会報「商工とやま」平成31年1月号

特集2

10年後、20年後に評価されたい」を凝縮した木造店舗

ベストショップコンテスト・グランプリの「PARQS358」


 今年で第71回となるベストショップコンテスト2018。グランプリに輝いたのは「PARQS(パークス)358」でした。このコンテストは富山市内で新規オープンまたは改装した魅力ある店舗を顕彰するもので、現地審査を行って、店舗の工夫や接客、環境対策などの観点から各賞を選定します。当所はマスコミと連携して受賞した各店を紹介するなどして支援します。PARQS358は設計やサービスなどにおいて、どんな工夫がなされているのでしょうか。代表の牧郁基さんに伺いました。


70点からのスタート


 PARQS358は、31年前に魚津市内でセレクトショップ「PARQS UOZU」を出店した牧さんが、レディースのセレクトショップ「PARQS TOYAMA」に続いて2017年11月に富山市にオープンした店です。1階は飲食店、2階はメンズのセレクトショップ。富山市の富岩運河環水公園の近くにあり、買い物にティータイムやディナーを楽しめるおしゃれなスポットになっています。店のコンセプトにはどんな意図があるのでしょうか。

 「もともとコーヒーが好きで、『TOYAMA』でカフェスタンドをしていました。現在は米国・サンフランシスコに集まる良質の豆を独自のルートで仕入れ、提供しています。店内のイメージは、富山・シアトル・イタリアを複合した感じ。料理の食材は『地産地消』を強く意識しています。やはり地元の新鮮で美味しいものを使いたい」

 「358」は富岩運河環水公園を訪れた人がショッピングを楽しみ、コーヒーを味わって、「ちょっと贅沢な時間」を過ごせる空間です。1階フロアの中央には巨木を生かした存在感のある大きなテーブルがあり、店は外観・内装・インテリアとも木の温かみを生かした造り。夜には食材本来の味を生かしたイタリアンを楽しむこともできます。

 オープン時点では1階の飲食店のみの営業でした。当初、建物自体はできていたものの、現在お店の壁を飾っているさまざまな絵画などはまだ届いていなかったそうです。2階のメンズファッションのスペースが開店したのは翌年の2月になってから。段階を踏んで、今の店舗の状態に至っています。

 「最初から100点を取ろうとは思っていないのです。70点ぐらいからのスタート。最初に全部できていたら、飽きてしまうのではないでし ょうか。現時点でもまだ90点ぐらい。あと1年かけて100点満点を目指していきたいのです」

対面販売に重点を置く


 少しずつ手を入れながら、地域に認知してもらう。「この店は、私たちのビジネスや会社を理解してくれる人を増やす空間です」と牧さん。「店舗やサービスが100点満点になる過程」を来店客やスタッフとともに楽しむことが大切だという。

 「その思いを、企業理念である『私たちは自由と共生を求めて旅をしています』というメッセージに込めています。常に求め続けることに意味がある。すぐには評価されないかもしれないけれども、10年後、20年後に評価されているような会社でありたい」

 社員は15人で、20代から60代まで。牧さんはスタッフに「二つの特技を持とう」と提案しています。衣料品の販売とコーヒーなど、二つの役割を担って、広い視野で楽しみながら接客してほしいとのこと。「会社はおもちゃのようなものである。楽しくないと意味がない」そうです。

 対面販売や接客に重点を置く姿勢は、ネットショッピングにも表れています。WEBのオンラインストアは充実していますが、それはあくまで店頭販売をカバーする仕組みとしての位置付けだそうです。

 「うちはネットで売れるのは1%程度で、ほとんどが店頭売りです。接客中に電話で問い合わせが入るケースがある。『色違いはありますか』などとね。そういうお客様に対してWEBをお勧めできることで、スタッフがお店にいらっしゃったお客様に集中して対応できます」

太陽光発電の活用


 木材をふんだんに使った店舗はイージーオーダーの建築物です。入り口のドアには古材が使われ、存在感十分。気候や立地を計算した採光と、二酸化炭素を感知し熱を逃がさず換気ができるダクトによって、超断熱・超密閉の空間が実現しました。また、屋上には太陽光パネルが設置されています。そこで得た電力を敷地内の倉庫にある蓄電池に貯められるのです。

 「小さな木造の商業ビルでもフォーマリズムを反映することにより、美意識に触れていただきたいと思いました。太陽光発電の活用は、循環 型社会を意識してのことです」毎日の仕事に追われている人などが、この店を訪れ、物思いにふけりながら景色を眺め、コーヒーを飲む……。そんな心安らぐ空間を目指して店舗は造られました。店舗を見回すと、地産地消やサスティナブルな価値観を尊重する、経営者とスタッフの姿勢を知ることができます。

 「事業の存続が自然環境の保全に役立ち、また現地のコミュニティーに価値をもたらし、さらに人材の育成にも役立つ。そんな恒久的な事業 を目指します」

 「358」は、牧さんの「10年後、20年後に評価される会社でありたい」という考えを凝縮した「ベストショップ」なのです。

PARQS358
 富山市下新町35-8
 1F Lu PARQS 2F PARQS mens
 TEL:076-433-3358



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