2023年 漆

優秀賞

めぐるの匙

素地:トチの木(国産)、塗り:漆(下地は中国産漆、仕上げ塗りは国産漆を使用)

約20×3.5㎝

①赤・②黒・③溜:各¥14,300

漆とロック株式会社

ウルシトロック

福島県会津若松市

https://meguru-urushi.com/products/cutlery.html

漆とロック株式会社 貝沼 航
20代前半に会津に移り住み、そこで出会った漆器職人たちの姿に信念に忠実な「ロックな魂」を感じて心惹かれる。それ以来、約20年に渡り「漆と人を繋ぐコミュニケーター」として活動している。2015年には循環型の生き方に寄り添う漆器「めぐる」を発表。漆器職人や農家たちと連携し、会津でのウルシの木の植栽活動にも取り組んでいる。

作品について

「めぐるの匙」は、暗闇のソーシャル・エンターテイメント「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」とのコラボレーションにより、目を使わず生きる方たちの“特別な感性”と漆器職人たちの高い技術と経験が融合し、誕生しました。触覚に優れた全盲の女性たちのアドバイスをもとに何度も試作と改良を重ね、食べ物の美味しさを引き出す、最高の口当たりと持ち心地を追求しました。

デザイナー/戸田 光祐
めぐるの匙は、めぐるプロジェクトの長年の夢と戸田氏が元来持っていたデザインの着想が合致してスタートした。“感性の対話”から生まれる、めぐるのものづくり手法に丁寧に寄り添っていただき、何度も試作と改良、試行錯誤を繰り返して最終形に辿り着くことができた。
https://todakohsuke.jp/

講評

漆のスプーンは数多くありますが、ずば抜けた完成度のスプーンだと感じます。盲目の使い手の高い解像度の触覚を反映し、忍耐強く作られたのではと思います。使い勝手の追求はもちろんですが、匙部分と持ち手部分の継ぎ目にあるエッジの茶杓モチーフや持ち手形状の箸モチーフも和であることを貫きたい矜持を感じます。漆の仕事も見事です。口に触れる素材で最も心地よく感じる素材は漆だと思います。日常から漆が消えつつある中、漆を未来に繋ぐ一条の光を感じた作品です。

(大治将典)