会報「商工とやま」平成25年6月号

特集1 
女性たちに愛される、富山ならではのお土産づくりを
 まちの逸品ブラッシュアップ事業・富山県の取り組み


 北陸新幹線開業を平成27年春に控え、さまざまな動きが活発になっていますが、富山県では「まちの逸品ブラッシュアップ事業」に取り組み、4月には高志の国文学館で商品発表会が開催されました。今回は、この事業について、富山県商工労働部商業まちづくり課商業活性化係長の平田大輔さん、同課主事の本田紗緒里さん、事務局担当で株式会社PCO取締役クリエイティブディレクターの千田英弥さんにお話を伺いました。

女性が買いたくなるお土産を


 富山のお土産として、普段みなさんは、どのようなものを選ばれているでしょうか。代表的なものとしては、海産物やその加工品、ます寿し、せんべいなどがあります。その一方で、女性に好まれ、しかも富山らしさのあるお菓子やスイーツのお土産は少ないと思いませんか。

 「新幹線開業によって県外観光客などの増加が見込まれるなか、富山県では平成24年度から、女性に好まれる富山のお土産を発掘してブラッシュアップし、富山県のイメージアップにもつながるような、売れるお土産づくりをすすめようと取り組んでいます」と語る県商工労働部の平田係長。

 県ではお土産としていくつかのイメージを想定して、参加事業者を募集。まず一つ目は「箱菓子」で、女性に好まれ、軽くて日持ちのするお菓子。職場の同僚や友人など、他者へのプレゼントを想定したものです。

 次に「スイーツ」。女性に好まれる生菓子で、新幹線による時間短縮効果を見据え、保冷して持ち帰りが可能なもの。また、列車のなかでも食べることができ、自分たちが食べるための購入を想定したもの。

 三つ目は「工芸品」で、女性が持ち歩いたり日常的に使用できる小物。ハイクオリティでありながら普段使いできるもの。家族へのお土産、また、自分へのご褒美としても買ってもらえる工芸品が募集されました。


15事業者を選定


 募集にあたっては、県内の商工団体や、富山県菓子工業組合、伝統工芸の組合、そのほか一昨年まで県庁内の女性職員が中心になって取り組んでいた『富山スイーツ研究会』に参加していたお店にも呼びかけを実施。その結果、108商品の応募がありました。

 県では検討委員会を設け、地域のブランド開発、流通、デザイン、メディアなどの分野で活躍する6名の委員が中心となり、応募商品の中から、15事業者を選びました。

 選ばれた15事業者の商品について、検討委員からはさまざまな意見やアドバイスなどが出され、それらを事業者のみなさんにフィードバック。商品のブラッシュアップが進められていきました。

 「今年の1月から2月にかけては、名古屋や首都圏で開催した県の観光物産展の場を借りてモニター調査を実施するなど、実際の消費者の反応を見ながら、商品に磨きをかけてきました。そして、3月の検討委員会で、最終的な評価と今後に向けたアドバイスをいただいて、商品が完成しています」と平田係長。

 事務局として取りまとめにあたった株式会社PCOの千田さんは、次のように語ります。

 「今回選ばれたのは、富山らしい商品で、首都圏に持って行っても売れそうなものや、女性が好むもの。もちろん食べておいしいことや価格なども重視され、いまある商品をもうちょっと磨くことで、広く通用する商品になる可能性があるものが選ばれています」

 この事業のポイントとしては、「ブラッシュアップ」であること。新たに開発された商品もありましたが、その多くは、もともとあった商品や技術を活かしたもの。少し視点を変えることによって商品が一皮むけ、より魅力的に生まれかわることができました。


デザイナーとのコラボで、あたらしい視点を獲得


 「富山には、とてもまじめに、真剣に、熱い思いを持ちながら商品をつくっている事業者さんがたくさんおられることを実感しました」と語る千田さん。

 また、今回の事業の特徴の一つとして、商品開発やパッケージ開発に女性を中心にした富山のデザイナーたちが参画していることが挙げられます。

 「せっかく、熱い思いが込められた商品ですから、もうちょっとこうすれば、みんなに目に留めてもらえる商品になるといった新たな視点をデザイナーからも提示してもらい、ブラッシュアップにつなげていきました。

 いままでデザイナーと何かを一緒につくるようなことをされていなかった事業者さんが多かったので、それについても、大きな発見になったのではないでしょうか。また、富山がデザインの分野でも頑張っているという情報発信にもなるのではないかと考えています」

 県がプロデュースしたお土産の成功事例としては、「幸のこわけ」シリーズがありますが、県商工労働部の本田さんは、

 「統一のパッケージにしてしまうと、各事業者自身で魅力を上げていくことが難しくなってしまうため、今回は、それぞれの展開や今後の継続したブラッシュアップのためにも、統一デザインではない方向で進めました」と説明します。


まずは地元富山の人に、愛される商品にしたい


 この事業は平成25年度も「まちの逸品PRキャンペーン事業」として継続されていて、今後も県内や首都圏など各地でのPRが予定されています。

 女性たちが集まるような県内のカフェやワインバー、雑貨ショッブなどとコラボして、それぞれのお店に合う商品をいくつか置いてもらい、販売することも検討しているそうです。

 「そのほかにも、30代、40代の発信力のある女性たちに、この商品のファンになってもらい、自分たちのフェイスブックなど、SNSを使って、どんどん情報を広げてもらおうと考えています。

 東京駅など首都圏でのキャンペーンも予定していますが、まずは富山の人に知ってもらって、地元の人に愛され、自分のために買ったり、誰かに薦めたくなる商品にしていきたいですね」と話す千田さん。ブログやフェイスブックなどで、随時最新情報を発信していく予定だそうです。

 新幹線が開通すれば、東京・富山間はわずか2時間。観光やお土産などの商品づくりにおいても、これまでの常識や発想が大きく変わる転換点となります。

 みなさんも、自分たちの商品やサービスを、この機会に改めて見直してみませんか。


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