山市ファミリー・サポートセンター
 富山市丸の内1丁目4-50 市立図書館本館1F
 TEL:076(432)7212    FAX:076(432)7214
 [本部]月曜日〜金曜日 9時30分〜17時15分 (祝日を除く)
 ※登録には20〜30分かかります。時間に余裕を持ってお越しください。
 (大沢野、大山、八尾、婦中各支部もあります。各支部は16時まで)



▼機関紙「商工とやま」TOP