会報「商工とやま」平成28年1月号

年頭所感

変化をチャンスと捉え、果敢に挑戦

  日本商工会議所   会頭 三 村 明 夫


 明けましておめでとうございます。
 平成28年の新春を迎え、謹んでお慶び申しあげます。

将来の明るい展望に期待感
 昨年の世界の動向は、ギリシャ問題、中国経済の新常態への移行、資源・エネルギー価格の下落、シリア問題など、世界経済を揺るがす問題が多数ありました。新興国経済が低迷する中で、相対的に先進国経済は底堅く、米国経済は好調に推移し、昨年の世界経済全体は緩やかな回復となりました。本年は、米国がいよいよ金融緩和の出口戦略に入り、中国経済の先行きの不透明さと合わせて、新興国経済に力強さがうかがえないなど、世界経済の回復は今年も緩慢なものになるのではないかとみられております。
 一方で、わが国経済は、ようやくデフレ脱却への道筋が見え、昨年はTPPの大筋合意や訪日観光客の増加、さらに、昨年後半からは、企業の設備投資も拡大していることが明らかとなり、国民・経済界が将来に向けて明るい展望を持てる期待感が広がりつつあります。また、来年4月には消費税率が10%にアップすることから、本年後半にはある程度の駆け込み需要が発生するのではないかと思われます。

改革は待ったなし
 将来の日本の持続的な成長を成し遂げていくためには、50年後の人口1億人の維持を目標とする抜本的な少子化対策、働く意欲を持った高齢者と女性の労働参加を促進する労働改革、日本の食の魅力と安全を世界に発信する強い農業への転換など、構造改革の推進がいずれも待ったなしの状況となっています。また、これらを実現する財源のためには、税と社会保障の一体改革の実現も急務となります。
 わが国は、幸いなことに安定政権の下で、政策を継続的かつ粘り強く実行する体制にあります。日本再生のためには、改革のプラスとマイナスを明示し、国民にその必要性を説明し、説得し続けることで改革を成し遂げることが重要であります。

地域の将来をデザイン
 さて、このような中で、商工会議所といたしまして、どのようなことに軸足を置いていくことが必要であるか考えますと、全国514の商工会議所が、それぞれの地域で、関係者と緊密に連携しながら地域の将来をデザインし、地方創生に向けて取り組んでいくことが肝要だと思います。特に「観光」や「ものづくり」など地域の強みを生かす活動には、商工会議所が強いリーダーシップを発揮していくことが求められているのではないでしょうか。

地方創生の切り札観光
 まず、地方創生の切り札として期待される観光分野では、外国人観光客は、一昨年に1300万人を超え、昨年は約1900万人と急激に増加しました。2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでに2000万人という当初の目標を前倒しで達成することが確実となっています。それぞれの地域が、外国人のみならず国内の観光客を引き付けるためには、デービッド・アトキンソン氏の『新・観光立国論』にも述べられているように、「文化」「気候」「自然」「食事」の四大要素を軸として、地域が独自の魅力を発信するとともに、地域間の連携も必要ではないでしょうか。新たな目標設定とともに、ボトルネックの解消と観光消費の効果を得るための現実的な対策を考えていくことが重要です。

新しいものづくり立国の好機
 次に、観光と並んで日本の強みを生かす分野に製造業があります。六重苦が徐々に解消され、TPPの大筋合意により、国内立地の競争力は改善傾向にあり、新しいものづくり立国を構築する好機が訪れています。昨年11月には、「TPP政策大綱」がまとめられ、TPPを活用した中小企業と農業の輸出促進支援策も検討されており、地方創生にも大いに貢献することが期待されます。1〜2年後にはTPPが発効することを想定して、これまで海外ビジネスに取り組んでいなかった企業でも、どのように活用できるか、検討していくことが重要ではないでしょうか。特に、TPPでは日本の農業を強い産業に変革していくとともに、日本の農産品・食品の輸出拡大に貢献することが期待されています。

日本再出発の推進力に
 さらに、日本再生という点では、本年3月で震災から6年目に入る被災地の復興の歩みも加速させなければなりません。一日も早い本格復興に向けて、現地のニーズに即した支援を着実に実行していくことが重要です。
 最後になりますが、地方創生の主役は、われわれ自身であり、明るい未来を切り開く気概を持ったわれわれの一歩が日本再出発の推進力となります。自信を持って前を向き、変化をチャンスと捉え、果敢に挑戦してまいりましょう。皆さまの一層のご支援とご協力を心からお願い申しあげます。

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